表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

どんなもんじゃ

作者: ケケロ脱走兵

 同僚で飲み友達の吉田は関西出身の28歳、俺より2コ上で俺と


同じでまだ独身だ。


「大阪はもう終わったからね」


そう言って3年前に東京にやって来た。仕事は主に賃貸マンション


を扱う中小の不動産会社で、彼は関西人特有の人当たりの良さから


顧客の信頼を得て、上司にも気に入られていた。大体、月一のペー


スで彼からメールがきて、「ええ店見つけた」と言っては気兼ねの要ら


ない俺を誘った。それは、ただ飲み食いするだけの店に留まらず、店


のハシゴをするうちにイカガワしい階段を下ったり上ったりすることも


あった。


 ある日、腹ごしらえの居酒屋を皮切りに四五件の店を渡り歩いて、


最後には酒樽のように転がるほど酩酊しながら、


「東京にはうまいもんがない」


と、彼が言った。


「中でも許せんのが、あのもんじゃ焼きや」


「まずかった?」


「いや、まだ食うたことない」


「何、食ったことないの?」


「大阪のお好み焼きならまだしも、もんじゃ焼きなんか食う気もせ


ん」


そこまで言われて東京生まれの俺も黙ってられなかった。すでに樽


の中には満々の酒が注ぎ込まれていたが、


「食ったこともないのに言うな。よし、それじゃあ今からもんじゃ


焼きを食いに行こう」


と、俺が誘うと、


「おお、東京で一番うまい店に連れて行け」


ということになって、タクシーを拾って月島へ向かった。


 店に入って向かい合って腰を下ろした頃には二人とも意識が怪し


かった。店員が鉄板に火を点け、たぶん俺が注文をしたのだろう、


彼はというと腕組みをしながら頭を垂れ考え込むようにしていびき


を掻いていた。俺はもんじゃを待っている間、仕方なくひとりでビ


ールを(あお)った。すると、突然気分が悪くなってきて、あろうこ


とか、前にある鉄板の上にそれまでに食ったものをゲロってしまっ


た。慌てて便所へ駆け込んで便器に向かって嘔吐(えず)き声を上


げた。すっかり吐き出すとスッキリして酔いも醒めた。早速、鉄板


の上の吐瀉物を吉田が寝ている隙に店員に片付けさせなければ


と思って急いで席に戻ると、何と!いつの間にか目を覚ました吉田


が、酩酊しながら小さなコテを使ってそれを食っていた。そして、


「こうやって食うんやろ。しかし、こんな酸っぱいんか、もんじゃ焼きって」


俺は店員が注文したもんじゃを持って来る前に、彼を引きずり出す


ようにして店を出た。


 それ以来、俺は、彼に本当のことを言えずに、顔を合わせるのも


辛くて、彼からの誘いを断り続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ