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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第一章
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カンザンにて4


 その後、様々な細かい説明を受けたのち、オーレンに連れられて、問題なく三人ともギルドカードをもらえた。

 大きさは名刺程で、材質はなんだこれ、アダマントかな。いや六割アダマントで、四割別の金属の合金だ。

 複雑な魔法陣を組み入れてある。


「自分の名前を言って血を一滴たらしてください。」


 それで契約完了になるらしい。


 僕は小指を噛んで血を一滴たらす。と、カードに血が吸い込まれ、メタルの光沢だった表面が灰色になり、名前とステータス? が表示された。


 一回表示されれば、自動的に大気中のから魔力を維持するので、半永久的に使えるそうだ。すごい。

 ティーリンは僕と同じで指を噛んで、ティノもそれを真似してギルドカードに血を一滴たらして、カードをアクティブにする。


 それを一旦お姉さんに渡す。


 渡されたお姉さんはギルドカードをチェック……二度見された。


 ああ、ドワーフの秘術で上げた魔力かな、たぶんそれだ。 


 ぱっとオーレンのほうを見ると、オーレンが問題ないと頷く。


 次いでティーリンとティノのステータスをチェックし……またも二度見された。


 ハイエルフとユニコーンだし、まあ二度見するか。


 これで今日やることは全部終わったかな。


 なぜかぎこちない動きで差し出されたカードを受け取りつつ、


「ではこれで失礼します」


 頭を少し下げる。


 たとえギルドマスターより強くても図に乗らない。


 実るほど頭を垂れる稲穂かな、だ。


「おう、また来いよ。いろいろ融通してやるからよ」


 ……ほかに人がいるところで言うなよ。


 ほんとは聞かれちゃいけないやつだろ今の、まったく。

 

 今日は疲れたなぁ。

 

 十二歳の体には酷だったようだ。すっごい眠い。

 

 僕らは宿に帰って、三人でベットに入る。


 僕は十二歳だし、ティノは幼女だし、三人で寝てもぎりぎり大丈夫だ。


 ティーリンも細いしね。


「おやすみなさい主様」


 ベットに入ると、ティノはすぐにすぅすぅと寝息を立てて眠ってしまった。


 僕も横になった


 姉、勇者アンフィのことを考える。


 強くて優しい僕の姉さま。


 旅に出る日までずっと一緒だった姉さま。


 僕が悪いことをしたら厳しく叱ってくれる姉さま。


 あの狭い馬車の中で僕をかばって、盗賊と、助けに来たグリム師匠を敵と間違え、僕を背に、震えながら短剣を構えた姉さま。


 一人逃げ帰った魔法使いによると、氷漬けにされてしまったって。


 魔王は許せない。


 絶対に許せない。


 姉さま…僕が絶対に助け出します。


 考え込んでいたら怒りが魔王から自分に向かってゆく。


 本来僕が姉さまのそばに居れば魔王にも勝てたはずだと。


 なんだ、僕のせいじゃないか。


 くやしくて涙が出てくる。


 姉さま、僕も強くなりました。頼もしい仲間もいます。


 待っててください……


 と、背中に何かが当たったと思ったら、よしよしと、頭をなでられる。


 泣いてたのがティーリンにバレたらしい。


「絶対一緒にアンフィを助けようね」


 その声に我慢できなくなって大声で泣いてしまった。


 外見は十二歳だけど、中身は十七歳なのに。


 結局ティーリンは、僕が泣き疲れて寝てしまうまでずっとやさしく頭を撫でてくれた。



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