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綾小路君の内政。

1530年(享禄3年)9月~年末 周防国 大内館


綾小路 興俊 13歳


大内館へ戻ってそれほど経たぬうちに安芸国の悲田院より報告が届きました。

元就殿に次男が誕生されたとの事。

うん、実にめでたい。

7歳になったら少輔次郎(元春)君もうちで預かりましょう。

しかし自分の通称が少輔次郎だからって、長男を少輔太郎、次男を少輔次郎って名付けるって手を抜き過ぎじゃありませんか?

私に子供が生まれたらもっとカッコ良い名前にしてあげましょう。

戦国無双とか天下一とか、、、

そう言えば備後国の山内家で養育され、先日宍戸家に戻って元服された宍戸隆家ししどたかいえ殿の幼名は海賊であった筈。

やはりこのくらいカッコいい名前じゃないとね。

尼子家が二つに割れた事によって尼子に従っていた備後の国人も大内方に靡き、隆家殿の烏帽子親は私が勤めました。

そしてお屋形さまが偏諱を受けて隆家と名乗られました。

隆家殿の父君元家殿は、私が生まれた永正15年に討ち死にされており、その時元家殿の奥方が実家の山内家に帰されたそうです。

酷い話だ。

ところが帰ってきた奥方は子供を孕んでいた事が後で発覚、生まれた子供は海賊と名付けられ山内家で育てられたそうです。

まぁ~嫁がせた娘が旦那が死んだらポイ捨てとばかりに送り返されたらいい気はしないよね。

海賊と名付けられた隆家殿がどんな幼少生活を送ったか想像が付きます。

不憫ですね。

しかし宍戸家当主元源殿の亡き嫡男元家殿の更に嫡男殿とは言え生まれた時からずっと山内家で養育されてきた少年です。

宍戸家に戻ってきてもあまり居心地が良いとは言えず、叔父の弥四郎(隆忠)殿と折り合いが悪いらしいです。

まぁ~弥四郎殿にしてみれば、彼が帰って来なければ家督は自分のモノだった訳で、、、

当主元源殿は安芸の国人一揆の際でも中立を保った独立不羈のご仁。

その為彼から山内家が養ってる嗣子を取り戻したいと請われれば大内家としても恩を売るチャンスとばかりに動かざる得ない訳で、丁度山内家も尼子の内訌で大内に鞍替えしたしタイムリーだったんだよね。

でも、弥四郎殿の不満が爆発すると折角の橋渡しが仇になると言う訳で綾小路家が弥四郎殿を引き取る事にしました。

彼は農政家として名を上げており多々良製鉄に詳しいと評判なのでラッキーって感じですよね。

すぐさま冷泉家に預けてある旧武田領9,700貫を任せる事にしました。

武田家旧領は佐東郡を主体としてますが領地の真ん中を佐東川が流れていまして上流から流れてくる土砂に沢山の砂鉄が含まれ砂鉄が名産の一つとなっています。

因みにこの佐東川、上流では太田川と呼ばれているそうです。

何でも山県家が領する山県郡の太田郷から名前を取って居るんだとか、、、

宍戸家の領地4,875貫を追い出されて2倍の佐東郡を任されると聞いて弥四郎殿は凄く感激してくださいました。

弥四郎殿は早速、石見の吹屋大工である苧紅孫右衛門さんに助言を請い金属の比重で鉱物の選別を行う方法を考え出し鉄穴流し(かんなながし)を発明したそうです。

たたら製鉄と鉄穴流しで数年以内には1万貫を超える製鉄量を産み出しましょうと気炎を吐いておられました。

私は今、内政チートの誕生を目にしてるかもしれません。

川と言えばもう一つ、10月に石見国の吉見氏と益田氏の間で漁業協定を結ばせました。

吉見氏も益田氏も共に大内家の石見国人の中で1、2を争う大身なのですが仲が悪い。

国人だけで無く領内の村同士も仲が悪いから始末に負えません。

両家の境に有る匹見川の権利を巡って両家が私に訴えてきました。

曰く。

吉見氏「上流が吉見領だから上から流れてくる鮎や流木などは吉見の物だから流れてきたら返せ!!」

益田氏「益田領内に流れて来た物は益田の物だから返す必要はない!!」

こんな事で合戦が出来るなんて、、、お前ら小学生か?

こんなくだらない連中を纏めて尼子氏と戦しようとしてたなんて、あの時、塩治殿が反乱を起こしてくれなかったら私死んでたかも。

最も私が死んだ後にその原因を聞いて(尼子)経久殿も笑い死にする気がするけど。

そんな訳で、

1つ 匹見川の両家の村は毎年夏に綾小路家へ鮎を各々10束(100匹)献上する事。

1つ 綾小路家はその礼として吉見家、益田家の村の双方に毎年500貫を各々に下賜する。

1つ 両家の村同士に諍いがある年は献上に及ばず。

1つ 両家とその村々は諍いが起きぬよう良く話し合う事。

まぁ~鮎を相場の10倍だか100倍で買うって言うんだから大人しくなるでしょう。

でも話し合いに吉見氏側から吉見頼清殿、吉見頼景殿、吉見頼任殿、吉見成豊殿、吉見頼家殿とご一門がぞろぞろと、、、益田氏側も益田兼勝殿、益田兼順殿、益田兼織殿、益田兼慶殿とご一門揃って参加と。

もうね、地縁血縁のしがらみの根深さを目の当たりにしましたよ。

こんなくだらない事と私が言えるのは所領を家臣に押し付けて身軽だからだよね。

地縁血縁に雁字搦めだとこんなくだらない事でも当主に一任なんて出来ず、利害関係者が総出で話し合わなきゃならんと言う事ですよね。

おらが村の領主さまは村を守ってくれねぇだ!!と言われると命に関わるので皆必死ですよ。

それでも併せて1,000貫と言う潤滑油があるから皆ニコニコで話が纏まりましたけどね。

けどたった500貫の金が猛毒だと両家の皆さんは気が付いているんだろうか?

これは綾小路家つまり私個人から出ている金なんだよね。

金惜しさで紛争の抑止力になると言う事は、金惜しさで当主が私や大内家に謀反を考えても筒抜けになると言う事。

たった1,000貫で吉見家8,400貫、益田家8,960貫を抑えられるんだったら随分安いと思う。

鮎の引き取り手を悲田院の神人さんに任せれば定期的に両家の情報を届けてくれるでしょう。

もしかしたらあなた方が原因で尼子と戦って敗死と言う可能性もあったんだから仲直りの仲介の役得としては妥当だよね?

石見国と安芸国における綾小路家の大番頭である陶興昌殿には絡繰りを教えたんだけど、なんだか顔が引き攣ってました。

事あらば真っ先に矢面に立つのは貴方なんだから引かずにしっかり頼みますよ。

そんな感じで内政パートで年の後半を終えました。


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