聖王国シーサ魔法学園 6
どっと観客たちが沸く。
口笛、歓声で会場が埋め尽くされる。
「なんということでしょう! カズマ選手が負けてしまいました! 大番狂わせです!」
試合場の端で見ていたアリーア達が近寄ってきた。
「あな……」
しかしそれを遮って、僕の肩を掴む者がいた。
カズマだ。
「お前、なぜ爺様の技が使える! 俺ですらまだ使えな……いや、それはどうでもいい。どこかで会ったのか!?」
しょうがない。教えてやるか。
「ああ。会った。スカイドラゴンに負けて門番をしてたよ」
「ス、スカイドラゴンだって……」
カズマは絶句した。
「あれ? 爺様と戦ったのか? ここにいるという事は……。お前は……いや、あなたはもしや……」
あ。バレたっぽい。
余計なこと言っちゃったか。
僕は人差し指を口に持っていき、しーっと声を出す。
カズマは目を見開いていたが、慌てて頷く。
脳筋かと思っていたが、意外と頭は回るらしい。
「今のですら本気ではなかったということか……」
見ていて可哀そうなぐらい落ち込んでいる。
まあ、上には上がいるってことだね。
「話は終わったかしら」
アリーアが話しかけてきた。正直、あまり話したい相手じゃないのに。
関わりたくもないし。
自然、態度が冷たいものになる。
「何でしょうか」
「単刀直入に言うわ。あなた、私のチームに入りなさい」
ほらきた。
「申し訳ありませんが、チームはもう決まっております」
ちょうどそこで試合場から観客席につながる階段から、マーガレットとリリアンがこっちに来るのが見えた。
「あなた、すぐに私たちと組まなかったことを後悔することになるわよ」
マーガレットとリリアンがこちらに駆けてくる。
「ユウ! やったわね!」
マーガレットが抱きついてきた。少し遅れてリリアンも。
「僕はこの人達と組みますから」
マーガレットは話の流れを察したのか、
「そうよ、ユウ君は私たちと組むんだから」
アリーアは腕を組んで上から見下すように、
「ふん、後から組んでくださいと言っても遅いわよ」
そう言って踵をかえそうとしたところを、意外にもカズマが止めた。
「アリーア嬢、では私が組みましょう」
なんだって!? アリーアも意外だったのか、まじまじとカズマを見る。
「今まで誰とも組まなかったあなたにしては珍しいわね。どういう心境の変化かしら」
カズマは、
「あんたと一緒に居ればユウとまたやる機会が増えそうな気がしてね」
なるほど。
「……わかったわ。次からお願いするわ」
今度こそ、アリーアは踵をかえし去っていった。
「という事でこれからもよろしくな」
手を出してきたので僕もカズマの手を握る。
「お手柔らかに」
「それはどっちかと言うとオレのセリフだがね」
カズマは苦笑いした。
「まあこれで君たちにちょっかい出すことも少なくなると思うよ」
おお、そこまで考えてくれたのか。
実はいいやつだったか。