魔神迷宮39
氷のレーザーが地面を走り、ウルヌスに当たるとそこから凍っていく。
ウルヌスが焦りの声を上げる。
「し、しまった」
だがもう遅い。
レーザーがウルヌスの体を縦横無尽に走り、ウルヌスの体を氷漬けにしていく。
僕は間髪入れず声を張り上げる。
「姉さま!」
しかし僕が声を掛けるよりも早く、姉さまは技を唱えていた。
――――“真竜・勇者の一撃”
ウルヌスは凍っている。今なら外すことはない!
バシッという音ともに氷にひびが入り、腕の一つが動きウルヌスが左手だけ動かした。
気が緩んで氷の拘束が弱くなったか。
内部から砕く気か。
させない!
僕は砕かれた場所に氷のレーザーを当て、再び凍らせていく。
光の翼を広げ、姉さまが光の奔流を剣に纏い大上段から振り下ろす!
まばゆい光があたりを埋め尽くす。
何かが蒸発する音が聞こえてくる。
やつたか!?
光の奔流が収まったその場所に、ウルヌスが立っていた。
効いてないのか!?
いや、体のあちこちから破裂するような音が聞こえる。
ウルヌスの体が爆ぜていく。
表面が爆ぜて内部の筋肉がむき出しになっていく。
六本の腕の下の体が魔銀に戻り、バシャっという音とともにその液体は地面に広がった。
ウルヌスは膝をつき、呻き声を上げた。
「な、何度でも……魔銀がある限り……我は負けぬ……」
ウルヌスが呪文を唱えようとしている。
させるか!
僕はウリシュナの背から飛び降り、流れ出た魔銀に触れ、ウルヌスと同時に呪文を唱える!
――――「「暗黒魔法“魔銀変化”」」
ウルヌスが驚愕の声を上げる。
「ば、馬鹿な! なぜお前がこの呪文を唱えられる! ただの人間が!」
僕はにやりと笑うと、それには答えず、魔力の扱いに集中する。
魔銀に対し、魔力で綱引きだ。
引っ張る力に魔力を使う。
僕は回復したばかりの魔力を惜しげもなく使い、魔銀を引き寄せる。
ウルヌスは目を見開いた。
「魔力量で我を越えるだと……」
魔銀の綱引きが終わった。
ウルヌス四に対し、僕が六ぐらいか。
僕は自分の物にした魔銀を体に纏わせる。
腕を四本生やし、体の表面を覆い、残りは全部尻尾に回した。
ウルヌスは三節ほど下半身につぎ込んだようだ。
新しい手は二本だ。
あとは手を作る余裕がなかったのか、後の二節は普通にムカデのような足になっている。
全部で八本の手、四つの足だ。
ウルヌスは黒いハルバードを作り出し、八本の手全部に装備した。
しかし、これなら人数さえいればどうにかできるかもしれない。
僕は姉さまと視線を合わせ、お互い頷くとウルヌスに向かって走り出した。
僕は走りながら袋から次々と武具を出し手に装備させる。
ヒヒイロカネのカタナ、トンカチ。
古竜の牙、牙を削りだした小剣。
魔法のカイトシールドとリヴァイアサンの鱗から作ったシールド。
よし、いける気がする!
姉さまが空中から先に技を繰り出した!
“真竜・聖光星爆斬”
そこへ僕も飛ぶ斬撃を放つ。
“真竜・彗星斬り”
姉さまの“聖光星爆斬”と、僕の四本の腕から飛ぶ四つの斬撃がウルヌスを襲う!