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長い10月中編 手紙。

時系列に齟齬があり、日にちを少し変更しました。

話そのものは変わりません。

1527年(大永7年)長い10月中編 京の都 綾小路邸。


綾小路 興俊 10歳。


姉小路殿の災難はすでに福光館の錯乱さくらんとして京の都で噂になっています。

内藤殿も警固役を務めていた大内家の面目が丸潰れだと憤っていました。

姉小路殿と関係が深い庭田家の方々さまにも協力頂いてお主上さまより何かしらのお言葉を頂こうと相談に伺ったのですが大樹(将軍)さまがお願い申し上げるなら兎も角その陪臣が如何に威勢が良かろうと便宜を図る事は無いでしょうと言われました。

南北朝の頃は天皇家も武家の真似事をして多くの尊い方が亡くなられた為、朝敵を名指すような事はあまり行わないとの事。

特に今のお主上は清廉なお方なのでこのような変を悲しみはされても口には出されないだろうと仰られました。

更に、しかし将軍さまは違うとの言葉を頂き解決策が見えてきました。

将軍さまは武家の棟梁であり下剋上を最も良しとされない立場の方です。

その為、大家である大内家からの要請であれば決して断らないでしょうとの助言をくださいました。

実にタイムリーです。

現在の幕政は堺公方さまが執り行っており、お屋形さまの依頼の件もあります。

堺に赴き「美濃の凶徒」長井豊後と長井新九郎に対する治罰の御判御教書を願い出ましょう。

庭田邸を辞して屋敷に戻ってきたら、歌と茶道のお師匠さまである三条西内大臣入道さまが見えて居られました。

ビックリです。

だってお師匠さまっておん歳73歳ですよ。

前世でもお爺ちゃんですけど、この時代では生ける伝説です。

呼んでくださればこちらから出向きますのにいったいどうした事か?とお聞きしますと姉小路殿の無念を晴らして欲しいと涙ながらに訴えられました。

何でも姉小路殿のお爺さまとお師匠さまはかつて宮中の歌会で良きライバルだったとか。

姉小路殿のお爺さまが飛騨国国司として下向されなかったならば歌の大家としての名声は彼のモノだったろうと仰り、姉小路殿の事を孫のように思っていたと言われました。

これから堺の公方さまにお願い申し上げ必ずや敵を取りますとお伝えすると、念仏を唱えられ拝まれてしまいました。

更に姉小路殿は飛騨に赴いたら先ず兄君の葬儀で喪主を務められる予定だったとの事で、ご兄弟の葬儀を飛騨で執り行って欲しいとの事と、兄君には子が居られるそうですが、僅か2歳との事。

彼が姉小路の名跡を継ぎ飛騨国司として立ち行くよう心を配って欲しいとお願されました。

戦国の世の中ですから飛騨国の主にして差し上げられるかは判らないけれど、決して無体な事にはしないと約束しました。

お師匠さまが帰られると早速内藤殿と相談して文をしたためます。



右田興就みぎたおきつく


此度の一件に私は大変驚き又怒りを感じます。

状況を聞くにその西村何某と言う兇徒が長井を弑さん為が故に少将殿を巻き込んだと見えます。

この一件で大内家の面目は地に落ちました。

都では下々の者までが姉小路さまが頼みにしていた大内はただの案山子だったと囃しております。

私はこれより堺の大樹さまより長井豊後と長井新九郎に対する治罰の御判御教書を願い出ます。

しかし、御教書の如何に関わらず兇徒は討たねばなりません。

で無くば、警固を務めながら飛騨国まで辿り着けなかった大内の面目が立ちません。

私が許してもお屋形さまは決して許さぬでしょう。

書状と共に一万貫の軍費を与えます。

美濃で兵を集い兇徒を族滅しなさい。

大樹さまの声より早く事を成したならばさすがは大内よと世は賞賛しましょう。

又、大樹さまのお声の後ならば世は大樹さまの威勢を褒めたたえても大内の名は言葉の端にも上らぬでしょう。

私もお屋形さまも大内を民衆生が大いに賞賛するさまを望みます。

では武運と良き知らせを祈っております。


大永七年 十月四日


大内三郎興俊+花押。


書状と神屋さんに裏書きさせた証文を持たせて美濃国へ送った後、私は堺へ向かいました。

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