聖王国シーサ魔法学園 12
僕は空に浮かびながら、ちらりと下を見る。
皆我先にと出入り口に殺到している。全員がここを離れるにはまだしばらく時間がかかりそうだ。
と、グレーターデーモンに向かい炎の玉が四つ、ぶつかって爆発した。
バーニングエクスプロージョンか!
飛んできた方向を見ると、白いひげにとんがり帽子、節くれだった杖を構えたアムルゼン校長が息を切らせながら観客席の中ほどに居た。
グレーターデーモンに視線を戻すと、あまりダメージを受けていない。
その目は校長ではなく宙を浮かぶ僕の方を見ている。
ん? 何やら左手に抱えている。よく見ると男子生徒だ。気絶しているのか意識はないようだ。
そいつは僕に語り掛けてきた。
「オマエハ何者ダ。人間ナノカ」
「ああ。僕の名はユウ・オールドリバー。人間だ。そしてお前を滅ぼすものだ」
風が強い。
風が僕の髪を、服をはためかせる。
「ソウカ。ナラバオ前モ喰ラッテ、ワガ糧ニスルトシヨウ」
グレーターデーモンの右手のひらに真紅の光弾が生成されていく。
だが、僕もただ会話をしていただけではない。
呪文はもう唱え終わっている。
竜の牙をグレーターデーモンに向け、放つ。
――――超級魔法“ライトニングスパーク”
さらに膨大な魔力で圧縮し、糸のように細い雷が光速で左肩を射抜く。そして肩口で雷が爆ぜ、左肩を吹き飛ばした。
投げ出された男子生徒に重力魔法で体重を下げ、ダメージなく着地できるようにする。
その瞬間、グレーターデーモンが真紅の光弾を僕に向けて発射した。
だが僕はそのまま次の技を放つ!
“流星彗星剣”!!
二つの技を掛け合わせた僕の攻撃は、真紅の光弾どころか、グレーターデーモンにも届き、その体を蜂の巣にしていく!
真紅の光弾は消し飛び、グレーターデーモンは体中から黒い体液を撒き散らしよろけると、そのまま照明の上から落下し轟音と共に地面に衝突した。
わっと歓声が沸く。
試合場の出入り口を見ると、皆僕の方を見ていた。
残っている生徒たちのほぼ全員が結界魔法で自分の身を守っている。
まあ僕が負けたら次は自分の番かもしれないのだから、敵の事を知るのは悪いことじゃないかもしれないけどね……。
僕はそのままグレーターデーモンの眼前へ降り立つ。
左手に抱えられていた男子生徒は、アムルゼン校長が確保していてくれたようだ。少し離れた場所に寝かされている。
僕はグレーターデーモンに向け、
「こちらからも問おう。お前は何者だ。何の目的があって生徒たちを襲った」
意外なことにグレーターデーモンから返答があった。
「スベテハ我ラガ王ノ為。時ガ来タノダヨ。人間タチノ時代ハマモナク終ワル。ソシテ魔神族ノ時代ガハジマルノダ」
それだけ言うと盛大に黒い血を吐き、
「我ラガ王二栄光アレ!」
魔力が膨れ上がり、傷口から光が漏れ出してくる。
自爆でもするつもりか!? あわてて結界魔法をドーム型に自分に掛ける。
それに魔力を上乗せし、より強固なものにしていく。
その瞬間、グレーターデーモンと言われた敵は爆発した。
一瞬の閃光に目を瞑り、目を開けると目の前には小さなクレーターが出来ていた。