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大南海④

1533年(天文2年) 4月~6月 琉球王国 那覇。


綾小路 興俊 16歳


第二尚氏第四代国王の尚清王さまへ拝謁しようと首里城に参ろうとしたのですが、、、どうやら琉球王国で内訌が始まったようです。

火元は私では無いですが火付けは私のようです。

元々の原因は琉球王国の政教一致政策です。

琉球王と言う政治の舵取りが居るにも拘わらず、聞得大君と言う宗教の最高指導者が神託と言う方法で政治に関与する所に問題が有りました。

第二王朝の初代王である尚円が無くなった時、嫡子が幼かった為尚円の弟が尚宣威王として王位に付きました。

しかし、尚円の妃、宇喜也嘉おぎやかは巫女の最高位に聞得大君を創設して神託を操り尚宣威王を僅か半年で廃位に追い込みました。

そして越来城に隠遁させ間も無く王は急逝しました。

そして我が子を尚真王として即位させるのですが息子の尚真王は尚宣威王の娘を妃とし長男の朝満が生まれます。

これが気に入らない宇喜也嘉は自分の孫にも拘わらず朝満を廃嫡しました。

それでも朝満は琉球の貴族の支持を得て再度王太子となるのですが、尚真王の側室華后の策略により再度廃嫡され浦添城に追放されます。

そして尚真王の死によって第四代琉球王の地位に着いたのが私が拝謁しようといていた尚清王さまです。

それが6年前の事です。

そして今回、私が琉球王国へ来訪し今帰仁に入港しました。

それもそれなりの船団を率いて、、、

そして首里への訪問を許可されたにも拘らず私は今帰仁に停泊したまま動きません。

不審に思った貴族が今帰仁を探った所、殺害を命じたはずの阿波根実基殿が生きていて私の元に居るでは有りませんか?

これは今帰仁殿が琉球王朝に叛意を持った証拠では無いか?と首里で大騒ぎに。

それに猛烈に反応したのが宇喜也嘉さんです

お年は89歳。

ちょっと待て!!

神託によれば私は悪鬼羅刹の王で打ち滅ばせねばいけない存在だとか。

悪鬼羅刹=悪魔ならあながち間違ってない?

もちろん琉球にとって神託は神の命令です。

首里に辿り着けず那覇の湊で私達は立ち往生してたんですが、そこに那覇のすぐ隣にある浦添城で朝満王子が反乱を起こしたとの噂が。

更に今帰仁さんや越来王子も朝満王子に同調したとの話が聞こえて来て気が付いたら私も反乱軍に参加して首里を包囲してました。

だって今帰仁さん、、、責任取ってくださいねって言うんだもん。

まぁ~直ぐに尚清王さまは降伏されましたけどね。

尚清王さまご自身は兄弟を押しのけてまで王位に就く気はなかったのかも知れませんね。

尚清王さまは退位され浦添城に蟄居となるそうです。

宇喜也嘉おばあちゃんは世俗との一切の関りを断たれて余生を過ごされたそうです。

その後1540年まで生きられ享年96歳の大往生だったとか、、、

王位は朝満王子が就かれ尚維衡王と名乗られるとの事です。

廃位となった尚清王さまは未だ遣明船を出しておらず明から冊封を受けておられませんでした。

その為明の嘉靖帝より尚維衡王さまが冊封を受けられれば、先に冊封を受けた尚真王の長子と言う事で左程問題もなく王統の正統を保証されましょう。

その遣明船に私の船も1枚噛ませて頂けると言う事で、琉球馬を献上する為の馬船など船団の半分くらいを借り上げて貰いました。

その代価として那覇島と首里城に挟まれた中州、久米村にある唐営チャイナタウンを私の自治領として頂くことが出来ました。

那覇ってこの当時は首里城の津に浮かぶ島だったんですね。

知りませんでした。

又阿波根実基殿は正式に私の家臣として唐営の総理唐営司(代官)を務めてもらいます。

その為所領である阿波根地頭職を琉球王国に返上し、総理唐営司実基と呼び名になりました。

最も私も民衆も京総理と呼んでますけどね。

公正で私心無き人柄は代官としては最高の資質でしょう。

彼は代官業務のかたわら無手武術の道場も開いたようです。

暗殺者からの襲撃で武器を持たない護身術に目覚めたんだとか?

沖縄空手って有ったよねと思い出し、その話を京総理殿に話したら唐手からてでは無いからと沖縄手ウチナーディーと名付けたようです。

でもみんなティーと呼んでるみたいですね。

まぁ~ライバルの唐手も居ないのに態々沖縄手なんて言わないよね。

閑話休題、、、

彼が代官となる唐営について説明します。

唐営の住人は明の方々の居留地で琉球王国の航海技術、航海スタッフの提供、外交文書の作成、翻訳などを請け負ってました。

なのでここを手中にすると言う事は綾小路家の海運力が大幅に強化されます。

代りに綾小路家はココに大商館を設置し海運業の総合サービスを琉球王国や商人に提供します。

要は琉球王国が綾小路家に交易特権と技術力の供与を与える代わりに綾小路家も所有する巨大な船団による輸送能力や琉球王国と比べ物にならない大国としての人材、資源の供給能力を琉球王国に提供すると言う事です。

具体的には那覇の湊に立ち寄る船の為に積荷の集荷を請け負ったり、来航船や琉球商人の持ち船と契約を結んで積荷を市場へ運送したりする運送取次や取扱の業務を請け負います。

更に積荷の保管や管理、売買相手の斡旋や仲介、相場情報の収集や提供、琉球王国の船舶に関わる諸税の徴収の代行、船具や各種消耗品の販売なども請け負います。

また、傭船や借船を希望する商人にその斡旋や仲介、交易におけるリスク軽減の為の船株や保険業務も取り扱います。

船株と言うのは船の積載可能量を株として売り出す事です。

船一隻に積み荷を全て預けてしまうとその船が沈んだりすれば破産してしまします。

しかし船株を利用してなるべく多くの船に積み荷を預ければ事故1つで受けるリスクが分散して交易のリスクが下がります。

船株は積み込める権利の量も株価を左右しますが、何より船を動かす船頭や船主の信用度が株価を押し上げます。

船頭の実績や船主が航海中の事故に対してどのくらいの保険金を掛けているかが大きな判断材料になりますからね。

そうして船株や保険業務を一元的に取り扱い正しい情報を逐一公表する事によって信用取引の信用の担保とします。

保険に関しては前世のロイズを踏襲してます。

チョコレートじゃ無いですよ。

保険最大手のロイズです。

積み荷の金額に応じた掛け金を船主があらかじめ支払う事によって海難事故時に決められた補償を受けられる仕組みです。

補償を請け負う保証人は綾小路家の大商館の信用情報を元に判断し船の一航海毎の積み荷に保証人として海難事故時の補償を請け負います。

航海が成功すれば請け負った補償額に応じて保証人が掛け金の分配に預かります。

逆に失敗すれば請け負った補償額を船主に支払います。

当然、詐欺などの不正行為を受けない為に海難事故の捜査など浦仕舞いと呼ばれる事故処理を綾小路家が請け負いその情報を公開します。

信用が低い船主は保証人を集められないので高価な旨みのある積み荷は集められません。

そう言った船の救済策として綾小路家の大商館が信用を付与し仕事を与えたりもします。

例えば綾小路家の雇船や借船として定期航路の物資輸送に携わって貰って実績作りに励んでもらうんですね。

まるでファンタジー世界のギルドですね。

相手は冒険者じゃなくて船乗りですが^^;

イメージがギルドなら酒場も併設でしょう。

その他、相手が船なので食料や水、薪や水主の宿や食事などの世話もします。

クエスト(ギルドの依頼)を順調にこなし持ち船に実力が揃ってくればギルド(大商館)から討伐系の指名依頼が来るかもしれません。

相手は綾小路家と敵対する水軍や倭寇です。

更に仲間が増えて船の数も船団とまで呼ばれるようになれば幾つかのクラン(船団)が合同するようなレイド(海上戦争)に参加できるかもしれません。

と、唐営を手に入れた時に貿易担当の加計さんにお話したら凄く喰いつきが良くて怖かったです。

琉球王国の那覇をその南海経営の拠点として活用していけば琉球王国と仲良く共存できるはずです。

そして琉球王国だけでは賄う事の出来ない人的資源や船の供給地を大坂などの畿内に求めれば、大坂にも大商館を設立できるでしょう。

後は鉄、日本刀の供給地として安芸国の佐東銀山や銀の供給地としての石見国の銀山周辺などを整備したり、水主の供給地として瀬戸内の水軍衆から人的資源を金で吸い上げたりすれば完璧ですね。

唐営の大商館の他にも今帰仁や浦添、勝連、嘉手納、運天などの沖縄本島の良湊や奄美大島や徳之島、宮古島や石垣島を食料や水などの補給基地として利用する許可を頂きました。

これによって北九州勢が対馬を襲っても後方に下がれる基地が出来たので随分戦略に幅が広がります。

しかし備中国の三宅国秀殿の仕儀を見る限り薩摩国の島津氏が綾小路家と琉球王国の結びつきに手を出さない訳が有りません。

その為琉球王国に借船した船団を除く残りの船を率いて薩摩国の坊津を覗いてみる事にしました。

北に向かうに丁度良い季節風が吹き始めた6月、那覇でのバカンスを終え北に進路を取りました。


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