魔神迷宮
シメオン王が口を開く。
「レッドドラゴンだと」
「はい、上空を三体! 旋回しております!」
僕が慌てて言う。
「知り合いかもしれません! 行ってきますのでお待ちください!」
シメオン王は、
「お、おう」
と短く返事をした。
僕は慌てて外に出て上を見る。
確かにレッドドラゴンだ。
三体旋回している。
僕は重力魔法を使い飛び上がる。
上空へと飛びながら“心話”で話しかける。
『ラフェ!!どうした!』
返事があった。
『オルター。良かった。魔神族が出現したのを感知したから盟約に従い助っ人に来たのよ。降りようとしたら攻撃されたので様子を見てたところよ』
『待っててくれ、北と東の見張り台に話をつけてくる。そこに降りてくれ、ラフェは人間になって』
『わかったわ』
僕は北と東の見張塔に飛んで、味方だから兵士たちに攻撃しないように伝える。
それをラフェに伝え、人間になったラフェと一緒に王宮の中庭に降りる。
レッドドラゴンは北と東の見張塔の上に一体ずつ降り立つと、中央を向いて動きを止めた。
中庭には先ほど会議室にいた全員が外に出ていた。
僕らはその前に降り立つと、ラフェが剣を鞘ごと地面に突き刺し、そこに両手を乗せる。
真紅の髪と赤いマントがひるがえる。
「我はレッドドラゴン“勇猛”のラフェ! 古の盟約に従い魔神族を滅ぼすために助っ人に来た!」
***
僕達はラフェを加え、会議室に戻った。
「そうか。竜種とそのような盟約があったとは。知らなくて済まぬな」
「問題ない。人の一生は短い。竜とは悠久の時を生きるもの。我々が覚えていれば盟約は有効だ」
「ありがたい」
「それで、どうなってる? 魔神族は」
「魔神族はオルター殿が倒してくれた」
ラフェはちらりと僕の方を見た。
「そうか。それはおそらく斥候だな。倒したならしばらく大丈夫だろう。どうも中からテレポートが出来る個体が斥候で飛んできたようだ。長距離を飛べる個体は少ないのだろう。地上へ届かぬ場合は、地中で死ぬことになるのだから」
ラフェは続ける。
「それで王よ。魔力を込めた翡翠玉はどのくらい出来ている? それすら失伝してしまっているか?」
それには神官長が答えた。
「それならば! 元日の儀式として毎年作っております。出来た翡翠玉は翡翠殿に貯めております」
ラフェは頷くと、
「それは迷宮の脱出に使うからな。あればあるだけ良い」
「迷宮の脱出と言うと?」
「迷宮の中で砕けば一瞬で地上に出てこれる。デーモンには使えぬ魔法の玉だ」
「翡翠の玉にそんな効果が……」
宮廷魔術師の白髪の老人が言う。
「ラフェ殿、迷宮の中で使うというたか。迷宮に乗り込むということか?」
「そうだ。今なら魔神ウルヌスもまだ準備できてないだろう」
王が訊く。
「魔神ウルヌス。それが敵の名か」
ラフェは頷く。
「魔神八王が一人、魔神ウルヌス。八階層からなる迷宮を統べる魔神の王だ」