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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第七章
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白亜の塔 3


 僕は三階の扉を開けた。


 ここも入った瞬間に部屋の中が明るくなる。


 部屋の中央に魔獣がうずくまっていた。


「じゃあ次はミ……」


「私が行きます!」


 出ようとしたミオに先んじて、リヨンが躍り出る。


 ミオは口をぱくぱくした後、しょんぼりとして後ろに下がった。


 僕はミオの頭をよしよしとなでる。


 敵はなんだろあれ。ゴツゴツとした巨体のサイ?


 そいつはゆっくりと起き上がると、こちらを見た。


「ベヒーモスですね」


 アンリが言う。


「かなりの強敵です。一国の軍総出で戦っても勝てるかどうかわからない強さです」


 そんなに強いのか。リヨン一人で大丈夫だろうか。


 ベヒーモスのツノと前足の爪、肩が灼熱に燃える。

 

 リヨンはベヒーモスと少し距離を取って構え、両手のガントレットを胸の前でガツンガツンと打ち鳴らす。


「さあ、来なさい!」

 

 ベヒーモスはリヨンの二倍はあるその巨体で、リヨンに向けて体当たりをしてきた。


 リヨンはなんと、ベヒーモスの体当たりを受け止めてしまった!


「おおー!」


 見ているみんなから感嘆の声が上がる。


 リヨンの筋肉が盛り上がっていく。


 さすがにすべての衝撃を逃すことはできなかったのか、そのままの姿勢で二メートルほど後ろに押される。


 リヨンは右手はツノ、左手は右肩を押さえている。


 ベヒーモスは前に進もうと地面を蹴るが、がっちり組んだリヨンは微動だにしない。


 灼熱に燃えているツノと肩だが、アダマント製のガントレットは熱を遮断する。


 リヨンは右手でツノを上から押さえつけながら、左手で頭を殴り始めた!


 ベヒーモスはガッチリ角を掴まれているため避けられない!


 これはたまらない! 


 衝撃波を出しながら頭を殴り続けていく。 


 最初は怒りの声を上げていたベヒーモスも次第に悲鳴に近い声になっていく。


 僕はちょっとベヒーモスがかわいそうになってきた……。 


 トドメとばかり、


“鬼神拳”!!(オーガフィスト)


 リヨンの体のオーラが薄い青から赤色のオーラへと変わっていく。


 そしてバギンっという音と共にベヒーモスのツノが中ほどから吹き飛んだ!


 リヨンはそのままベヒーモスの頭を両手で掴むと、逃れようとする力を利用して、ベヒーモスを仰向けに投げ飛ばした。


 ベヒーモスの巨体は宙を舞い、綺麗に仰向けに地面に落ちる。


 塔が衝撃で揺れた。


 ベヒーモスにとっては投げ飛ばされるなど初体験だろう。


 一瞬固まった後、


「ひゅぃ」 


 と、声を出すと慌てて起き上がる。


 そのままフロアの隅まで走り、後ろを向いて小さくなってしまった。


 僕らの目が点になる。


「降伏……と考えていいのかな……」


 ぼくがぼそりと言った。


 リヨンは肩をすくめる。


「じゃ、じゃあ四階に行こうか」


 結局ベヒーモスは全員が階段で上に上がるまで、ずっと部屋の隅で震えていた。



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