魔神迷宮36
ウルヌスの体節のすべてに目が見開いた。
くそっ、これで死角から攻撃という選は消えた。
接近戦はダメだ。
あの数のハルバードに襲われたらとても耐えきれるものじゃない。
「ウリシュナ、どうする?」
「一撃離脱か遠距離攻撃しかないねえ。とりあえずブレスで牽制しながらだね」
そう言うとウリシュナは口から炎を吐き出した。
“ドラゴンブレス”
“ストーンウォール”
ウルヌスは石の壁を呼び出し、ドラゴンブレスを防ぐ。
石の壁を使ったという事はブレスは有効という事か!?
「オル、ユウ! バルガが来る!」
ハッとして姉さまの剣で指示したほうを見ると、バルガが右側から突進してくるところだった。
いつの間にか首が五本に戻っている!
ウリシュナがドラゴンブレスをやめて、バルガに向き直る。
「ランスチャージ!」
僕は慌ててランスを構えると、ウリシュナもバルガに首を下げて突進する。
首は狙っても再生できるなら意味はない。
狙うべきは心臓だ。
心臓をつぶす。
――――“ 真竜・流星突き ”!
僕はランスの射程圏にバルガが入った瞬間に技を繰り出す!
突進してきたバルガに避けることはできずに全弾入る。
首は千切れ飛び胴体に“流星突き”が達すると、バルガは一瞬ふくらみ、そして内側から爆ぜた。
あたりに銀の雨が降り注ぐ。
あんまり心臓は関係なかった……。
しかし今のはタイミングが少し遅かったら、こっちがやられていたかもしれない。
姉さまに感謝だ。
「さあ、残りはお前ひとりだ」
僕はランスをウルヌスに向ける。
すると、
――――超級光魔法“ホーリーレイ”
姉さまがいきなり呪文を唱えた!
光の光線がウルヌスを射抜く……、いや、ホーリーレイはハルバードの一つでいとも簡単に受けられた。
これは厄介だ。
いや、ハルバードごと貫けばいい話か!?
「ふん、掛かって来ないならこっちからいくぞ」
ウルヌスがハルバードを振り上げ、近づいて来る。
“ドラゴンブレス”
ウリシュナがもう一度炎を吐いた。
またウルヌスがストーンウォールを唱える。
「馬鹿の一つ覚えか。芸の無い」
ウリシュナは無言だ。
僕は“リンク”にウリシュナと姉さまを追加して言う。
『僕が最大の力をこめて“勇者の一撃”を入れるからフォローお願いします!』
『『了解』』
『ミモザ、回復を頼む』
元気のいい返事が返ってくる。
『はい!』
よし。僕はランスを鞍に固定して、ウリシュナの背中に立ち上がると、右手に虹色のカタナ、左手に虹色のトンカチを装備する。
さらにそれに闘気を込めて闘気剣にする。
そして目をつぶって集中し、体の中の魔力を練る。
いける。
僕は目を開け、技名を唱えた。
“真竜・勇者の一撃”
僕の左右の手から光が流れ出て天へと轟く!
やはり片手ずつでは光の魔力が暴れる。それを必死にさらなる魔力で制御する。
暴走一歩手前の両手の光の奔流をなんとか抑える。
前に撃った時よりはやり方が分かってる分制御もしやすい。
そして僕は左手と右手、両方に作り出した光の柱をウルヌスに向かいXの字に振り下ろした。
“真竜・勇者の一撃”……“クロス”!!!!
光の柱はXの字の形になり魔神王ウルヌスに向かって放たれた!