第24話 友達百人出来るかな?
フレデリック=ケテル=ロマリア。
とうとう十五歳になりました。
そう! 学院へ入学です!
気の合う仲間と騒げる学院生活が始まるのです!
まぁ、アレフ子爵令嬢対策もしないといけないからノホホーンとしてもいられないが・・・。
とにかく!
学院生活を有意義なモノにするために俺は全力を尽くす!!
学院に到着して受付の列に並ぶ。
右を見てみる。
同世代に若人が並んでいる。
左を見てみる。
こちらにも同世代の若人が並んでいる。
・・・・・・おぅ。
いつも両脇には騎士のガゼルと軍師のレドモンドを控えさせて軍議やら見回りやらしているせいだろう。
凄く新鮮な景色に見える。
血なまぐさい戦場とは無縁の世界だなぁ・・・。
俺ときたらガキの頃から『戦場、戦場』で騎士団やら傭兵団やら世代を超えておっちゃん達とだけ仲良くしてたからなぁ。
友達同士で語らいながら自分の番を待つみんなが楽しそうだ・・・。
前に並んでいる小突き合っている男子二人は幼なじみ同士か?
俺は騎士団のおっちゃん達と毎日ドツキあってたぞ。
後ろに並んで楽しそうに会話している男女のペアは婚約者同士か?
俺にも最高に美人でスタイル抜群の婚約者が二人もいるぞ。
・・・うん。
ボッチだ。
今、俺ボッチだ。
よくよく考えてみると俺には同世代の友達がいねぇ!
俺、学院生活マジでゼロから始めることになるのか!?
「次の方どうぞ」
思いっきりヘコみながら俺の受付の番になる。
「お名前をいただいてもよろしいですか?」
眼鏡をしたクール系美人の先輩が声をかけてくれる。
「フレデリック=ケテル=ロマリアです」
「・・・はい?」
先輩の動きが固まる。
聞こえなかったのかなぁ・・・。
「フレデリックです。フレデリック=ケテル=ロマリア」
数秒硬直した後、先輩は再起動する。
「・・・ろ」
「ろ?」
「ロマリア救済の英雄!! 鬼神フレデリック!!」
はぁ!? なんぞその呼び名!?
興奮する先輩が俺に詰め寄ってくる。
「私の名はアリッサと申します! ロマリアの英雄を受付できること! 今生最高の栄誉です!」
大声を上げるもんだから周囲の視線を総ざらいしてしまう。
周りからはヒソヒソと声が聞こえてくる。
『あの方がフレデリック様・・・』
『戦において連戦連勝、常勝無敗の・・・』
『フレデリック様がゴリマッチョだって言ってたヤツ誰よ!』
『意外に優しそうじゃね?』
『ゾーエ様やファルネリア様が婚約者なのもわかるわ・・・』
『スッゲー! 生英雄初めて見た!』
なにこの羞恥プレイ!?
「アリッサ先輩・・・」
「はい! 殿下!」
テンションうなぎ登りのアリッサ先輩に告げる。
「受付を終わらせてください・・・」
もうね、視線が鬱陶しい・・・。
自分のネームヴァリュー舐めてたわ。
ここまで影響があるとは思わなかった・・・。
講堂の決められた席に座ると俺の周りが一気に静かになった・・・。
お近づきになろうとご近所さんに声をかけても『はい! 殿下!』なんて返される始末。
それを見てなぜか周囲の緊張感が高まる。
あの~、基本オイラはおバカさんなんですよ?
ゾーエとファムとイチャイチャすることを妄想するおバカさんなんですよ?
なのになんなんだよこの『孤高の英雄』みたいな扱い!
俺は友達とゲラゲラ笑ったり、婚約者とキャッキャウフフする学院生活を夢見てきたのに!
しょうがないので人間観察に興じる。
『まじめそうなヤツだなぁ』とか。
『チャラそうなやつだなぁ』とか。
色々見てみる。
そうすると一人やたら目立つヤツを発見する。
新入生の席に座る栗毛の愛らしい顔をした女生徒。
キョロキョロしたかと思うと急に笑みを浮かべる。
視線の先にはなかなかのイケメン君。
直感が告げる。
『こいつだ!』と。
『こいつが|フレア=アレフ子爵令嬢だ!』と。
つつがなく入学式を終えて割り当てられたクラスへ向かう。
クラスでは既にグループができあがっていた。
とてもじゃないが割り込めそうにない。
とぼとぼと自分の席に着く。
(理想と現実は違う・・・。)
そのことをまざまざと思い知らされる。
「はぁ~」
ついつい出るため息。
「はぁ~」
俺の計画を進めて、クソビッチ対策もして・・・。
「はぁ~」
「折角の入学式なのに辛気くさいため息何度も何度もつかないでくれる?」
声の主は隣の席の女生徒。
ショートカットにした赤毛。
凜とした顔つき。
自己主張の激しい胸。
スカートではなくズボンをはいているせいかくびれたウェストや綺麗なヒップラインが丸わかりだ。
それに舐めてかかれない。
手にできている剣ダコから見るに相当修練を積んだと見える。
頭からつま先まで観察した後、周囲を見渡す。
「キョロキョロすんじゃない! アンタに言ったんだよ! アンタに!」
え? 俺?
「そんなにため息ついてたか?」
「憂鬱になりそうなぐらい辛気くさいため息三度も吐いてた。で? ため息の原因は?」
これは!
友達フラグが立ったか!?
「珍獣扱いされてみんなまともに取り合ってくれねぇんだよ! そのせいで今後の展望に軽く絶望してため息が出たんだと思う。」
そう言うと赤毛の美人さんは口をニヤリと歪める。
「あそこまで戦でバカ勝ちしたら珍獣みたいに扱われるでしょう?」
おや?
「俺をご存じで?」
「当然でしょ? フレデリックで・ん・か」
言葉の端々にどこか侮蔑を含んでいるのは俺の気のせいかね?
「お名前をお伺いしても?」
「アジェラ=アーレン。貧乏男爵家の三女よ。近衛騎士を目指しているわ」
「なるほど」
アジュラ嬢の顔つきが険しくなる。
「何が『なるほど』なの?」
「手の剣ダコだよ。一朝一夕でそんなタコが出来るわけない。真剣に打ち込んできた証拠だろ?」
「・・・『女のクセに』とか、バカにしようモノなら鼻っ柱に拳を叩き込んでやろうと思ってたのに」
思わず苦笑する。
「それを言ったら側室のルイーダ様はどうするんだよ? あの人、近衛騎士団の参謀にまで上り詰めたんだぜ? それに最近の近衛騎士団は男女の区別なく有能な者は取り立ててるから女性の割合が結構あるし」
そう言うとアジェラがクツクツと笑い始める。
「イフェリウス様とは随分と考えに隔たりがあるみたいね?」
うわぁー。
俺、あのバカと同列に見られてるのかよ・・・。
「ちなみにイフェリウス様のお考えはどのようなもので・・・?」
恐る恐る聞いてみるとアジェラ嬢の顔から表情が消える。
「一言で言うなら従軍慰安婦ね」
その回答に俺は絶句する。
「・・・どうすればそんな答えに辿り着く・・・。」
頭を抱える俺をアジェラ嬢が笑う。
「くくくっ! 『ロマリアの麒麟児』『救世の英雄』『鬼神フレデリック』いろんな字で呼ばれるほどなのにいざこうして見ると普通の人間なのね。みんな! ご覧の通り気さくな方だから離れて見てないでこっちに来たら?」
え?
顔を上げると遠巻きに俺たちを見ていた人たちがぞろぞろと集まってくる。
「とりあえず私達、クラスには馴染めそうじゃない?」
そう言ってアジェラ嬢はとびっきりの笑顔でウィンクする。
・・・ときめいたりなんかしないんだからね!




