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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第十章
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リヨンと闇の種子10


 交易都市トーミン


 港町カザリアを東に馬車を走らせ三日。


 西方地方と東方地方を結ぶ街道のちょうど真ん中にその都市はあった。


 別名眠らない町トーミン。


 沢山の旅人や行商人が行き交い、都市全体に活気があり、この町で手に入らないものは無いというほど物に溢れている。  


 市場は海産物や食物に溢れ、市場を過ぎると様々な商店が並んでいる。

 

 町に入るとまず目につくのは色々な人種だ。


 エルフやドワーフはもちろん、獣人や魔族すらちらほらと目につく。


 さすがにオーガは見かけないが、リヨンが歩いていても誰も気にする事はない。


 一応リヨンの首には奴隷の首輪がつけられているが、最初の闇の種子を手に入れた時に中の魔法石が砕けたらしく、現在はただの飾りになっている。


 入り口での検問さえ済んでしまえばあとは自由だ。


 リヨンは町を入った所で、あまりの人の多さに呆然とした。 


 思わず今日は何かのお祭りなのか? とツトムに聞いて、特にそうではないとわかると二度驚いた。


「こっちだ」


 そんなリヨンを他所に、リヨンの手を引き、ツトムは足早に人垣を抜けていく。


 ツトムはマントのフードを引っ張り出し頭にかぶる。


 しばらく歩き、そして大きな三階建ての建物の前で振り返る。


「ここがトーミンの冒険者ギルドだ」


 中に入ると、ここもかなり混んでいる。


 カウンターには女性が三人座っていて、順番に並んだ冒険者から書類を受け取りそれを処理していく。


 ツトムはなんとか猫耳の従業員を一人捕まえると、


「ギルドマスターにツトムが来たと伝えてくれ」


「わかりました」 


 従業員は心得たもので、すぐにカウンターの奥に消えていく。  


 さすがにこの場所に居る人たちは猛者が多いからか、オーガのリヨンをじろじろと見る視線が飛んでくる。


 リヨンは思った。


 なるほど。ツトムがフードを被ったのはこのためか。


 魔族にオーガなんて組み合わせはまるで敵のようなものだ。


 リヨンは視線に憶すること無く、逆に胸を張る。


 しばらく待つと、がっしりとした、筋肉の塊みたいな男が奥から出てくる。


 ツトムを見つけると、声を掛けてきた。


「よお。久しぶりだな。今日はどうした? お? そこの姉ちゃんも一緒なのか?」


 ギルドマスターと思しき男は、これまたリヨンをじろじろと見ながら言った。


 ツトムはフードのまま頷くと、


「ああ。少し大物を倒したからな。引き取ってもらいたい」


「おお。お前の大物っていうのは期待できるな」


 ギルドマスターはにやりと笑うと、


「じゃあついてきな」


 と奥に来るように手招きする。


 ツトムはリヨンの手を引きギルドマスターに連れられて、中庭に面した作業場に移動した。


 作業台で一人の男がイノシシの皮を剥いでいる所だった。


 ツトムを見ると頭を少し下げる。


「で、今日は何だ? 大物と言うと何だ、まさかワイバーンか?」


「いや、ワイバーンではない。そうだな、まずはこれを見てくれ」


 ギルドマスターはワイバーンではないと聞くと、少しがっかりとした表情をした。


 しかしツトムはにやりとし、作業台の上に一抱えもある眼球を取り出して置く。



「!!!!!」



 ギルドマスターは口をあんぐりと開け、しばらくそのまま固まった。


 作業していた男も同時に固まった。


「おいおい、まだまだあるぞ。次出してもいいか?」


 そこでふっと正気に返ったギルドマスターは、ツトムの肩を掴み、


「まままままま待て待て待て待て!! なんだこれは! ワイバーンなんてもんじゃないぞ! この大きさ……一つ目の巨人でも倒したのか!?」


 ツトムは楽し気に、


「いや氷竜だな。氷竜のエルダードラゴンを倒した」


 それからリヨンをちらりと見て、


「まあ倒したのは彼女のおかげだけどな」


 ギルドマスターは今度は畏怖の念が篭っている目でリヨンを見る。 


「オーガか……またすごい奴隷を手に入れたもんだな……」


 リヨンはすまし顔だ。


 ツトムは次々と残りのドラゴンの部位を出していく。


 もう一つの眼球、ツノ、爪、牙、歯だ。


「内臓はどうする? 俺の魔法の袋で持ってきたから時は止まってる」


「いや待て。内臓はすぐには無理だな。いや、こちらの魔法の袋を使えばいけるか」


 ギルドマスターは、すー、ふー、と息を吸い頭を落ち着かせる。


「全部オークションに出したほうがいいが、金が即入用だってんなら、いや、うーむすぐには金を用意できないぞ。このギルド始まって以来の超大物だ」


「オークションというのは時間がかかるんだろう?」


「いや、これなら明日のオークションにねじ込める。ちょうどキャンセルの依頼が一件ある」


 ツトムはリヨンに聞く。


「明日の夜まで待てるか?」


「ああ。この街は面白いしな。食い物も変わったものがいっぱいあった」


 リヨンはこの町が気に入ったようだ。


「よし、それなら決まりだ。明日のオークションで頼む」


「おう、まかしとけ!」


 ギルドマスターは力強く頷いた。




 「シフト」と「レベル」が、ぐちゃぐちゃになっていたので過去話での間違いを直しました。

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