魔神迷宮34
ウリシュナと僕はウルヌス相手に戦っている。
ウリシュナの爪とウルヌスのハルバードが火花を散らす。
ウルヌスのハルバードはウリシュナの前足に装備した手甲で防いでいく。
そして闘気で強化した爪でウルヌスを攻撃する。
さらに隙をついて僕がランスの一撃を入れる!
ウリシュナが後ろに回避して距離を取ったらランスチャージだ。
「チャージ!」
僕も繰り返す。
「チャージ!」
そしてウリシュナはウルヌスに突進する。
僕とウリシュナは、ウルヌス相手に、互角、いや、優勢に事を進めている!
「しかたがないか……」
打ち合いの最中にウルヌスがぽつりとつぶやいた。
それを聞いて、何か嫌な予感でもしたのか、ウリシュナが大きく距離を取った。
ウリシュナが、
「何を企んでる?」
そう問うと、ウルヌスが答えた。
「なに、今のままでは勝つのは難しいな、と思ってね。本気を出させてもらおうかと」
……今までは本気じゃなかったのか!?
ウルヌスはそのままふわりと後方へジャンプした。銀色の液体の入ったプールの中に飛び込む。
銀色の液体の入ったプールはそんなに深くはないらしい。膝下ぐらいまでか。
ウリシュナが眉を顰める。
「魔銀か……? 一体何をするつもりだ?」
「くくくく、少し戦力を補充しようと思ってね」
そう言ってウルヌスは魔銀と呼ばれた液体を掬い上げる。
そして呪文を唱えた。
――――暗黒魔法“屍銀転生”
なんだあれは。
魔銀と言われたその動く銀色の液体が、ウルヌスの前に三つの柱となって持ち上がっていく。
そして何かを形作っていく。
あれはまさか……。
「見覚えがあるかね? さあ、我が息子達よ復活せよ!」
見覚えがあるなんてもんじゃない。それは確かに僕がここ数日で倒した魔神王達じゃないか!
巨体に巨大なツノ、長い尻尾の魔神王パゴス。
「魔神王パゴスここに」
グレーターデーモンの体に頭が五つ。下半身は巨大な黒い虎の魔神王バルガ。
「魔神王バルガここに」
グレーターデーモンより大きさが三倍ある、魔神王マモン。
「魔神王マモンここに」
三つの銀の塊は、ウルヌスに向かい畏まった。
銀で作られたその体は金属光沢を放ちながらも、それ以外は倒す前の魔神王とまったく一緒だ。
「よしよし、ではお前たち、自分達の仇を取るがよい」
「「「ハッ!」」」
銀で出来た魔神王達は僕らの方へ向き直ると、構えを取った。
こ、これはまずくないか。
僕の額から汗がどばっと流れ出る。
僕が覚悟を決めて、魔神王達相手に構えたその時だ!
後ろから超高速で飛んでくる者がいる!
やばい、このタイミングでまた新手か!?
振り返った僕の目に映ったのは、白い光の玉だった。
それはそのまま魔神王パゴスにぶち当たり、あたりに盛大な銀の液体をぶちまけた!
そのぶち当たったモノは、すっくと立ちあがると、驚いている僕たちを尻目に言った。
「手伝いが欲しいところじゃないかしら?」
僕は驚愕した。
そしてそれはそのまま歓喜に代わる。
「姉さま!」
そこに居たのは僕の姉さま、勇者アンフィだった。