第25話 ラリアット!!
教室でみんなとワイワイ話していると廊下が少し騒がしくなる。
『なんぞ?』と思い首をまわしてみると教室の入り口に愛しのゾーエとファムが居るではありませんか!
しかも制服姿!
お胸が『これでもか!』と言うぐらい盛り上がっております!
ドレス姿も良いけど制服姿もイイ!!
写真に撮りてぇ!
んん!
俺は紳士!
俺は紳士!!
キチンとお出迎えしないと!
二人の元へ赴くとこれ以上ないぐらいの綺麗な礼を披露される。
「「フレデリック様、ご入学おめでとうございます」」
見事なハモで入学祝いを言われる。
嬉しぃ!!
好きな人からの笑顔付きのお祝いの言葉って嬉しいのな!
心から返礼する。
ん?
何だ?
いやにネチっこい視線を感じる。
振り返ると教室の隅っこで一部の男子生徒が集まっている。
よく見ると何かを呟いている?
読み取ってみると・・・。
『もげろもげろもげろもげろ・・・』
『氏ねばいいのに氏ねばいいのに氏ねばいいのに・・・』
『リア充退散リア充退散リア充退散・・・』
思わず顔が引きつる。
ゾ、ゾーエ! ファム! 天気も良いから中庭でお話ししよう!
そう言うとゾーエがうっとりした表情で申し述べてくる。
「実はフレデリック様に紹介したい人物がおりますの。サロンで待たせておりますのでお越しいただけませんか?」
否などありませんとも!
嫉妬に駆られた男どもの視線から逃れるために俺は教室を後にした。
「私どもが先頭を行きます」
そう言って二人の侍女が先に立つ。
足運びから見てただの侍女ではない。
ルイーダ様にお願いした星雲兵団の人員だろう。
最後尾に付く二人も隙のない身のこなしをしている。
(ルイーダ様の事だ。見えないところにも人員を配置してるだろうよ。ひょっとすると生徒の中にまで紛れ込ませてるかもしれないな・・・)
害虫対策が希望通りにおこなわれていることに満足しながら侍女の後に付いていく。
「フレデリック様、あちらですわ」
ファムがそう言って示した先には顔立ちが似ている二人の美少女が居た。
大きく違うのは髪の色が金髪か銀髪かぐらいだ。
見たことある。
確かレーシュ公爵領で商いをしていた家の娘だったはずだ。
そういや去年から市井でも優秀な者を入学させはじめたっけ・・・。
え?
と言うことはこの二人、それだけ優秀だって事?
そんなことを考えていると侍女の一人が二人の元へ赴く。
用件を、俺たちが来たことを伝えたのだろう。
二人の美少女は席を立って俺たちを出迎える。
・・・。
大っきい。
何がって・・・おっぱいが。
ゾーエやファムより大っきい・・・だと!?
ここまで大きいと巨乳じゃなく爆乳って言うよな!?
俺の視線に気付いた美少女二人は顔を赤らめながらも嫌そうにはしていない。
むしろおっぱいを持ち上げるように腕組みをしてくる。
ゾーエが俺の耳にソッと呟く。
「金髪の女性がストラと言います。銀髪の女性がケルダです。二人とも綺麗な円錐型の乳房をしておりますのよ?」
・・・・・・。
そんなにガン見してましたかね?
「それはもう魅入っていらっしゃいましたわ」
えーと、ゾーエ?
「怒っておりませんわ。あちらの個室に行きましょう。今の段階では聞かれたくない話がありますの」
「さて、フレデリック様は二人をどのぐらいご存じですか?」
個室に入るなりゾーエに問われて正直に答える。
レーシュ公爵領の商人の娘。
名前は今しがた教えてもらったストラとケルダと言うこと。
そのことを告げるとファムが苦笑する。
え?
なに?
「フレデリック様は何でもないことをしたとお思いでしょうが、二人にとってはまさに地獄の底で神に遇ったが如き思いだったのですよ?」
二人の身の上話を聞かせてもらった。
元々はレーシュ公爵領以外にも店舗を構える豪商だった。
だが、天変地異で生活が困難になり没落。
とうとう身売りしかなくなり売り飛ばされそうになった。
当時は身売りが多くあり供給高状態。
相場は安く安娼婦として買いたたかれない。
一家心中を考えていたところに俺からの支援で持ち直す。
俺の為人を知るにしたがい恋い焦がれたこと。
身分差から恋心を殺したこと。
それでも将来、俺が起こすであろうケテル公爵の即戦力になるために算術を修め、各国の言語や風習を知るために励んだこと。
そんな二人にゾーエとファムが目を付けた。
『在学中はフレデリック様の側廻りとして働いてもらいたいのです。学院卒業後は領地運営に携わってもらいます。その功績を持って二人にはフレデリック様の側室に上がっていただきたいのですがどうですか?』
と、打診した。
当人のみならず親も諸手を挙げて大賛成。
上手くいけば御用商人の立場が手に入るからだ。
何より俺に悪い虫が付かないようにするためだそうだ。
ゾーエとファムは俺より二つ上。
二人が卒業した後、残りの学生生活を任せる人材が欲しかったとのこと。
(まぁ、害虫は三年以内に処理するつもりだがね・・・)
そんなことを考えながらファムの話に耳を傾けた。
結論から言えば俺に否などない。
ストラには『表』の秘書として予定の管理をしてもらう。
ケルダには『裏』の秘書として間諜の取り纏めをしてもらう。
美人でスタイル抜群。
能吏としても優秀。
ゾーエとファムという婚約者がおりながら美少女二人を秘書として側廻りに侍らせるというと男どもの視線が怨嗟に満ちることになるだろうが受け入れよう。
「ストラにケルダ」
そう呼びかけると二人は真摯な目で俺を見つめる。
「何も問題がなければ俺は将来ケテル公爵家を興すことになる」
「「・・・」」
「その領地運営に力を貸してもらえるか?」
「もちろんです。フレデリック様に永遠の忠誠と愛を誓います」
ストラがそう述べるとケルダも続ける。
「私もです。絶対の忠誠と愛を捧げます」
これも乱世の定めだ。
側室として受け入れよう。
今後の方針を決めて個室から出る。
なんとなく辺りを見渡す。
するといやなヤツが目に入る。
入学式で講堂に集まったときキョロキョロしていた栗毛の少女。
そいつがニタリと笑ってすぐに真顔になる。
そして真っ直ぐゾーエに向かって歩みを進める。
それもしずしずとはいかずどたどたという感じ。
これってあれだろ?
イベントを強制的に起こそうとしてるんだろ?
ゲームでは入学初日にイフェリウスと少しでも仲良くなるとゾーエから絡まれるイベントがあったはずだ。
それが起こらない。
当然だ。
ゾーエは俺の婚約者なのだ。
ゾーエもイフェリウスがどうなろうが知ったことでは無いと思っているはずだ。
イベントなど生まれるはずはないのだ。
だから強制的に絡まれるイベントを起こそうってワケか・・・。
探して探してやっとこさサロンに辿り着いたってワケか?
侍女たちも当然栗毛の少女に気付いている。
『淑女にあるまじき行為』程度の認識だろうが俺は違う。
『ゾーエに害をなす行為』と判断した。
流れるような動作でゾーエの側に行く。
栗毛の少女がゾーエにわざとぶつかろうとした瞬間、右腕を二人の間に差込み少女の胸元に腕の内側を叩き付ける。
所謂ラリアットをかましてやった!
腕を振り抜いたが故に、空中で綺麗に一回転して地べたに叩き付けられる。
這いつくばって激しく咳き込んでいる。
ゾーエに害をなそうとしたことに気付いた侍女たちが栗毛の少女を取り押さえる。
顔など涙と鼻水とよだれでグチャグチャ。
取り押さえた侍女たちもいやそうにしている。
とりあえず医務室にでも放り込んでおけ。
ゾーエ、怪我はないか?
「はい、大丈夫ですが・・・」
「かなりやり過ぎでは?」
苦笑しながらストラが抗議の声をあげる。
「最悪責任を取らされ押しつけられるかもしれませんよ?」
ケルダはハッキリと笑っている。
これであの女は俺に敵意を抱いたはずだ。
絶対に俺の所に来やしねぇよ。
ファム、アレが害虫で間違いないか?
「はい、社交界で礼節を守らないアレフ子爵令嬢フレア様です」
三年以内にアレを叩くぞ。
「「「「はい」」」」




