カンザンにて2
宿での食事の後、主人の了承を得て、納屋で鍛冶道具を使わせてもらう。
魔道具の金床を出し調整する。
この金床は上に乗せた物の温度を、使用者が思うさま変えられる魔法の金床だ。
「危ないからちょっと離れててね」
覗き込むように見てた幼女ティノに言うと、コクリと頭を下げおとなしく数歩下がる。
虹色のインゴッド、ヒヒイロカネを出して叩き始める。
叩くこと数分。金床のおかげでかなりの工程を短縮できる。
出来た!
虹色の光沢を放つなんかすごい神々しいトンカチが出来た。
作りは使用したオリハルコンのトンカチと同じだ。
切り株に腰を下ろし、両手を顎にあてて見ていたティーリンが飽きれるように言った。
「いつ見てもあんたたちの鍛冶はすごいわねぇ。手元が見えないもん」
渡された虹色のトンカチを受け取る。
「それで、何つければいいの? これ、元々が魔力持ってるから、あんたの魔力と合わせてとんでもない魔力になってるわよ」
僕はちょっと考える。
「これそのものを魔法の発動体に出来ないかな?」
一般的な魔法の発動体はスティックか杖だ。
変わったところで短剣や剣などがある。それらは主に魔法戦士等に使われるが、威力があまり出ない。
魔力の伝導率は金属より木の方が高いようだ。
ただ、ミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネ等伝説の鉱石はその限りではない。
発動体は無くても魔法は使えるが、かなり威力は低くなる。
この世界の魔法の発動体は、魔法の威力を劇的に増やす効果がある。
「あーなるほどね。それはいい考えね。地水火風空でいいの? 」
「いや、光闇も入れて。ちょっと考えてることがあるんだ」
光魔法は勇者しか使えない。
闇魔法、暗黒魔法は魔族が良く使う魔法で、普通の人間には使えない。
「わかったわ」
ティーリンが手をかざし集中すると、ヴワン!とトンカチを囲むように魔法陣が広がる。
ティーリンは六芒星の頂にチェックを入れて、魔法の発動条件を指定していく。
それから順番に精霊を呼び、その力を借り属性の力をこめ、定着させていく。
ちなみにこの技術は「模倣」できない。僕には精霊との契約が出来ないからだ。
精霊との契約ができるのはエルフと獣人の上位種の一部、人間もエルフの血を引いたものだけだ。
「とんでもない魔力の許容量ね。まだ半分ぐらい使えるわ」
「さすが伝説の金属。うーんどうしよう。なにかおススメある? 」
「そうねえ。持ち主契約とかどう? これだけ魔力があれば付けられるわ」
「あ、それいいね。盗難も怖いしね」
「じゃあ決まり! それでも少し余ると思うけど、今全部つけなきゃいけないってわけじゃないからね」
ティーリンは設定の終わった魔法陣を発動させる。
まばゆい光が視界を埋めてゆく。
魔法陣が縮んでトンカチに吸い込まれると光が収まった。
そのトンカチを受け取ると、左手の小指を噛んで、血を一滴トンカチに垂らす。
その血はすうっとトンカチに吸収された。
これで持ち主の契約終了だ。
これからはいつでも僕の意志で手元まで飛んでくる。
「じゃ、次は私の武器ね! 」
「うん。何がいい? 」
「えっとね、オリハルコンのレイピア! 出来る? 」
「大丈夫」
僕は答えると袋からオリハルコンのインゴットを二個取り出す。
ティーリンはわくわくした笑顔だ。
せっかくだから新しく作ったトンカチで叩いてみる。
おお、具合がいい。オリハルコンよりかなり優秀なトンカチだ。
出来た!
我ながらいい出来だ。
「ありがとう!」
満面の笑みだ。いつもそうやって笑ってればかわいいのに。
まあオリハルコンの武器など、国宝級なのだからそりゃ笑顔にもなるだろうけどさ。
「あ、これかなり魔力高いわ。さすが伝説の金属のトンカチね」
すぐにレイピアを中心に魔法陣が発動し魔力を設定し始める。
僕はその間に細いダークブラウンの木材を袋から出し鞘を掘る。
ノミで木材を削っていく。
削り終わった鞘を接着し皮を巻きギュっと締め、金具を付ける。
魔力付与し終わったティーリンに出来たての鞘を渡しながら聞いてみる。
「どんな剣にしたの? 」
ティーリンはにこにことしながら答えた。
「ひみつ」
教えてくれなかった。
オルター持ち物
月灯の小刀ショートソード
ミスリルのトンカチ
オリハルコンのトンカチ
ヒヒイロカネのトンカチ
ミスリルの鎖帷子(自動サイズ調整機能付き)
アダマントのフルプレートメイル(自動サイズ調整機能付き)
ドラゴンの皮から作り出したマント(自動サイズ調整機能付き)
魔法で通常の3倍入る南京袋(重さが総重量の1%になる機能付き)
鍛冶道具
ヒヒイロカネのインゴット×3→2
オリハルコンのインゴット×7→5
アダマントのインゴット×7
ミスリルのインゴット×7
金ゴールドのインゴット×7
なめした皮
ダークグレーの木材
魔道具の金床