勇者オルター
今までで一番短いですが、今までで一番執筆時間がかかってます。
ご容赦を……
聖王国シーサ謁見の間
王座にはシーサ国王シメオン三世。
その脇にはおそらく第一皇女だろうか、ミモザを若干きつくした様な顔だちで、厳しい顔をした女性が立っている。
ミモザに会った時と同じように、王の左手に神官長、皇女の隣は宮廷魔術師の黒いローブの老人が立っていた。
前と違うのは儀仗兵達が赤い絨毯の両脇に立っており、いささか荘厳なことだ。
僕らは赤い絨毯を進み、膝をつき、首を垂れる。
「面をあげよ、勇者たちよ。ミモザはここへ」
僕らは顔を上げる。
「はい」
ミモザは第一皇女の隣に移動する。心なしか緊張しているようだ。
第一皇女は明らかに不機嫌だ。それを隠そうともしていない。
「この度は魔王のみならず、大魔王、そして邪神討伐、誠に見事であった」
王様は興奮しているのか顔が赤い。
どうやらカザリアから情報が来ているようだ。
「特にオルターは勇者の居ない状態で魔王を圧倒し、勇者を救出したと聞く」
あー。
一応そう言うことになるのかな?
「単なる鍛冶師にしておくには惜しい男よ。どうだ。爵位を与えるから我が国に腰を下ろさんか」
ええっ。なにそれすごい。
いやいやいや、どうしよう。
駄目だ。どうすればいいか僕一人ではわからない。
「……すぐには返答いたしかねます」
正直に言おう。
「いいだろう。では皆には褒美を取らせよう」
僕らは一生かかっても使いきれないほどの金貨を報酬でもらった。
***
夜は盛大なパーティだった。
ティノとミオは楽しそうに料理を堪能していた。
僕らは思う存分美味しいものを食べ、踊り、その日はお城で部屋をもらい泊まることになった。
部屋に案内された後。
僕は姉さまと二人で勇者専用の封印された部屋の前に立っていた。
どきどきする。もしも部屋に入れたら僕も勇者と言うことになる。
僕は姉さまを振り返る。姉さまは頷いた。
姉さまも緊張してるみたいだ。
姉さまの見守る中、僕はドアノブへ手を伸ばす。
頭の中に何者かの声が聞こえた。
―――――勇者を確認。扉のロック解除。
僕はドアノブを回すと部屋の中に入った。
僕は封印の部屋に勇者と認定された。