魔神迷宮22
明日から!しばらく戦闘が続くので、今回まで箸休め的な感じです!
「そんなまさか……」
ミオが促す。
「やってみるにゃ」
「………。しょうがないな」
まさかそんなことがあるとは思えないが、僕は棺の女性に一瞬だけキスをする。
キスをした瞬間に、甘い花の香りに包まれた気がした。
僕は女性をのぞき込む。
……。
……。
……魔法が解けたようだ。
胸が上下している。
……この世界ではキスに魔法でもかかっているのだろうか?
クリスタルの棺が魔力の粒子となって消滅してく。
女性は白い花と一緒にふわりとベットの上へと落とされる。
「ん……」
女性はゆっくりと目を開けた。
まだ夢を見ているかのような目で、両手を上へと伸ばし、僕に触れると僕の体を手繰り寄せて、僕を抱きしめながらもう一度キスをした。
今度は長く。
甘い花の香りにあたりが包まれる。
長いキスの後、僕を見ながらその女性は語りかけてきた。
「あなたはだあれ?」
「僕は……。ユウ。ユウ・オールドリバー。君は?」
女性は眉にしわを寄せて、考え込む。
「……わからないわ。思い出せないもの」
そこへマリーナが白いローブを女性に渡しながら言った。
「これを着なさい。私の予備のローブだけど」
マリーナが渡すと女性はすこし困った顔をして受け取った。
「……着る? このままでいいわ」
マリーナが慌てた。
「いや、それはまずい。いろいろとまずい」
「僕も着たほうがいいと思うよ」
僕がそう言うと、
「そう。それなら着るわ」
ローブを頭からかぶる。
「どう?」
女性が立ち上がってベッドの上でくるりと回った。
ローブから覗ける鎖骨と膝から下の生足が見えていて艶めかしい。
「うん、似合ってるよ」
「そう?」
嬉しそうだ。
するとマリーナが、
「なにか思い出せることはあるかい? この場所に見覚えは?」
と聞くと、周りを見回しながら、
「うーん。何も思い出せないわ。でももっと明るいところに居た気はするわ」
「……そう。名前も覚えてないとなると不便だね。ユウ、なにかつけてあげなさい」
「僕が? うーん」
するとその女性は、
「私もユウがいいわ! あなたと一緒の!」
きらきらした瞳で言われてしまった。
僕は、
「いやそれはさすがに駄目だよ。ややこしくなる。そうだね、じゃ、ユウカ、でどう?」
「ユウカ。ユウカ。ええ、それで!」
ユウカは嬉しそうに頷いた。
***
階段はすぐに見つかった。
マリーナが構造的にここではないか、と腕だけ部分竜化して、ベットの乗っていた黒大理石の板を押すと、その下に下に続く階段があった。
僕らは後続をまって、一度ここで泊まることにした。
どこからか魔神王が出てくる可能性もある。できれば魔神王を見逃したくない。
それからマリーナに、ユウカが魔神王の可能性もあるから気をつけなさい、とも言われた。
その可能性もあったのか。
でも見るからにユウカは人間だ。
僕は魔神王に連れてこられた人間ではないかと思う。
とりあえずは後続の皆を待つことにした。
***
夕食は皆リヴァイアサンの肉を食べている。
たしかにあれは代わるものはないぐらい美味しかったけど。
全員あの肉を魔法の袋に詰めてきたんだろうな。
僕も詰めてきたけど!
ということで僕らもご飯はリヴァイアサンの肉にした。
ユウカも食べられたから良かった。
夜はユウカだけベッドに寝てもらって、僕らはミオとティナと簡易テントで寝るよ、と言ったら、ユウカが、
「それくらいならベッドで一緒に寝ましょう」
と無理やりベッドに引っ張られた。
一人だと寂しいから、と。
なのでベッドにミオとティナ、そしてユウカで寝ることになった。
例によってティナはすぐに寝てしまった。
お子様だからね。
それはそうとして。
ミオが今裸だ。
鎧を脱いでしまっている。
そしてユウカも裸だ。
こちらは分かる。ローブを着たまま寝たくなかったのだろう。
ミオ、対抗したか。
ユウカは天蓋のカーテンを閉めた。これで中の事は外からは見えない。
ミオの希望で今日は二十八歳の姿だ。
大きいから抱きつきやすいのがいいのだそうだ。
今の状況はやばい。
特にユウカ。
長い黒髪におおきなおっぱい。
やばい。好みだ。
この二人に挟まれて、僕は我慢できるのだろうか。
……。
……。
……。
出来なかった……。