カンザンにて4
その後、様々な細かい説明を受けたのち、オーレンに連れられて、問題なく三人ともギルドカードをもらえた。
大きさは名刺程で、材質はなんだこれ、アダマントかな。いや六割アダマントで、四割別の金属の合金だ。
複雑な魔法陣を組み入れてある。
「自分の名前を言って血を一滴たらしてください。」
それで契約完了になるらしい。
僕は小指を噛んで血を一滴たらす。と、カードに血が吸い込まれ、メタルの光沢だった表面が灰色になり、名前とステータス? が表示された。
一回表示されれば、自動的に大気中のから魔力を維持するので、半永久的に使えるそうだ。すごい。
ティーリンは僕と同じで指を噛んで、ティノもそれを真似してギルドカードに血を一滴たらして、カードをアクティブにする。
それを一旦お姉さんに渡す。
渡されたお姉さんはギルドカードをチェック……二度見された。
ああ、ドワーフの秘術で上げた魔力かな、たぶんそれだ。
ぱっとオーレンのほうを見ると、オーレンが問題ないと頷く。
次いでティーリンとティノのステータスをチェックし……またも二度見された。
ハイエルフとユニコーンだし、まあ二度見するか。
これで今日やることは全部終わったかな。
なぜかぎこちない動きで差し出されたカードを受け取りつつ、
「ではこれで失礼します」
頭を少し下げる。
たとえギルドマスターより強くても図に乗らない。
実るほど頭を垂れる稲穂かな、だ。
「おう、また来いよ。いろいろ融通してやるからよ」
……ほかに人がいるところで言うなよ。
ほんとは聞かれちゃいけないやつだろ今の、まったく。
今日は疲れたなぁ。
十二歳の体には酷だったようだ。すっごい眠い。
僕らは宿に帰って、三人でベットに入る。
僕は十二歳だし、ティノは幼女だし、三人で寝てもぎりぎり大丈夫だ。
ティーリンも細いしね。
「おやすみなさい主様」
ベットに入ると、ティノはすぐにすぅすぅと寝息を立てて眠ってしまった。
僕も横になった
姉、勇者アンフィのことを考える。
強くて優しい僕の姉さま。
旅に出る日までずっと一緒だった姉さま。
僕が悪いことをしたら厳しく叱ってくれる姉さま。
あの狭い馬車の中で僕をかばって、盗賊と、助けに来たグリム師匠を敵と間違え、僕を背に、震えながら短剣を構えた姉さま。
一人逃げ帰った魔法使いによると、氷漬けにされてしまったって。
魔王は許せない。
絶対に許せない。
姉さま…僕が絶対に助け出します。
考え込んでいたら怒りが魔王から自分に向かってゆく。
本来僕が姉さまのそばに居れば魔王にも勝てたはずだと。
なんだ、僕のせいじゃないか。
くやしくて涙が出てくる。
姉さま、僕も強くなりました。頼もしい仲間もいます。
待っててください……
と、背中に何かが当たったと思ったら、よしよしと、頭をなでられる。
泣いてたのがティーリンにバレたらしい。
「絶対一緒にアンフィを助けようね」
その声に我慢できなくなって大声で泣いてしまった。
外見は十二歳だけど、中身は十七歳なのに。
結局ティーリンは、僕が泣き疲れて寝てしまうまでずっとやさしく頭を撫でてくれた。