リヨンと闇の種子7
洞窟の中は熱いぐらいだった。
ここは……火口に繋がっているのか。
ツトムはリヨンに文句を言われながらも防寒具を脱いだ。
着なくてもいいなら着ないほうがいい。
着てるままだとかなり動きが制限されてしまう。
そして歩き始めるとすぐにその場所に着いた。
広い空間だった。
奥が赤い。
溶岩が流れているようだ。
そしてその前に。真っ赤な目をした巨大なドラゴンがこちらを爛々と見つめていた。
「氷竜は氷竜でもエルダードラゴンじゃねーか! 話に聞いてた氷竜の二倍はあるぞ!」
ツトムの額から汗がどばっと出る。
「エルダードラゴン?」
リヨンが眉を寄せる。
「ああ。老竜だ。普通の竜が千年ほど生きると進化する。元になった竜種とは強さが桁違いに違う。一回退却したい」
ツトムは腰が引けてる。
「なぜ?」
「普通の氷竜だって勝てるかわからないんだぞ!」
話し合っていても二人とも氷竜から目は離さない。いや、離せない。
「私の思い人は一人でスカイドラゴンに勝ってたわ。このぐらいの敵でちょうどいい」
リヨンは舌なめずりをした。
「またそいつの話か。どんだけ強いんだよそいつは……。しゃあねーな。危なくなったら俺は退くからな」
「ん。問題ない」
リヨンは胸の前でガントレットを打ち鳴らす。
リヨンとツトムは氷竜に近づいていく。
外見は氷で作ったドラゴンだ。
その氷竜に一挙手一投足を見られている。
ツトムとリヨンが近づくと、氷竜が声を掛けてきた。
しかし、ツトムには分からない言語だった。
リヨンは氷竜から目をそらさずにツトムに聞いた。
「なんて言ってる?」
「わからない。たぶん古代語だ」
リヨンは眉間にしわを寄せる。
「たぶん、闇の種子を置いていけ、みたいなことを言ってるわね」
「わかるのか?」
「わからないわ。雰囲気よ」
ツトムは頷いた。
「まあそんな感じはするな」
話が通じないとわかると氷竜は立ち上がった。上を向いて声を上げる。
「るるるるるるるるる」
そしてリヨンを見定めると、襲い掛かってきた。
両足はヒレになっているので動きが遅いのが欠点か。
「リヨン、弱点を探る。少しの間耐えてくれ」
「ああ!」
ツトムは心の中で鎧の精霊に声を掛ける。
氷竜とは円を書くように移動する。
『精霊!タクティクス!』
『私の名前はライカです』
『ああ、わりぃ! ライカ、あいつを分析してくれ!』
『了解しました』
『弱点でよろしいでしょうか?』
『ああ!』
『分析終了。弱点はヒレの根元。歩行が出来なくなります』
『あんがとよっ!』
すぐにそのまま声を張り上げる。
「リヨン! 弱点はヒレの根元だ! 歩行出来なくなる!」
「わかったわ!」
リヨンは氷竜の氷のブレスを衝撃波で吹き飛ばす!
リヨンはだんだんとわかってきた。
こいつの攻撃は長い首からの噛みつきと、体当たり、尻尾の薙ぎ払いだ。
それから氷のブレス。
これだけならリヨンに負ける要素がない。
リヨンは前のヒレに衝撃波を叩き込む!
そこへツトムも剣を抜いてヒレの根元に斬撃を叩き込む!
氷竜はたまらず上体を起こした。
押しつぶす気だ。
リヨンとツトムは慌てて氷竜から距離を取る。
そこへ今までで最大の氷のブレスが氷竜からリヨンとツトムに放たれた。