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帰参。

1529年(享禄2年)正月 安芸国 厳島 ~ 周防国 大内館。


綾小路 興俊 12歳。


安芸国の厳島に上陸した時大内館より使者が来ました。

曰く、『帰参に及ばず。』と

残念に思いました。

僅かな時間でありましたが義父上と呼ばせて頂いたし、お屋形さまも、お方さまも、そして上さまも九郎二郎さまも本当に家族のように扱ってくださり、父を亡くし孤児となった私にとって素晴らしい時間をくださった。

だから最後に一言ありがとうと言いたいと思いました。

しかし、あぁ~やっぱりと言う思いも心にあったのです。

以前にも話しましたが大内家と言うのは非常に後継争いが多い一族です。

後継争いが無ければその理由を探すぐらい多いのです。

その為猶子とはなりましたが、決して養子と言う話は出て来ませんでした。

先年の武名さえ無ければそれほど脅威には思われなかったのだろうけれど、これ以上進んではその気が無くとも誰かしら大内の国人が私を擁立すると言う事なのだと思う。

悪意があるなら及ばずと言わずにうちに入れて殺すだろうから。

内藤殿はこの使者に対し酷く立腹されていたが、だからと言って好んで騒乱を起こす事もない。

いつか義兄上が盤石の支配とされれば墓参りに伺う事も出来ようと説得し、内藤殿には私と別れて周防国へ行って頂く事にしました。

ところが翌日内藤殿が戻って来られ帰参の許可が出ましたからさぁ行きましょうと言う。

昨日の今日でそんな訳なかろうと言い返すと東向殿さまが上様を説得され帰参を命じられたとか。

命じられた以上従う他ないが本当に良いのだろうかと思いつつ周防国に入りました。

義兄上さま、つまり大内義隆さまにお会いした時、居並ぶ重臣方を見て私を厭う方々がすぐに判りました。

義兄上さまの右筆を務めて居られる相良武任さがらたけとう殿、義兄上さまの守役と豊前守護代を務めて居られる杉重矩すぎしげのり殿、筑前守護代を務めて居られる杉興連すぎおきつら殿。

皆さん何故か九州に本拠地を置く方ばかりです。

そして私に好意的な視線を向けられる方は、猛将陶興房すえおきふさ殿、そして嫡男興昌おきまさ殿、私の守役のような形の長門守護代を務めて居られる内藤興盛ないとうおきもり殿。

これも又何故か中国に本拠を置く方ばかりです。

始めにお悔やみを申し上げその後当たり障りのない話をしていたのだけれど、突如、相良殿が話に割り込まれました。

そして言うには石見銀山の3割の権利をお屋形(大内義隆)さまに馳走してはどうか?と。

それはと口を開く前に陶殿の嫡男興昌殿が


「亡きお屋形さまと少将殿が決められた事に家臣が口を挟むか?」


とすごい勢いで怒鳴られる。

何でそんなにテンション高いの?

もっとも父君の興房殿に、


「重臣のお歴々に向かってなんだその口の利き方は!!」


と殴り飛ばされてましたが。

まだ何も答えていない内からなんでそんなに熱いの。

取りあえず、


「お屋形さまはどう思っておられるのか?」


と聞きましたよ。

お屋形さまが銀山を欲しておられるなら否応ないですしね。

大内家の領国にある以上嫌と言っても無駄ですから。

しかし帰ってきた言葉が不味すぎる。


「私はどちらでも良いのだが遠江守(相良武任殿の通称)が後々の禍根になるから取り上げるべきだと言うのだ。」


あかん、これはあかん奴かいとうや><。

お屋形さまがそう答えた瞬間、室温がぐっと上がりました。

と言うか、そこら中に殺気が飛んでます。


「義兄上さま!無礼を覚悟で申し上げます。

義兄上さまは大内家の棟梁で有らせられます。

家臣がお勧めしたとしても自らが言葉を発する時は義兄上さまの言葉として発せられませ!

もしここで遠江守が言葉のままに私が銀山を義兄上さまに馳走したとするならば次からは遠江守に家臣達は阿おもねりまする。

そして遠江守が謀反を起こさば家臣は悉くそれに従いましょうぞ。

古来の朝鮮の王にぱくと言う人物が居ました。

その者は幼き頃父と母を相次いで殺され家臣の親子に養育され長じて王となりました。

しかし王となってもその家臣親子の言うままに政を行い言うままに人を登用した為操り王と蔑まれやがて王位を失いました。

我らはお屋形さまの旗の下に集いたいとは思っても遠江守が風下に立ちたいとは思い申さん。

願わくばこのような諫言こたびだけにさせてくださりませ!」


うん、12歳が言う言葉じゃないね。

おまけに11歳年上の兄にいう言葉でも無いわ。

しかし私にも言い分がある。

これを放って置いては不味い。

人が人の上に立つ根幹だもの。

放って置くとそのうち重臣たちがキャンドル集会始めるよ。

私の言葉の後、皆がし~んと静まり返り物音ひとつしない。

その静寂を破ったのは内藤殿、即ち内藤興盛殿でした。


「お屋形さま某共それがしどもは遠江守の言葉が聞きたいのでござらぬ。

お屋形さまは少将殿の銀が欲しいのですか?」


なんかすごい気迫で詰め寄ってる興盛殿の言葉にお屋形さまは


「わしは欲しておらぬ。

少将は我が弟じゃ。

これからも仲ようしていきたい。」


と仰ってくださいました。

でもこれってこれからも揉めそうだよね。


「私もお屋形さまを兄と思うて慕っております。

仲直りの証として引き続き私の取り分は2割とさせて頂きたい。

又、私が死んだら子らにこの権利は要りませぬ。

死後はすべて大内家でご笑納くださいませ。」


うん、子供にまでリスクは負わせられん。

最初から決めて行けば最悪私だけ暗殺でしょ。

まだ子供どころか嫁さんもいないけど。。。

それまでに他の稼ぎを見つけないとね。

やっぱり貿易かな。


と、一応話はまとまり何とかお屋形さま(義興さま)の墓前に線香を手向ける事が出来ました。

菩提寺の凌雲寺りょううんじより出てくると陶殿の嫡男興昌殿が待ち構えている。

何事かと問うと家臣にして欲しいと言っております。

まさに「は~?」だよ。

陶の総領息子あとつぎでしょアンタ?

何でもお屋形さまと仲が良くないらしい。

理由を聞くとお屋形さまの小姓として上っている弟が無理やり凌辱されたらしい。

聞いた瞬間、ぶほっと吹いてしまいましたよ。

でも小姓ってそう言うのもお役目じゃないの?

と聞くと、くそ親父が可愛い弟を自分が知らない間に変態に差し出したとか、、、

その変態さまの弟が目の前に居るんだからさ~もう少し言葉をオブラートに包もうよ。

で、ある日戦から帰って来るとお尻を抑えながらヒコヒコと歩いているマイブラザーを見てプチンと切れたと。

あんな綺麗で清楚な姫さん嫁に貰っておきながらペドホモなんて許さん!!とか拳握ってました。

しかし、私的にはあれ~?って感じなんだよね。

お屋形さまのお嫁さんって今二十歳で綺麗は綺麗だけど、前世で言うならツンツンだよ。

デレ部分が全くない真正ツンツン。

頼りないお屋形さまのお尻を叩ける唯一のお方だからお屋形さまの嫁さんとしては好感持てるけど、自分の嫁さんなら私だったら家出して二度と戻らんよな~

あの嫁さん見て清楚とか言う陶の嫡男殿も目がおかしいよ。

で、今回の騒動でもお屋形さまに噛みつかんばかりだったので陶殿に廃嫡されたらしい。

普通廃嫡されたら国を出て他で仕官すると思うんだが国を出ると弟の姿が見れないからダメらしい。

その時点であなたのブラコンも怖いよ。

勘当されたのに親父殿から私へ一筆書いて貰ったらしい。

煮るなり焼くなりして良いから召し上げて欲しいと書いてありました。

まぁ~いつかブラコン熱も下がって社会復帰出来る時もあるでしょう。

それまで宜しくお願いします。

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