リヨンと闇の種子13
そのままオークション会場に戻ると、丁度後半の武具の出品だった。
「では迷宮からはこちらの鎧。プレートアーマーの胸部。鑑定の結果は、装備すれば常に守備力が二倍に上昇する。100万から」
「110万!」
「150万!」
「200万」
「220万!」
「500万」
「550万!」
「600万」
冒険者であろうがっしりとした男と、金持ちそうな太った男の一騎打ちだ。
「ろ、650万!!」
「700万」
冒険者の男はがっくりとして、うなだれてしまった。
その金持ちの男は次も、その次も落札していく。
「あいつは誰なんだ?」
「あれか。大商人だな。一代でのし上がった商人ギルドの重鎮だ。大方新しい奴隷かボディーガードでも雇ったんだろうな」
「なるほどな。そうだリヨン、さっきの金は半分ずつだからな。三憶五千万だ。欲しいのがあったら言ってくれ」
と、小声でリヨンに言った。
リヨンは頷くと、
「お金のことはよくわからないからツトムにまかせる。欲しいのがあったら言う」
そして次々と魔法の武具のオークションは過ぎていく。
「次もすごいぞ。とある貴族から頼まれた依頼品。これは希少だ! マジックバッグ二つ! なんとこの二つの袋は中で繋がっている! さらに時間も止まっております! 容量は100トンまで! さあ1000万からのスタートです!」
「「これ欲しい!」」
ツトムとリヨンが同時に言う。
会場がざわついているから、かなりの金額になるだろうことは予想がつく。
ギルドマスターが頷く。
「これは億単位の入札になるが、それでもいいかい?」
ツトムは頷くと、
「ああ。そうだな、俺の二億とリヨンの二億、足して四億までなら出す」
ギルドマスターはにやりとした。
「よし、まかせろ」
「2500万」
「3000万」
ギルドマスターが手を上げる。
「1億」
会場がざわめく。
「はい、1億です! いませんか!」
「1億5千!」
ギルドマスターがまた手を上げる。
「2億」
「2億! 他いなければ2億で落札です!」
誰も手を上げる者はいない。
「はいおめでとうございます。2億で落札です」
やったっとリヨンとツトムが小躍りする。
ギルドマスターは、
「これは高いんだぜ。2億で落とせたのはかなり運がいい。前に10億で落札されたのを知ってる」
「そいつは運が良かった」
「オークションを見てて思ったのだが、ツトムとリヨンの装備は商店を探したほうがいいかもしれん」
ギルドマスターは顎をぽりぽりと掻く。
「時間があれば明日案内するが」
ツトムは悩む。
「どうするリヨン」
「ん。ツトムに任せる。明日店を回ってもいい」
リヨンは珍しく焦っていない。
ツトムは思った。
やはり闇の種子の影響が強い時は、他の事が考えられなくなっているのだろうか。
今のリヨンが本当のリヨンという事なのだろうか。
「分かった。じゃあお願いする」
「明日の朝な。十時に宿に迎えに行く」
ツトムとリヨンはマジックバッグの支払いを済ませ受け取ると、そのまま会場を後にした。
***
ツトムとリヨンが朝食を食べ終わり、お茶を飲んでいると、ギルドマスターがやって来た。
「おう。時間通りいたな」
ツトムとリヨンは立ち上がる。
「まあな、午後には出たいからな。あと馬も買いたい。馬は一番最後でいい」
「おう。分かった。じゃ、露店を見てから名工の品を取り扱っている店にいくぞ」
ツトムとリヨンはギルドマスターの後を追って宿屋から出た。