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大南海①

予定では本日もう一話出したいです。

1533年(天文2年)2月 対馬国 府中。


綾小路 興俊 16歳


矢には毒が塗られていたらしく意識が戻っても朦朧として確り事態を把握できたのは2月に入ってからでした。

あれから宗像水軍などの九州方の海賊に追い立てられるように唐津、松浦と西へ逃げその先が無くなったので止む得ず乳母の縁を頼り冷泉下野守興豊殿が差配する対馬国に逃げ込みました。

そこで上意による急襲後の状況が少しだけ判りました。

ハッキリ言って大混乱です。

先ず私が死んだと言うデマが出回っております。

いやまぁ~

「一戦も交えずにあの魔王がスゴスゴと逃げ出したのは流れ矢で死んだから。」

と言う噂の方がお屋形さまと戦いたくないと言う話より信じやすかったらしいです。

止めとばかりに筑前守護代の杉興連殿、お屋形さまの守役で豊前守護代の杉重矩殿、お屋形さまの右筆の相良武任殿が博多にて残党軍(私の事)の追討軍を組織しているそうです。

しかしお屋形さまが上意を命じていないと言う話も出回り、一旦は追討軍に加わろうとした周防守護代の陶興房殿、長門守護代の内藤興盛殿が中立。

綾小路方を鮮明にしているのは石見守護代の吉見隆頼。

安芸は国人の大半が綾小路家を支持してくれてるけど、守護代の弘中隆包殿は中立を宣言しているらしい。

出雲は大火事で塩冶殿は尼子経久殿の降伏を認めた私が気に入らないそうで九州方に付いたそうです。

自然の成り行きで尼子経久殿がこちらに付き戦を始めたとか。

それに巻き込まれる感じで安芸国や備後国の北辺や石見国の東部なども荒れています。

その他にも土佐の一条家が九州方に付いたとかこちらに付いたとか、備前などでも騒乱が起きたとか真偽不明の噂が飛び交っています。

一番良いのは中国地方へ戻り九州方を排除する事なんだろうけど九州方の排除はどんなに言葉を繕ってもお屋形さまの排除に繋がるんだよね。

特に陶殿や内藤殿の所に辿り着いたら私の意志に関係なく私を神輿にお屋形さまを滅ぼすでしょう。

そこで躊躇えば私が殺されるよね。

そう言う所は乱世を生き抜いてきた方々だから甘くない。

でも今の大内家は大きい。

お屋形さまの大内家と私の綾小路家の二つに割った所で天下統一が遅くなるだけで大した問題ではないよね。

そう言う訳で一旦北九州や中国地方を離れて南九州周りで畿内に戻るのも良いかもしれない。

ただ石見銀山は守り切れないにしても日朝、日明、そして東南アジア等との交易路は死守したい。

これを喪うと土地に根っこを張ってない綾小路家は直ぐに立ち枯れてしまうからね。

その為の拠点を作らなければいけない。

対馬は前線基地としては良いけど土地が狭すぎて水軍を養うには小さすぎる。

日明、日朝、東南アジアとの拠点候補としては済州島か琉球王国だよね。

琉球王国は仮想歴史小説なら日本統一後のボーナスゲームとして登場するから私としても目を付けて無かった訳じゃない。

農政を得意とする人間を貿易船に紛れ込ませ知行地の概算は出させています。

それによると琉球王国全体で56,000貫。

北の奄美大島が12,000貫。

沖縄本島が34,000貫。

宮古島が6,000貫。

八重島諸島が4,000貫。

こんな感じらしい。

ハッキリ言って簡単には滅ぼせません。

史実の島津氏みたいなチートなら兎も角私には無理です。

おまけにこの島が欲しいのは交易拠点都市欲しいのです。

琉球王国は明や朝鮮に使節を派遣してるので勝手に滅ぼすと交易が出来なくなります。

それでは本末転倒です。

もう一方の済州島。

立地は明と朝鮮に近すぎますが攻め取りやすい利点が大きいです。

朝鮮の領地ですが流刑地に設定され倭寇の根拠地でもあり満足に治めていません。

明から見る台湾のようなモノです。

朝鮮への通交使を派遣して済州島からの倭寇被害を訴えれば賄賂次第では切り取り免状を頂けるでしょう。

早速博多から一緒に逃れてきた神屋主計さんに使節をお願いします。

今まで何度も通交してるから大丈夫でしょう。

こうやって考えると対馬に逃れてきたのは幸運ですね。

朝鮮は我々日本国の混乱を望んでいません。

国々との通交は明を中心とする冊封国家の中で明の弟分を任じている以上止められない国策です。

しかし兄貴分を吹かせるにはそれだけの資金が要ります。

朝鮮の主要な輸出品は綿布ですが朝鮮では布貨と言って通貨の役目を負っていました。

しかし日本の通交使が欲しがる以上兄貴分としてはやらない訳には済みません。

対馬国を大内氏が征服し通交権を全て握った時私も交易に一枚噛もうとして銀800貫で綿布の買い付けをお願いしました。

しかし銀800貫は即ち銀8万両なんですよね。

銭に直して2万貫。

朝鮮での綿布の物価は銭1貫で綿布22.5匹。

1匹=2反なので、45反ですね。

銀800貫で綿布45万匹即ち90万反買える訳ですよ。

この時期は戦乱による兵衣不足で綿布が高騰してまして日本の物価では銭1貫に付き綿布9.8匹だったんです。

右から左で26,875貫の儲けと思いましたが、、、

90万反も布貨が朝鮮から無くなったら経済が混乱すると言われて神屋さんに一任する契機になりました。

大航海時代のキャプテン綾小路はこうして日の目を見る事無く終わったんです。

閑話休題。

話は変わりますが、寧波の乱で明との修好が一時途絶えました。

しかし1527年(大永7年)に明と幕府との和解が成立しています。

その流れで今回博多に来た用事の一つに遣明船の再開と言うものがありました。

公方さまとお屋形さまからのお使いですね。

その再開の口利きを担ってるのが朝鮮なので多めに賄賂を渡してついでに早期再開をお願いしましょう。

こちらで遣明船を出してお屋形さまには仲直りした後に儲けをお渡しすれば良いでしょう。

たしか寧波の乱が1523年(大永3年)でした。

日本の遣明船は11年に1度の決まりらしいので最速なら来年に派遣できる事になります。

この明と朝鮮、東南アジアのラインが確保できれば五畿内の所領も支えられるでしょう。

石見、安芸方面には神屋寿禎さんを、畿内には神屋加計さんを派遣して私の生存としばらく領地をお任せしますと伝えさせましょう。

取りあえず済州島は主計さんの交渉次第です。

が、その前に対馬に攻めて来そうな九州勢の水軍をどうしましょうか?

日朝貿易の権益は水軍にとって垂涎の的なので攻めてこないと言う選択肢は有りませんよね。

そんな選択肢があるなら私との商売で潤ってたはずの水軍がそもそも上意に協力をしないでしょう。

ただ対馬に逃げてきたは良いけど満足に武器が無いんですよね。

対馬は一時失陥しても取り返せばよいけど船や人は失うと痛い。

やはり逃げられる後方拠点が必要ですよね。

取りあえず松浦党の半分は信じられます。

筆頭は松浦興信殿かな。

逆に私と敵対関係にあるのが松浦親まつうらちかし殿。

1531年(享禄4年)に松浦親殿の叔父に当たる少弐資元殿の奔走により、幕府から松浦興信殿が横領していた今福、有田、相神浦を返還する沙汰が出されようとした時私が邪魔したんですよね。

公方さまに


「松浦興信殿は宗氏討伐の時に私を助けて下さった人なんですよ♪」


って感じで^^;

そもそも少弐殿は敵ですし、ちょっと待った~って感じで邪魔しちゃったんですよね。

そのおかげで本拠の相神浦は返還されたけど、戻って来たのは旧領の3割くらい。

松浦興信殿には大変感謝されたけど松浦親殿からはこの恨み晴らさずに置くべきか?みたいな感じなんです。

松浦興信殿の縁戚である宇久次郎三郎盛定殿も味方になってくれるでしょう。

湊で言うなら九州本島の松浦、平戸、そして五島列島の宇久、奈留、福江、玉之浦は味方。

他は敵か不透明って感じかな。

船を伏せて置くには好都合の立地だけど敵に近すぎるのが難点。

やはり琉球王国を一度見てみよう。

攻めやすそうならそのまま。

少しくらい切り取れそうなら奄美大島くらい欲しいかな。

取りあえず今帰仁の親泊を目指してみようか。

隙が全く無いなら商館設立と言う事で。

ここに残すのは武装が充実した船と冷泉興豊殿だよね。

何と言っても領主だし冷泉水軍の長だしね。


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