魔神迷宮29
この階もマモンの居た場所の下に隠し階段があった。
僕らはその最後の階段を下へと降りる。
時間にして一時間ぐらいか。
階段を降り切った場所に広い空間があるのが、“ライト”の明かりに照らされて見えてきた。
僕は階段を降りたところで足を止めた。
かなり広い空間だ。天井は高く、正面には今までにはなかった金属でできた両開きの扉があった。
そして僕が足を止めた理由。
グレーターデーモンがハルバードを持って扉の両脇に立っていたのだ。
人間の三倍の黒い体躯に黒い皮膜の羽。赤い目にヤギのツノ。
地上で戦ったやつと同じ奴だ。
右のデーモンが話しかけてきた。
「お前たちは何者だ。誰かが来るなどと言う連絡は受けてないぞ」
「僕らは人間だ。魔神王に用がある。そこを通してもらおうか」
グレーターデーモンが目を見開く。
「人間だと……? ほかの王たちはどうした? どうやって抜けてきた」
どうやら倒したとは思っていないらしい。
「すべて倒してきた。残りは魔神王ウルヌスだけだ!」
僕らは武器を抜く。
「なにを馬鹿な……。まあよい。人間を先に進ませるわけにはいかない。ここで死んでもらおうか」
戦いが始まった。
僕は右のデーモン、ミオが左のデーモンに突っ込む。
グレーターデーモンはハルバードを振り回し僕を横なぎに払う。
僕は準備してた技を発動させる。
―――― “ 真竜 ・攻撃反射 ”!!
“真竜”の力を込めたカウンターが、ハルバードごとグレーターデーモンの右腕を切り飛ばす!
そのまま懐に入り、
―――― “真竜・流星剣”
を、至近距離からお見舞いする。
僕の必殺のコンボだ。
ハルバードの横薙ぎの攻撃は、普通なら隙の無い攻撃なのだが、“攻撃反射”のスキルを使えば簡単に対応できる。
そしてヒヒイロカネのカタナに“真竜”の力を乗せた“流星剣”だ。
剣は何の抵抗もなくグレーターデーモンの体を穿っていく。
そして体中から血を吹き出し、グレーターデーモンはその場に倒れ伏した。
時間にしたら一瞬だ。
僕はミオの方を見ると、ミオは“幻影攻撃”!でいろんな部位を切り飛ばす。
ハルバードでさえ真っ二つにしてしまっている。
やはりヒヒイロカネの爪は圧倒的だ。
僕が倒してから数秒でミオももう一体のグレーターデーモンを倒していた。
「さすがに圧倒的ですね。グレーターデーモンがゴブリンに見えてきますよ……」
カレンが呟くように声を出した。
僕は肩をすくめる。
そして僕らは扉を開けた。
***
出口は崖の中腹だった。
下に向けて岩の階段がある。
そこから道が続いている。真っ直ぐに。はるか遠くに見える黒いピラミッドに向かって。
崖を降りると密林だ。
不思議なことに天井が光っていて、あたりは外の世界の昼間とまではいかないまでも、結構な明るさがある。
しかし広い。
僕らの後ろには壁があるが、左右は壁が見えない。
崖の右手には勢い良く水が噴き出していて、滝になって下に落ちて川を作り出していた。
あのピラミッドが最後の砦か。
僕らはピラミッドに向かって歩きだした。