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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第三章
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決戦聖王国シーサ2

遅くなりました。今日の分です。


「それでティノ、敵はどんなだった。」


 僕はティノに尋ねる。


『ほとんどがスケルトン。そしてゾンビ。ゾンビはおそらくバンロの兵士や町人。死んだ味方もゾンビになってしまう』


 死んだらゾンビになってしまう。思った通り最悪の敵だ。こちらの士気を下げるのにこれほど有効な手段はないだろう。


 そこで、ん。ティーリンが身動きした。


 起きたかな?


「こ、ここは……? 」


「ティノの背の上だよ。久しぶりだねティーリン」


「えっ」


 ティーリンは身を起こす。首を後ろに回し、僕のことを確認する。


「幻じゃなかったんだ……」


「無事に竜の試練から帰ってまいりました。ご心配おかけしました」


「そう。やっぱり竜の試練だったのね」


「うん。強くなったよ。味方も増えたしね」


『ミオだにゃ。豹人にゃん。よろしくだにゃ』


 猫の姿なのでミオは念話で話しかけてきた。


「よ、よろしく。ハイエルフのティーリンです。こちらこそよろしくね」


 僕はティーリンに聞いてみる。


「今ちょうどティノに戦況を聞いてたところなんだ。スケルトンばっかりだって? 」


「うん。そうね。ほとんどがスケルトンなんだけど、とにかく数が多い。疲れも知らないから始末に負えない」


「デスタイラントはどうだった? 戦場にはいない? 」


「見なかったわね。おそらくバンロから出てきてないでしょうね。ひたすらスケルトンを行進させていれば私たちを疲弊させることができるから……」


 なるほど……。


「僕らが隠れて乗り込むのはどう思う?」


「デスタイラントがどこにいるかも分からないから……。向こうの戦力もわからない。アンデットの上位種のリッチ級のモンスターの数によっては危ないでしょうね」


 そうか。まだ情報が足りないか。セスのように自分が戦場に出てくるタイプだとわかりやすいんだけど。


「難しいか。撤退はどこまで? 城まで? 」


 ティーリンは頷く。


 足が遅いとはいえ、休みなく攻めてくるなら一度城まで撤退するのも致し方ないだろう。


「王宮には行ったかい? 魔法使いマナに会いたいんだけどどうかな」


「そうね。さすがにユニコーンに乗ったハイエルフは目だつらしく、王様に直々に声をかけてもらったわ。オルターは勇者の弟だし、会えると思うわ。」


 ああそうか。味方にハイエルフがいるということは、それだけで士気に影響するのか。


 ティーリンは頷く。


「じゃあ僕らは先に魔法使いマナに会いに行こう」


「わかったわ」



 ………

 ……

 …


 

 僕らは城に着く。ユニコーンに乗った僕らは、ティーリンの顔パスで中に入ることができた。

 ティノは入口で待つそうだ。あまり人が多いのは苦手らしい。ミオも外がいいらしく入口で待つそうだ。


 マナに会う許可はあっさり通った。

 病室に居るらしく、女の神官に連れられてマナの病室に着く。


 マナはベッドに寝かされていた。


 淡い赤い髪の毛は手入れしていないのかぼさぼさだ。右腕に包帯をぐるぐるに巻いている。

 顔は土気色で目の下には濃いクマができている。僕らが入ってきても焦点のあってない目でぼうっとしている。

 僕はマナへと声をかける。


「貴方がマナさんですね。姉アンフィがお世話になりました。アンフィの弟のオルターと申します」


 マナの瞳が僕のほうを向く。


「おとうと……? 」


「ええ」


「あああああぁぁぁ! 」

 

 マナはいきなり悲鳴を上げ右腕を押さえる。

 よほど痛むのか、右腕を押さえて顔からは脂汗を流している。

 僕はティノから模倣した“癒し”を発動させる。

 生み出した光を包帯ぐるぐる巻きの右腕に流そうとして驚愕する。

 光が効かない。

 そうか、これが呪いか!

 少しすると、力尽きたのか、ベッドの上で横に倒れる。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいアンフィアンフィ、アンフィを助けられませんでした」


「うん、大丈夫。右手を見せてもらってもいいかな?」


 マナは倒れ伏したまま無言で包帯を外していく。


 僕は絶句した。


 マナの右腕は肘の少し上まで数十個の見開いた目で覆われていた。その目は包帯を取ると 一斉にぎょろりと僕のほうを向いた。


 あまりにもおぞましい光景に僕は戦慄を覚える。


 マナは話し出す。


「この目は少しづつ私を侵食し、心臓の位置まで来ると私は死ぬらしい」


 僕はマナの目を見て言った。


「僕が祓います」


「オルター様がどれほどの方か知りませんが、この呪いは魔王からの物。私が死ぬまで解けることはないでしょう。この国いる神官たちも誰一人治す事はできませんでした」


「大丈夫。安心して」

 

 僕は虹色のトンカチを腰から外すと集中する。

 

 僕はマナに微笑む。

 

「今までよく頑張りました。いくよ」


“ディスペルマジック”


 僕はマナの右手を押さえ、呪文を唱えた。ウリシュナ直伝の破呪の魔法。呪いを解くディスペルマジック。


 魔力が右手に吸い込まれていく。まだだ、まだ足りない。魔力を湯水のように右手に注ぎ込む。

 

 マナの手から瞳がひとつづつ目を瞑ると同時に消えていく。


 マナは驚愕の視線を右手に向ける。


 すべての目が取り除かれるまでにそれほど時間はかからなかった。


 マナは呆然と僕の事を見た。


 僕はにっこりと微笑む。


 マナはベッドから立ち上がると僕に抱きついた。  


「ありがとう、ありがとう、ありがとうございます! 」

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