凱旋4
目がかすんで周りが良く見えない。
白い靄が掛ったようだ。
どこかに力を入れようとすると激痛が走る。
「ゆう、ゆう! 大丈夫にゃんか!」
頷くこともできない。
口の中がすすでいっぱいな感じがする。
僕は意識を持っていかれそうになるのを根性で耐える。
再生は使えない。今再生を使ったら体力を持っていかれそのまま死にそうだ。
今気を失ったらおそらく長くはない。
ミオに何とか声を出す。
「え、、、、えり、、、」
ミオの復唱する声が聞こえる。
「うんにゃ。えり?」
「く、」
「えりく? ! わかったにゃ!」
ミオが袋の中をごそごそとしてから、中から青い瓶を取り出した。
正解だ。
エリクサーだ!
急いでくれ。もう持ちそうもない。
ミオは僕の口に中の液体を流し込む。
「かはっ」
すこし咳込んだが、全部なんとか飲み下す。
飲んでる端から体が治っていくのが分かる。
ただ、状態が状態だったから完全回復には時間がかかりそうだ。
「ミ、オ、たす、助かった……あり、がとう……」
ミオは僕を抱きしめる。
「良かったにゃ。助かったにゃ」
そして僕を鞍に乗せる。
もう座れるぐらいまでは回復した。
しかし今のは危なかった。ミオが付いてきてくれなかったら死んでいた。
無言でミオは立ち上がった。
今ウリシュナはグリフから距離を取り、グリフを中心に旋回している。
グリフはまだくつくつと笑っている。
ミオが無言で構えを取る。
「あとは任せるにゃ」
ウリシュナの背からそのままグリフに向かって空中を走る!
ああ、ミオ、かなり怒ってるな。いや、そうじゃない!
対抗策がないまま行ったら二の舞だ!
ミオが気合の雄叫びを上げる。
「にゃおああああああああ」
グリフが振り返ってミオを見てにやにやしながら言う。
「来い!」
グリフは左手に短剣、そして右手にカタナを構える。
僕のカタナを。
しまった、さっきの電撃の時か。
やばい、
トンカチの方は持ってない。
よし。
僕はトンカチを呼ぶ。
すぐに真下から猛スピードで飛んできたトンカチをキャッチする。
ミオが橙色の闘気を纏い、ジグザグに走りながらグリフの間合いに飛び込む。
グリフは余裕の笑みだ。
電撃は使わない。
おそらく僕のカタナを持ったので使ってみたくなったんだろう。
刀で斬る気満々だ。
僕はウリシュナに、
「回復したから行ってくるよ。ありがとう」
そして天使の翼を広げ額に第三の目を開き、グリフに向けまた飛び立つ。
ウリシュナは後ろを向いて頷いた。
グリフはカタナでミオに斬り付ける!
ミオは軽く交わし、技を発動させる。
「お前はゆるさにゃい!」
“幻影攻撃”
ミオは闘気の残像を残しながらグリフに攻撃を加えていく。
グリフの攻撃はかすりすらしない。
ミオはグリフの周りを上下左右自在に動きながらツメの攻撃を入れていく。
グリフは反応しきれない。
しかしここからだ。
僕でもわかる。次の攻撃は雷だ。
「ミオ、雷に注意だ!」
「わかったにゃ!」
僕の第三の目に、三秒後グリフが全身から雷を放つ映像が浮かんだ。