表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第二章
19/379

竜の試練7

 起きたら真っ暗だった。ものすごいあせった。


「起きたかにゃ」


「う、うん。おはよー。真っ暗だけど」ミオの声でほっとして落ち着く。


 とにかく明かりをつけよう。                  

 月灯の小刀は夜じゃないと光らないので、腰からトンカチを外し、明かりの呪文(ライト)をトンカチに唱えてみる。

 明かりの呪文(ライト)は問題なく発動し、虹色のトンカチが光を放つ。

 良かった。これが使えないと夜まで何もできないところだった。

 何の魔法が使えて何の魔法が使えないか、いまいちよくわからない。

 ファイヤーボールも手から離すまでは普通に発動するので、単に放出系の魔法だと使えないとか、そんな感じなのだろう。

 朝ごはんは黒パンでさっとすませ、昨日の続きのミオの鎧を作ってしまおう。


「ミオ、もうちょい待って。今作っちゃうから。」


「うにゃ」ミオは眠いのか横になって視線だけ僕に向けている。


 早速、ミオの鎧を組み立て始める。と言っても、もうパーツは全部作ったので、金具の取りつけと細かい調整だけだ。

 せっかくだから彫金スキルで簡単に装飾を入れていく。本格的にやるといくら時間を使っても足りないので、ほどほどにだ。

 よし、鎧は出来た。あとはオリハルコンの爪だ。

 手甲に爪がついてて、爪は固定で、握りを掴んで振るえるように作る。

 切っ先は突き刺してもよし、引っ掻けても良しの形状だ。

 鎧も爪も、納得のいく満足の出来だ。


「ミオ、出来たよ」


 ミオに言うといそいそと僕の前に来て座る。


「どうすればいいかにゃ」


「座ってて、着かた教えるから」


 僕はミオに説明しながら鎧と爪の使い方を教える。


「胸がちょっと窮屈にゃ。」


「うん、でもそれは慣れると気にならなくなると思うよ。しばらく着て見て、まだ窮屈なようなら直すよ」


「わかったにゃ!ありがとにゃ!」


 ミオは嬉しいらしく爪にすりすりしている。

 曰く、僕がミオのために作ったというのが嬉しいらしい。


「じゃあ洞窟を進もうか。」


「思いついたんにゃけど、空飛ぶ魔法で落ちたところから出れないかにゃ」


「うーん、難しいと思う。その場合、風の魔法で自分の周りの空気を制御しなきゃいけないけど、それだと確実に魔法は地面に吸われちゃうから。微妙な調整のいる風魔法はダメだと思う」


「よくわかんにゃいけど、じゃ先に進むにゃ!冒険にゃ!」


 ミオの先導で洞窟の中を先に進む。どうやら風の流れがあるらしい。

 ここは典型的な鍾乳洞だ。

 鍾乳石がたくさんつららのようにあり、ここがファンタジーの世界にもかかわらず、その中でもさらにファンタスティックな光景が僕たちを感動させる。


「すごいきれいだにゃ」


「…うん」


 僕とミオは言葉少なく先に進む。鍾乳石の塊や、階段状にずらりと石が連なっている小さな棚田のような場所に感嘆の声を上げる。

 明かりの呪文(ライト)は時間が来ると切れるので、僕のトンカチとミオの爪に時間差で掛けてある。

 ちなみに夜目の利くミオも光の全くないこの洞窟の中では何も見えないらしい。

 

 どれくらい進んだだろうか。

 不意にミオが声を上げた。


「ん。何かいるにゃ」


 ミオの気配察知のスキルに掛ったものがいるらしい。僕は身構える。


「もうちょい先だにゃ。結構大きい。向こうも気づいたにゃ。魔獣だにゃ。」


 どっちみち先に進むしかない。


「ちょっと初めて感じる気配だにゃ。気を付けるにゃ」


 僕は頷いて両手にトンカチを構える。

 

「ドラゴンかな」


「わからにゃい。かなり強いにゃ…」


 ミオは真剣なまなざしだ。


「はやい、くるにゃ!!」


 進行方向に空気が揺らいだと思ったら、いきなり出現したその白い魔獣が角を突き出して突進してくる!

 ミオは余裕で、僕はぎりぎりにその突進をかわす!


 そのままの勢いで通り過ぎ、止まると同時に姿が消える!

 僕は叫ぶ!


「ミオ、あいつ透明化のスキルを持ってる!!!攻撃するときしか姿を現さないっ!!!」


 一瞬見えたソイツは色こそ白かったが、土竜にそっくりだった。だが動きは土竜の比ではない!


「厄介だにゃ、狙いが定まらないにゃ!」


「分かった!どうせ避けれないなら、僕が動きを止める!」


―――――超級魔法アームドシェル


 魔力を体にまとわせ、防御力を劇的に上げる魔法を唱える。

 闘気技にも同じ効果の身体強化があるが、僕は闘気は使えないから魔法で代用だ。


 僕の防御力が飛躍的に上がる。


 そして僕は腰を落として構える。

 くるなら来い!僕が動きを止めればミオがとどめを刺してくれるはずだ。


 その時僕はまだ、こいつを甘く見ていた。

 今思えばもっと確実な戦い方があったと思う。

 だがその時の僕はこれで十分だと思ってしまっていた。

 今まで危機らしい危機がなく、戦いを甘く見ていた。 


 そしてその代償は高くついた。


 突進してくるそいつのツノが思ったより低く地面すれすれで、僕は受け止めることができなかった。

 下から突き上げるそいつのツノは僕の左太もものちょうど鎧の防御の及ばない所に綺麗に入った。


 ガヅンという衝撃と共に、何かが吹き飛んでいくのが見えた。




  そして、僕は左足を失った。




夜にもう一回更新します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ