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第6話 甘えを切り捨てて

情けなくて泣けてくるね。

野盗団を討伐した後、俺は吐くだけ吐いてぶっ倒れたらしい。

しかも物資関係が全部魔法で吹き飛んでいるので食料も無ければ騎馬も無い。

帰還は非常に困難を極めたとのこと。

で、ぶっ倒れた俺はというとガゼルさん達が交代で運んでくれたとさ。

徒歩で。

一番近い関所に近づいたときに俺が目を覚ましたらしいが全く記憶に無い。

関所から王都への帰還の際には食事が全然喉を通らない。

もっぱら水しか飲んでいない。

その水もすぐに吐き戻してしまう。

寝入っても人殺しの感触が残っているせいかうなされて夜中に起きてしまう。

数日足りといえどもそんな生活をすればゲッソリと憔悴してしまう。

家臣達の前でなんたる醜態をさらしてしまっているのだろう・・・。

情けなさのあまり離宮で謹慎する旨を伝えてこもっている。

そんな俺に専属の侍女であるマリアさんが家臣達の状況を報告してくれた。

五歳児、しかも王族を危険な状況下に置いてしまったことに非常に後悔をしているらしい。

どんな厳罰を下されても受け入れるつもりでいたらしいのだが「陛下」の取りなしで処罰はなしとなっている。

むしろ「絶望的な状況下でありながら討伐を果たし、よくぞ王都まで帰還することが出来た」と誉められているのだ。

だがこれは内緒の話。

ここで栄誉を与えようものなら長兄イフェリウス派がどんなことをしでかすかわからないからだ。

息のかかった指揮官と子飼いの兵隊達がほぼ皆殺しにされたのだから。

俺みたいな大馬鹿野郎には勿体ない家臣達だよ。

だからといって報償無しでは彼らの生活が成り立たない。

こっそりと俺が錬金術で作った金の小粒が入った小袋を渡している。

そして現在、猛反省している最中なのだ。

もうね、自分の中にある根っこの部分である「日本人の価値観」がすべて悪い。

「まだ五歳児だから」とか「武功を立てるのはまだまだ先」とかひたすら現状を甘く見ていた。

まさに平和ボケした日本人の考え方だ。

きちんと認識していたはずだ。

ここは群雄割拠の戦国時代だということを。

日本の戦国時代でも十二歳で元服して大人として戦場に放り込まれることだってあったのだ。

戦に敗れ一族郎党死罪となることだってザラにあったのだ。

たとえそれが生まれたての赤ん坊でも。

それに比べて俺はどうだよ?

体は五歳児でも精神年齢は四十だ。

武経七書と鳳雛の知恵で戦略、軍略、政略に精通している。

正真正銘、本物の仙人に武芸を仕込まれて腕に覚えがある程度の連中なら瞬殺できる。

大魔導師の御業を受け継いでいるから不可能を可能にすることが出来る。

なのにこの醜態。

本当に泣けてくるよ。

情けなくて・・・。



だからといっていつまでもウジウジしているわけにはいかない。

神聖帝国がこんな手を平気で打ってくるのだからそれほど遠くない将来、いや、違うな・・・。

「近い将来」大々的に討ち入ってくるはずだ。

その時にまた、同じ醜態をさらすわけにはいかない。

この機会に甘えを切り捨てる。

まず、俺の頭の中に入っている武経七書を書き起こし復習する。

現存する軍学書を学び直す。

師匠とした鍛錬を一から行う。

知識の濁りを取り、技の錆を徹底的にそぎ落とす!!



毎日毎日勉学と鍛錬にいそしむ日が続いております。

壊した木偶人形の数は軽く百は超えております。

部屋は武経七書と軍学書で足の踏み場がありません。

長兄イフェリウス派が放ったと思われる暗殺者を返り討ちにした日もありました。

家臣達に密使を出し将来災いの火種となるクソビッチの状況を逐一報告してもらっております。

俺付きの侍女であるマリアさんにはある程度の金子きんすを渡して暗部の働きを労っております。

なにせ神聖帝国の動向も探ってもらっているのだから。

そしてこのマリアさん、足運びや身のこなしから暗部の人間だとすぐに推察できた。

今までも俺の知らないところで活動していたはずだからこれ位は報いたい。

そんな離宮にこもってからの生活サイクルにも変化が生じました。

「陛下」自らが足を運び謹慎処分を解くように言ってきました。

それも何やら目的があるようで・・・。

はてさて、どんな難題やら・・・。



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