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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第九章
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魔神迷宮22

明日から!しばらく戦闘が続くので、今回まで箸休め的な感じです!



「そんなまさか……」


 ミオが促す。


「やってみるにゃ」


「………。しょうがないな」


 まさかそんなことがあるとは思えないが、僕は棺の女性に一瞬だけキスをする。


 キスをした瞬間に、甘い花の香りに包まれた気がした。


 僕は女性をのぞき込む。


 ……。


 ……。


 ……魔法が解けたようだ。


 胸が上下している。


 ……この世界ではキスに魔法でもかかっているのだろうか?


 クリスタルの棺が魔力の粒子となって消滅してく。


 女性は白い花と一緒にふわりとベットの上へと落とされる。


「ん……」


 女性はゆっくりと目を開けた。


 まだ夢を見ているかのような目で、両手を上へと伸ばし、僕に触れると僕の体を手繰り寄せて、僕を抱きしめながらもう一度キスをした。


 今度は長く。


 甘い花の香りにあたりが包まれる。


 長いキスの後、僕を見ながらその女性は語りかけてきた。


「あなたはだあれ?」

 

「僕は……。ユウ。ユウ・オールドリバー。君は?」


 女性は眉にしわを寄せて、考え込む。


「……わからないわ。思い出せないもの」


 そこへマリーナが白いローブを女性に渡しながら言った。


「これを着なさい。私の予備のローブだけど」


 マリーナが渡すと女性はすこし困った顔をして受け取った。


「……着る? このままでいいわ」 


 マリーナが慌てた。


「いや、それはまずい。いろいろとまずい」


「僕も着たほうがいいと思うよ」


 僕がそう言うと、


「そう。それなら着るわ」


 ローブを頭からかぶる。


「どう?」


 女性が立ち上がってベッドの上でくるりと回った。


 ローブから覗ける鎖骨と膝から下の生足が見えていて艶めかしい。


「うん、似合ってるよ」


「そう?」


 嬉しそうだ。


 するとマリーナが、


「なにか思い出せることはあるかい? この場所に見覚えは?」


 と聞くと、周りを見回しながら、


「うーん。何も思い出せないわ。でももっと明るいところに居た気はするわ」


「……そう。名前も覚えてないとなると不便だね。ユウ、なにかつけてあげなさい」


「僕が? うーん」


 するとその女性は、


「私もユウがいいわ! あなたと一緒の!」


 きらきらした瞳で言われてしまった。


 僕は、


「いやそれはさすがに駄目だよ。ややこしくなる。そうだね、じゃ、ユウカ、でどう?」


「ユウカ。ユウカ。ええ、それで!」


 ユウカは嬉しそうに頷いた。





***





 階段はすぐに見つかった。


 マリーナが構造的にここではないか、と腕だけ部分竜化して、ベットの乗っていた黒大理石の板を押すと、その下に下に続く階段があった。


 僕らは後続をまって、一度ここで泊まることにした。


 どこからか魔神王が出てくる可能性もある。できれば魔神王を見逃したくない。


 それからマリーナに、ユウカが魔神王の可能性もあるから気をつけなさい、とも言われた。


 その可能性もあったのか。


 でも見るからにユウカは人間だ。


 僕は魔神王に連れてこられた人間ではないかと思う。


 とりあえずは後続の皆を待つことにした。





***





 夕食は皆リヴァイアサンの肉を食べている。


 たしかにあれは代わるものはないぐらい美味しかったけど。


 全員あの肉を魔法の袋に詰めてきたんだろうな。


 僕も詰めてきたけど!


 ということで僕らもご飯はリヴァイアサンの肉にした。


 ユウカも食べられたから良かった。


 夜はユウカだけベッドに寝てもらって、僕らはミオとティナと簡易テントで寝るよ、と言ったら、ユウカが、


「それくらいならベッドで一緒に寝ましょう」


 と無理やりベッドに引っ張られた。


 一人だと寂しいから、と。


 なのでベッドにミオとティナ、そしてユウカで寝ることになった。


 例によってティナはすぐに寝てしまった。


 お子様だからね。


 それはそうとして。


 ミオが今裸だ。


 鎧を脱いでしまっている。


 そしてユウカも裸だ。


 こちらは分かる。ローブを着たまま寝たくなかったのだろう。 


 ミオ、対抗したか。


 ユウカは天蓋のカーテンを閉めた。これで中の事は外からは見えない。


 ミオの希望で今日は二十八歳の姿だ。


 大きいから抱きつきやすいのがいいのだそうだ。


 今の状況はやばい。


 特にユウカ。


 長い黒髪におおきなおっぱい。


 やばい。好みだ。


 この二人に挟まれて、僕は我慢できるのだろうか。


 ……。


 ……。


 ……。



 

 出来なかった……。



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