白亜の塔 3
僕は三階の扉を開けた。
ここも入った瞬間に部屋の中が明るくなる。
部屋の中央に魔獣がうずくまっていた。
「じゃあ次はミ……」
「私が行きます!」
出ようとしたミオに先んじて、リヨンが躍り出る。
ミオは口をぱくぱくした後、しょんぼりとして後ろに下がった。
僕はミオの頭をよしよしとなでる。
敵はなんだろあれ。ゴツゴツとした巨体のサイ?
そいつはゆっくりと起き上がると、こちらを見た。
「ベヒーモスですね」
アンリが言う。
「かなりの強敵です。一国の軍総出で戦っても勝てるかどうかわからない強さです」
そんなに強いのか。リヨン一人で大丈夫だろうか。
ベヒーモスのツノと前足の爪、肩が灼熱に燃える。
リヨンはベヒーモスと少し距離を取って構え、両手のガントレットを胸の前でガツンガツンと打ち鳴らす。
「さあ、来なさい!」
ベヒーモスはリヨンの二倍はあるその巨体で、リヨンに向けて体当たりをしてきた。
リヨンはなんと、ベヒーモスの体当たりを受け止めてしまった!
「おおー!」
見ているみんなから感嘆の声が上がる。
リヨンの筋肉が盛り上がっていく。
さすがにすべての衝撃を逃すことはできなかったのか、そのままの姿勢で二メートルほど後ろに押される。
リヨンは右手はツノ、左手は右肩を押さえている。
ベヒーモスは前に進もうと地面を蹴るが、がっちり組んだリヨンは微動だにしない。
灼熱に燃えているツノと肩だが、アダマント製のガントレットは熱を遮断する。
リヨンは右手でツノを上から押さえつけながら、左手で頭を殴り始めた!
ベヒーモスはガッチリ角を掴まれているため避けられない!
これはたまらない!
衝撃波を出しながら頭を殴り続けていく。
最初は怒りの声を上げていたベヒーモスも次第に悲鳴に近い声になっていく。
僕はちょっとベヒーモスがかわいそうになってきた……。
トドメとばかり、
“鬼神拳”!!
リヨンの体のオーラが薄い青から赤色のオーラへと変わっていく。
そしてバギンっという音と共にベヒーモスのツノが中ほどから吹き飛んだ!
リヨンはそのままベヒーモスの頭を両手で掴むと、逃れようとする力を利用して、ベヒーモスを仰向けに投げ飛ばした。
ベヒーモスの巨体は宙を舞い、綺麗に仰向けに地面に落ちる。
塔が衝撃で揺れた。
ベヒーモスにとっては投げ飛ばされるなど初体験だろう。
一瞬固まった後、
「ひゅぃ」
と、声を出すと慌てて起き上がる。
そのままフロアの隅まで走り、後ろを向いて小さくなってしまった。
僕らの目が点になる。
「降伏……と考えていいのかな……」
ぼくがぼそりと言った。
リヨンは肩をすくめる。
「じゃ、じゃあ四階に行こうか」
結局ベヒーモスは全員が階段で上に上がるまで、ずっと部屋の隅で震えていた。