魔神迷宮6
シャドーたちを倒してから、何事もなく順調に進む。
おそらくシャドーの縄張りを出るまでは敵は出てこないのだろう。
僕はユニコーンティノから降り、ティノにはミモザとリリアンを乗せた。
やはり魔法使いは体力がないからね。
「じゃあこっちに乗るにゃ」
ミオが集中する。
「契約により出るにゃ。“フェリル”」
なんとミオの前に魔法陣が開き、そこから巨大な狼が現れた。
フェンリルだ。そういえば魔王城でミオはフェンリルに話しかけていた。
あれはこういう事だったのか。
「お呼びですか我が主よ」
「ミオとユウをしばらく乗せるにゃ」
「承知」
僕はミオに促され、フェリルの背に乗る。するとミオがまた猫の姿に戻り、僕の背中の袋の上に陣取ると肩に手を乗せた。
他のチームはどうやらペースを落としてきているようだ。
僕らは斥候のように先に進む。
あと城まで三キロぐらいだろうか。
敵に囲まれた。
黒い犬の体に頭が三つ。
ケルベロスだ。ケルベロス二十体ぐらいだろうか。円形に包囲し、じりじりと包囲を縮めてくる。
一番後ろにひときわ体の大きなケルベロスがいる。あれがボスか。
僕はまず“リンク”で仲間に知らせる。
『第一チームユウ、敵に遭遇した。ケルベロス約二十だ。他のチームも注意されたし』
すぐに返事がある。
『『『『『了解』』』』』
よし。まずは魔法だ。魔法の先手で出来るだけ削りたい。
マリーナが“エターナルフレア”、
セルフィは“ブリザード”、
ティノは魔力で強化した“ライトニング”、
リリアンがウォーターカッター、
僕が“アブソリュート・ゼロ”
一斉に唱えられた魔法がケルベロス相手に炸裂する!
戦場を魔法の嵐が吹き荒れる!
魔法がおさまった後に生き残ったのは、わずかに六匹とボスだけだった。
その生き残りにカズマが“剣戟両断”で、マーガレットが弓で、戦士たちは“彗星斬り”でトドメを刺していく。
そうか。
このメンバーの戦士は全員が飛ぶ斬撃を使えるんだった。
さっきみたいに見えない敵でもない限り、遠方から攻撃してしまえばかなり被害を少なくできるな。
後はボスだけだ。
それにはミオが、
「すぐ済むから一対一でやらせてもらえにゃいか」
と言ったので任せることにする。
ミオはケルベロス相手にオリハルコンの爪を構える。
ミオの体が橙のオーラに包まれる。
ケルベロスは自分に向かってきたミオに、歯をむき出して威嚇をする。
その体から薄い青色のオーラが立ち昇る
さすがケルベロスのボスだ。闘気をあやつれるらしい。
しかし僕にはミオが負けるイメージはまったく思い浮かばない。
ミオが動く。
残像を出しながら襲い掛かる。
速い!
ケルベロスの噛みつきを飛んでかわし、そのまま空中を蹴り、死角から攻撃し、残像を残しまた死角に回る!
一瞬たりとも同じ場所に居ない!
ケロべロスはあっという間に切り刻まれ血を流していく。
気が付いたらミオは右の頭の付け根を足で踏みつけ、中央と左の首根っこを右手と左手で後ろから抑え込んでいた。
何かをケルベロスに言っている。
ケルベロスはしばらく身をねじったり唸ったりしていたが、ミオにはかなわないと悟ったのだろう。
体から力を抜き、お腹を見せた。
これで決着だね。
僕らは武器をしまう。
さらにミオが何かを言うと、ケルベロスはとぼとぼと去って行った。
ミオが、
「これでいまのやつもいつでも呼び出せるにゃ」
と得意げだ。
そうか。ミオはケルベロスのボスと主従契約を交わしたんだ。
フェンリルのフェリルが当然だ、みたいな顔をしてミオの顔をベロンと舐めた。
よし、ここまでは順調だ。
もう城は目と鼻の先だ。気を引き締めていこう。
次回、ボス戦!