聖王国シーサ魔法学園 11
遅くなりました、30日の分の更新になります。
僕は“リンク”で声を上げた。
『皆大丈夫か!』
『何とか平気です!』
『…大丈夫』
『問題ありません、一撃で落とされない限り回復します』
いつ回復を唱えたかわからなかったが、マーガレットとリリアンの人形の傷がなくなっている。
『この調子で油断せず行こう』
『『『はい!』』』
アリーアは魔法で結界の魔法を自分を中心にドーム型の結界を作り出した。
カズマは鬼気迫る表情で僕に向けて斬撃を繰り出す。
しかし剣戟結界を発動した僕には、その程度の斬撃は効かない。
すべて左手だけで防いでしまっている。
さあ、何で止めを刺そうか、と思った時だった。
僕の“気配察知”が強大な気配が近づいて来るのを捉えた。
なんだこれは!
魔王並みに気配が膨れ上がって、猛烈な勢いでこちらに向けて移動してくる。
気配は三つ! 一番大きい気配は、強大な悪意を撒き散らしながらこちらへ近づいて来る。
僕は雄叫びを併用し大声を上げる!
「試合は中止だっ!!! みんな逃げろっ!!!!」
僕はカズマを本気で蹴り飛ばす! こんな事をしてる場合ではない!
カズマは台の上から吹き飛び観客席の壁に叩きつけられ、動きを止める。
「リリアン、アリーアの拘束を解け! 急げ!」
「は、はい」
ダメだもう時間がない、来る!
山なりに赤黒い何かが飛んできた。
人か!?
それは闘技場を覆う結界にぶち当たり、結界を一瞬で破壊し、僕の後方に落ち、何回も回転して勢いを殺し、闘技場の端で止まった。
僕はその、立ち上がろうとしてる人物に走り寄る。
それは体中から血を流し、しかし目を爛々とさせ、それでも何とか立ち上がろうとするミオだった。
僕は大声を上げる。
「ミオ!」
僕は走りながら超級の回復魔法を唱える。
「あいつは、あいつだけは許せにゃい! ミオの、ミオの大事な子供たちをっ!」
「落ち着けミオ、僕が分かるか!?」
そこで初めて気が付いたのか、僕を見て驚いた顔をした。
「ユーにゃ」
「ミモザ、回復魔法の引継ぎを頼む!」
「分かりました!」
ミモザが駆け寄ってくる。
「ミオをこんなにもした相手がいるんだな?」
ミオは頷く。
「じーちゃんが頑張ってるにゃ、助けてあげてにゃ」
僕は気配を探っていや、探る必要がなかった。
そいつは魔法の明かりを灯した照明の上に立っていた。
人間の三倍はある黒い巨体に巨大な黒い羽。赤い目に頭にはヤギのツノ。
誰かが声を出した。
「グレーターデーモン……」
そいつは観客で埋まった闘技場をぐるりと見まわし、にやりと笑った。
そして巨大な雄叫びを上げた。
「ぐおおおおおおおおおおおお」
いけない、雄叫びだ! おそらくここにいるほぼ全員が動きを止められた!
だがそれは僕がいない時の場合だ!
「大丈夫! うおおおおおおおおおお!」
僕は雄叫びを上げる。
敵を動けなくする雄叫びではない。仲間を鼓舞する雄叫びだ。
僕の雄叫びでみんなの拘束を解きながら、重力魔法で飛び上がり、グレーターデーモンと呼ばれたその黒い敵と同じ高さまで上り相対する。
そしてそいつに向かって言い放つ。
「お前だけは許さない。僕の大事な者を傷つけた報いをその身で受けろ!」
僕の体から強大な魔力と闘気が噴きあがった。