聖王国シーサ魔法学園 3
本日二回目の更新です。
思ったより筆が進んでしまったので追加します。
「はーい、次の試合はなんと! 大剣の使い手、中等部三年のガジル選手! いつもながら悠然と入場です! そして対するは本日入学! 期待のルーキー、ユウ選手です!」
解説付きなのかよ! 試合場はコロシアムの様な観客席がぐるりと試合場を取り囲んでいる場所だった。まばらに観客がいる。
「あ、情報入りました。この試合なんと、ユウ選手が負けたらアリーア様の下僕になるのだそうです! さすがアリーア様、新入生にも容赦がない!」
アリーアと言うお嬢様はどうやら有名らしい。
「不肖私が鑑定させていただきますね。ガジル選手はいつもの大剣ですね。切れ味に特化した魔法がかけられてます。ユウ選手の方は……。牙ですよね、それを加工したものですね。何の魔法がかけられているんでしょうか」
しばらく無言になった。
「こっこれは。私の鑑定スキルでは鑑定できません! 目の前が組み込まれている魔法陣で埋まってしまいました。最低でも十五…いや、おそらく二十個の魔法が付与されております! こんなの見たことありません!」
鑑定スキル持ってるものがいるのか。装備してるのが古竜の牙だけでよかったよ。ヒヒイロカネのトンカチなんか出した日には何言われるかわからないから。
「おいお前、俺の真似をしろ。身代わり人形を作るんだよ」
僕は眉をしかめる。
すると僕が見ている前でガジルと呼ばれた男は、中央の壁際にある土で人形を作って自分の髪の毛を一本中に埋め込む。そこにある台の引き出しの中の魔法陣が掛かれた用紙を取り出すと、台に置き、人形をその上に置き、魔力を掛ける。人形が淡い青色に光りだした。
「これは何の儀式ですか」
僕も真似して人形を作り、魔法陣の上に置き魔力を流す。人形は青く光りだした。
「これは試合してる選手のダメージを、肩代わりしてくれる人形だ。これがある限り死ぬことはない。死にそうなダメージを喰らったら赤になり、食らったら死ぬダメージを受けたらこなごなに砕け散る。砕けたら負けだ。」
なるほど。全力でやっても大丈夫という事か。やらないけど。
「わかったら中央の試合線に移動だ」
僕らは中央の試合線まで移動する。
「試合線が三つあるだろ。どこからでもいい。魔法使いのような遠距離が得意なら一番外側の線から始められる」
なるほどね。僕は頷くと、ガジルは一番内側の線の上に立った。
僕も一番内側の線に立つ。ここからだとお互い一歩踏み出せば剣の間合いに入るだろう。
「ほう。一番前に立つか。その度胸は褒めてやる。入学初日からアリーア様の下僕になるなんて運が悪かったな。まあアリーア様が中等部卒業までだから二年我慢すればいい」
「僕は誰の下僕にもならない。悪いけど」
ガジルは上段に構えた。かすかに青色のオーラに覆われている。どうやら闘気を少しは使えるらしい。
僕は自然体になると、古竜の牙に闘気を込める。古竜の牙が薄い青色の闘気を放つ。
「ではカウント始めさせてもらいます! スリー、ツー、ワン、ファイ!」
一瞬。
ガジルの剣が中ほどから吹き飛んだ。
折れた剣が観客の方に飛び、見えない壁に当たり地面に落ちる。
僕の刀はガジルの首元にピタリと止められている。
「ええと、身代わりが砕け散るまで攻撃したほうがいいのかな?」
ガジルは信じられない!という顔で半分になった自分の剣を見ている。
それから呆然と言う。
「いや、降参する。降参は認められている」
よかった。これ以上はいじめになってしまう。
ガジルは武器を手放し両手を上げた。
わっと会場がわいた。大歓声だ。
僕は首をすくめると選手控室まで戻る。
これで先輩もやめずにすんだし、めでたしめでたし、かな?
控室から出ると、僕を待っていたのは見知らぬ美少女二人だった。
僕の事を見ると、駆け寄ってきて言った。
「お願いします! 私たちとチームを組んでください!!」