リヨンと闇の種子5
本日二回目の更新です。
リヨンとツトムは一本角のグリズリーと戦っていた。
既に通常の個体の二倍ほどの大きさがあり、肩に盛り上がった筋肉がその力強さを表していた。
しかも黒い闘気を纏い、リヨンの衝撃波もあまり効いていない。
「俺が切り裂くからそこから衝撃波を叩き込んでくれ!」
ツトムが叫ぶ。
「……わかった」
ツトムが技名を叫ぶ。
「レベル四シフト! 切り裂け!!」
「“螺旋剣”!!」
ツトムの螺旋を描きながらの神速の刺突がグリズリーの毛皮を切り裂き、筋肉に届く。
怒ったグリズリーが殴り返そうとしたところで、ツトムはすぐに斜め後ろへバックステップし、リヨンと場所を代わる。
リヨンの薄青いオーラが真紅のオーラに代わっていく。
“鬼神拳”!
ツトムがえぐったグリズリーの右胸へ全力の“鬼神拳”を叩き込む!
グリズリーの口からよだれと一緒に赤い血が吐き出される。
今度はグリズリーがリヨンに殴ろうとしたところを、ツトムとスイッチをする。
「“螺旋”じゃまだ力が足りないか。ならこっちはどうだ」
ツトムの持つ剣に黒い闘気が纏わりつき、三倍ほどの巨大な剣になる。
“巨神斬り”!!
ツトムはその巨大な剣を袈裟懸けに振り下ろす!
ツトムの剣はグリズリーの体を斜めに切り裂く!
すぐにリヨンと場所を代わり、リヨンは丸太のようなグリズリーの一撃を掻い潜り、また血を流している右胸に“鬼神拳”を叩き込む!
それでもしぶとく、グリズリーは半狂乱になって闘気を纏わせた爪を振り回す。
一発喰らえばそれで終わりだろう攻撃を、リヨンは華麗にかわしていく。
「ヒュウ」
思わずツトムの口から口笛が漏れる。
リヨンが声を上げる。
「……スイッチ」
「おうよ!」
今度はツトムが前に出る。
ツトムもなんとかグリズリーの攻撃をかわしていく。
リヨンは大きく三歩さがり、右こぶしを腰に構えオーラを拳に集中させていく。
ツトムは背後にリヨンの闘気が膨れ上がっていくのを感じた。
この一撃で終わらせるつもりか。
ツトムが叫ぶ!
「タイミングはリヨンが!」
リヨンは短く答える。
「ああ」
そして闘気を溜め終わったリヨンが声を上げる。
「いくぞ!」
「了解!」
ツトムは大きく右後ろへ飛ぶ!
リヨンが一歩で一気にグリズリーの前に飛び出し、そのまま限界まで貯めた真紅の闘気をグリズリーの心臓に叩き込む!
「“鬼神拳”!」
今回は一発ではない。“鬼神拳”の連打だ!
衝撃波の上から衝撃波をかましていく!
グリズリーの動きが立ったまま止まった。
リヨンが最後の一発を鳩尾に思い切り叩き込むと、グリズリーはそのまま仰向けにゆっくりと倒れた。
ズシン、と大きな音が響く。
グリズリーは白目をむき、ぴくぴくと痙攣している。
するとグリズリーの胸からこぶし大の闇の塊が出現し、ゆっくりとリヨンの方へ向かっていく。
リヨンはそれを自分の胸に受け入れる。
「あぁ」
そして艶っぽくため息をついた。
リヨンはしばらくその快感に酔いしれる。
これで闇の種子をまた一つ手に入れた。
ツトムが複雑な表情でそのリヨンを見つめていた。