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幕間 月と明星

学生寮のとある一室。

部屋の主はレーシュ公爵令嬢であるファルネリア。

何処までも透き通るような青空とは裏腹にその顔色は非常に悪い。

その為、見事な金の髪も誰もがうらやむせっかくの美貌も損なわれてしまっている。


窓辺にて晴天の空を仰ぎ見るファルネリアは自虐の笑みを浮かべる。


(今の私と真逆ね・・・。もう二度と私の心は晴れ渡ることなどないのに・・・。)


そんなファルネリアに侍女が恐る恐る声をかける。

「・・・ザイン侯爵令嬢ゾーエ様がお嬢様と是非お話がしたいとお見えになりました」

この言葉にファルネリアは少々驚き首を動かす。

視線の先には自分に対して誠実に努めをはたす侍女がいる。

体調不良を理由にいかなる面会も断るように指示をしている。

にもかかわらず面会の承諾を取りに来ている事に。

「・・・いかなる方とも会ってお話しする気にはなりません。丁寧に謝罪の上お帰り願いなさい・・・」

(ましてやゾーエ様となど・・・。)

だが、ふと思う。

今までもいかなる理由があろうとも忠実に指示を守ってきたこの侍女がなぜ今回に限り面会の許可を取りに来たのか?

その疑問を口にするより先に侍女が話し始める。

「最近のお嬢様は食事をほとんど召し上がりません。何処に行くにも沈んだ表情のままです。日に日に顔色は悪くなり部屋にこもりがちです。このままでは心身共に壊れてしまいます。私ども仕える者達は心配なのです。ゾーエ様はそんなお嬢様のためにお薬を持ってきたと言われたのです。領地にいる頃は臣民の為に身を粉にして過ごされました。そして今また思い悩んでおられます。お嬢様に笑顔を取り戻したい一心で今回は指示を破り取り次ぎをいたしました」

侍女の目に自分を心配する気持ちがあふれているのを感じ取り言葉をなくす。

(これほど心配をかけるなんて・・・。でも、私の決心は変わらない。『日』を選び『決行』するだけよ・・・。)

だが、それとは別に興味も生じる。

(今の私を救う薬とはどんな物かしら?)

そんな物は絶対にない(・・・・・)と断言できる。

だからだろうか。

(最初で最後よ・・・。)

「ゾーエ様とお会いしましょう」

会って話す気になった。



「お初にお目にかかります。ザイン侯爵家ゾーエにございます」

ファルネリアは魅了された。

所作、服装、装飾品、すべてがゾーエという一人の女性の魅力を引き立てる。

(これが月の淑女・・・!)

自分と同じ年とは思えない。

まだ少女のはずなのに大人の女性を思わせるほどの色香を放つ。

美貌、肢体、男なら魅了されて止まないだろう。

同性である自分すら見惚れるのだから・・・。

(・・・これほどの淑女に思われているのなら私ごときが割っては入れるわけがない・・・。)

ロマリアの麒麟児、第三王子フレデリックを思う気持ちは負けないという自負があった。

だが、そのフレデリックの婚約者にして最愛の女性という現実を突きつけられファルネリアの心は折れてしまった・・・。



(ファルネリア様の顔色が悪すぎる・・・。本当に自害を考えていたのかも知れない・・・。この『劇薬』、凶と出るか吉と出るか・・・。)

ゾーエに取っても正念場を迎えた。

「ファルネリア様、ここから先は二人だけでお話がしたいのです」

暗に侍女の退室を求めるとファルネリアは素直に応じる。

否、最早どうでもよくなったのだろう。

ファルネリアの侍女は何かを言いたげに口を開くがゾーエがそれを手で制する。

そして力強く頷き目で訴える。

『すべてを任せなさい』、と。

侍女も覚悟を決めたのか一礼して退室する。

ゾーエはゆっくりと、深く息を吸う。

(さあ、勝負よ!)



力の入っていない声で席を勧められ着席する。

ファルネリアの視線は泳ぎ定まらない。

そんな姿を見せられゾーエは内心舌打ちする。

(これは一度激情させる必要があるかしら・・・。)

「ファルネリア様、随分と顔色が優れないようですが?」

ファルネリアはまぶたを閉じ、うつむいたまま答えようとしない。

「皆うわさをしております。茶会には参加しない。勉学にも身が入っていない。良縁を結ぼうともしない。ファルネリア様は修道院へ行かれるつもりですか?」

『良縁を結ぼうともしない』のくだりで肩が若干震えたのをゾーエは見逃さなかった。

確証などないが確信する。

(やはりファルネリア様はフレデリック様に恋い焦がれている。)

だからあえてズバリ言ってやった。

「それとも自害するつもりでいらっしゃいましたか?」

ゾーエ自身、ファルネリアの立場ならそうするから。



ここに来てやっとファルネリアは顔を上げる。

誰にも明かしていない自分の心情を言い当てられた事に驚いたのだ。

だが、ゾーエの言葉は止まらない。

「レーシュ公爵領の困窮ぶりは有名でした。最早残された手段はファルネリア様を資産家の元に嫁いで後援を得ること。そんな中、救世主が現れた。それがフレデリック様です。公爵領の異変を解決し改革を進めて公爵領に希望を作り上げた。その上で見目麗しく、武勇を誇り、思慮ある行動を取る。それほどの英傑に心奪われぬ女性などいないでしょう。ファルネリア様、貴女のように」

ファルネリアの目つきは険しくなる。

そして、ファルネリアの両の目から雫がこぼれる。

「えぇ! そうよ! 私はフレデリック様を恋い慕っております! 好きで好きでしょうがありません! だけどそのフレデリック様は『月の淑女』と名高い貴女を心から愛しています! 貴女からの手紙が届いたときの嬉しそうな表情! 口元をほころばせ貴女への手紙をしたためているときの表情! この方は私を側室にする気もないと悟ったときの私の気持ちがわかりますか!? 貴族の婚約で有りながら相思相愛で結ばれる貴女に!」

そう言ってファルネリアは手の平で顔を覆い泣き崩れてしまった。



ファルネリアが泣き止むのをゾーエはジッと待った。

しばらく時が過ぎやっと落ち着きを取り戻したファルネリアが謝罪の言葉を口にする。

「ゾーエ様、申し訳ございません。貴女にあたるなど淑女にあるまじき行為でした」

だが、そんなファルネリアに向けてゾーエは(いたわ)る。

「いいえ、私でよければいくらでも心の苦労を吐露してください。ファルネリア様のお立場を考えれば苦痛の毎日だったと容易に察することが出来ます」

「何を・・・?」

困惑するファルネリアにに向けるゾーエのまなざしは優しさにあふれていた。

「心から慕うフレデリック様には私という婚約者が既にいる。ですが公爵家という立場が側室を許しはしない。絶てぬ思いを振り払いレーシュ公爵家のために良縁を探したのは容易に想像できます。ですがそこでファルネリア様は絶望を知ってしまった。誰も彼もが公爵領を食い物にしようとする輩しかいなかったから。ファルネリア様のその美貌と肢体を舐め回すようにみる殿方しかいなかったから」

そう言ってゾーエはファルネリアの大きな胸と細い腰を見る。

ファルネリアはその時を思い出したのか体を震わせる。

「今のロマリアで好条件の殿方は既に婚約者がおります。残っているのはイフェリウス派の男性陣です。

それも肥え太るしか能のない愚物やファルネリア様を色欲でしか見られないゲスどものみ。苦痛の日々を送っていたのは遠くから見ていてもわかりました」

このゾーエのセリフにファルネリアは疑問を覚える。

(遠くから見ていた? 私を? このときから? なぜ?)

だが、話の続きを聞くために押し殺す。

「そうして日を重ねるうちにある事実に気付いてしまわれたのでは? ファルネリア様の縁組みはレーシュ公爵を食い物にされるだけだと」

「・・・・・・」

「先ほども述べたように今のロマリア王国でレーシュ公爵家にとって好条件の殿方はおりません。残っているのはイフェリウス派の愚か者のみ。このままなし崩しで政治利用されレーシュ公爵家を食い物にされる、ファルネリア様の御身を性欲のみのはけ口にされるぐらいなら修道院へ行く。レーシュ公爵家に取っては何の益にもならない。されど、損失を出さないという点ではよい考えかも知れません」

ここでゾーエは一度話を中断する。

目を閉じる。

時間にして二呼吸。

そして再び目を開けると先ほどまでの優しさはなく挑戦者のごとき闘志が宿っている。

「ですがファルネリア様は思っていた以上にフレデリック様への恋心を断ち切れてはいなかった。むしろその逆、募った思いは愛へと昇華されていた。国外の有力者との縁組みもあったはずです。いえ、むしろ今もこの話は続いているはずです。ですが受けるわけにはいかない。フレデリック様を愛する以上、そのほかの殿方と不貞などもってのほか。だから・・・」

その後の言葉をファルネリアが引き継ぐ。

自虐のような、悟ったような、色々な意味に取れる笑みを浮かべながら。

「えぇ、だから自害を考えておりました・・・。私としては愛妾でもいい、その末席でもいい、お側に侍ることが出来るのであれば、フレデリック様のお側にいられるのであれば・・・。ですがそれすらもレーシュ公爵令嬢という立場が許してくれない。・・・ゾーエ様、私を憐れに思うのなら今日の話は聞かなかったことにしていただけませんか? 静かに私を見送ってはいただけませんか?」

ファルネリアの覚悟をゾーエは感じ取れた。

きっとこの面会が終わり自分が退室した後で自害するつもりなのだろう。

そうしてゾーエは札の一枚を切った。



「死ぬ覚悟がお有りなのであればファルネリア様、その命、その人生、フレデリック様の正室として使っていただけませんか?」



ファルネリアは我が耳を疑った。

(正室? 私が? でも、そうなればゾーエ様は?)

その疑問が顔に出ているのだろう。

ゾーエが即答する。

「勿論、私も正室としてフレデリック様と婚姻します。つまり『左正室(させいしつ)』『右正室(うせいしつ)』という立場をもうけて正室を二人娶っていただきます。」

「なっ!?」

「ちなみに根回しは既に済んでいます。後はファルネリア様がうなずくだけです」

「聞いたことがありません! 正室を二人など!」

若干混乱気味のファルネリア。

それをよそにゾーエは更に札を切る。

「フレデリック様が収めた功績は多大な物です。レーシュ公爵領の異変解決、そしてそこの改革、度重なる神聖帝国の侵略撃退。このためフレデリック様の派閥が軍属を中心に広がっているのはご存じですか?」

「一応は・・・」

「では、そのフレデリック様がより大きな武功を上げたとしたら? 例えば・・・、神聖帝国の至高の十二人と言われる十二聖戦士の第二席、第三席、第四席という遠征するにあたり事実上の最強の布陣をもってレーシュ公爵領へ向けて進軍され、それをフレデリック様率いる白鳳騎士団が殲滅する、というのは?」

ファルネリアはギョッとする。

(あまりにも具体的すぎる!)

つまり事実。

「ゾーエ様! 今おっしゃった話は・・・!」

「神聖帝国おおよそ三万、対するロマリア王国は白鳳騎士団五千、レーシュ公爵軍二千、傭兵団二千、義勇兵一千、計一万で約三倍の兵力差です」

動じることなく答えるゾーエにファルネリアは渋面する。

「国軍は!? 今話された中にロマリア王国軍が含まれていません!」

それでもゾーエの表情は崩れない。

「本来であればこの情報は最優先事項として王城へ届けられるはずでした。しかし、フレデリック様を亡き者にしたいイフェリウス派が握りつぶしましたと思われます。王城にはこの報せは入っておりませんでした。その為、国軍の出陣を待たずに戦端は切られます」

自分でもわかるほどファルネリアの血の気がひいていく。

困窮という地獄からやっと脱した故郷が蹂躙される。

涙がこぼれる。

(こんな! こんなことがあっていいの!?)

事態を重篤化させたイフェリウス派に怒りがわく。

だが、それ以上に目の前にいるザイン侯爵令嬢の泰然とした姿に疑問もわく。

「何故、ゾーエ様は落ち着き払っておいでなのですか? 国家の趨勢に関わる事態なのですよ?」

当然の質問をしたつもりだが思わぬ答えが返ってきた。

「フレデリック様が勝利を収める。これ以外の結末が想像できません」

絶句するファルネリア。

それをよそにゾーエは種明かしをする。

「フレデリック様はこの遠征を予見されておいででした。準備期間は十二分にありました。最大五倍の兵力差なら押し返せると仰っておいででした。今回は三倍の兵力差なので二度と国境を侵そうなどと考えられなくするため鏖殺するとのことです。・・・ここで先ほどの質問です。これほどの武功を上げた場合何が起こるか?」

「そんなのわかるわけ・・・!?」

「ダメです! 考えなさい! フレデリック様の正室を努めるのならこれ位の思考は必須です!」

「!?」

爵位でいえばゾーエはファルネリアより下になる。

だが、今、ここにいるのは将来フレデリックが興すケテル公爵の公爵夫人の姿。

それを幻視したファルネリアは必死になって頭を回転させる。

(今までの功績を考えても新興公爵家としての箔付けには問題はないわ。ましてや国軍の到着を待たずに帝国軍を退けたとなればその武功は燦然たるもの。・・・わからない! それだけ大きな武功を上げて何が問題なの!?)

ふと、視線を感じて顔を上げてみる。

ゾーエと視線がぶつかる。

そこにあるのは信頼を寄せる視線だった。

(ゾーエ様は私を導こうとしている? これはその為の試練だというの?)

ファルネリアの中で何かが変わろうとしていた。



ファルネリアは必死に考えを巡らせた。

だが、思考のすればするほど同じ答えに辿り着く。

『公爵家を興すにあたって問題なし』と。

だが、この答えがゾーエの求めているものでないと直感が告げる。

時間は大分過ぎている。

それでもゾーエはファルネリアの答えをジッと待つ。

(わからない! 今までの功績、そして遠征軍の撃退、大きすぎて何が・・・!)

瞬間、閃くものがあった。

(大き・・・すぎる(・・・)?)

すると今まで見えなかったものが見え始める。

(そうか! 功績が大きすぎる! 今までの功績ですら公爵家を興すには十分すぎる。そこにこれだけの大きな武功を携えてこられたら・・・!)

だから自然とファルネリアの口から言葉が紡がれる。

「王位継承権の・・・繰り上げ・・・?」

ゾーエの顔に笑みが浮かぶ。

「その通り。これだけの武功を内外に示してしまうと立場の向上をしなければならなくなります。そしてそれはフレデリック様が望むロマリア王国の形ではありません」

「・・・フレデリック様はどのような構想をお持ちなのですか?」

ゾーエは視線を部屋の入り口に向ける。

そしてファルネリアも悟る。

(誰にも聞かれたくない話と言う事ね・・・。)

「ゾーエ様、ご安心ください。ここは角部屋です。隣の部屋も幸い空室です。部屋の入り口にいる侍女は私が信頼するものです。こればかりは信じていただくしかありません」

「・・・いいでしょう。ファルネリア様が信じるのであれば私も信じましょう」

そしてその内容は驚くべきもので有り、また、納得すべきものであった。



「イフェリウスを廃嫡させその派閥を一掃しエグザリス様を玉座に着ける。フレデリック様は軍を掌握し軍事面で王家を支える。これがフレデリック様の構想です。」



「ゾーエ様、フレデリック様は玉座には興味がないのですか?」

この言葉にゾーエは苦笑する。

「フレデリック様は『自分は国土を広げる才はあっても治める才はない。領主は出来ても君主は無理だ』と仰っておいででした」

ファルネリアは渋面する。

「わかりません。何故その問題が正室問題に関わってくるのか・・・」

「順を追って話しましょう。まず間違いなく王位継承権の繰り上げが起こります。戦国乱世においてこれだけの武功を内外に示せば当然です。ですがそうなるとフレデリック様の構想とかけ離れたものになります。あくまでイフェリウス派を廃してエグザリス様を玉座に着け、その派閥を内政や外交の中心に据える。そして自分は軍閥を掌握してその補佐をする。現にエグザリス様はイフェリウスに変わり外交面で着実に功績を上げております。その為、エグザリス派とフレデリック派は良好な関係にあります。ここまではいいですか?」

ファルネリアがうなずくとゾーエは話を続ける。

「ですが王位継承権の繰り上げ問題が発生するとこの関係も変わってきます。イフェリウス派、エグザリス派、フレデリック派、この三つで権力闘争になります。その先に待っている最悪の事態は内紛です。そうなれば諸外国はこのロマリアを食い物にするでしょう。そこで私達の出番です」

「は?」

ファルネリアは思わず聞き返した。

何故ここで自分たちの出番なのかと。

ゾーエは自信満々で話し始める。

「フレデリック様に王位継承権の繰り上げの代わりとしての報償として私達を正室として求めてもらいます。」

ファルネリアは絶句する。

事情はわかったが正室二人など前代未聞の珍事であろう。

だが、冷静な自分がいる。

その自分が訴える。

どす黒い感情が渦巻く。

「無理です。フレデリック様がゾーエ様を愛することはあっても私を愛する保証などないではありませんか・・・。フレデリック様とゾーエ様が愛し合う日々を眺める毎日など拷問以外の何ものでもありません! 閨に呼ばれてもただ、性欲のはけ口にされるなど嫌に決まってます! 私は! フレデリック様に愛されたいのです!」

この言葉を聞いたゾーエは軽く目を伏せる。

「フレデリック様は自覚しておりませんがレーシュ公爵領に赴いてから手紙にファルネリア様のお名前が度々上がっているのですよ? 公爵令嬢として立派に振る舞っているとか綺麗な笑顔を見られることが出来たとか・・・。私、心配でしたのよ? フレデリック様がファルネリア様に取られるのではないかと・・・。入学式でファルネリア様を見たとき嫉妬したのですよ? 風にそよぐ美しい金の髪、皆が振り返る美貌、殿方の目を引きつける魅惑の肢体。フレデリック様はひょっとしてこの方と逢瀬を重ねたのではないかと疑ったんですよ?」

月の淑女の思わぬ内面にファルネリアは戸惑った。

(ゾーエ様が私に・・・嫉妬?)

ゾーエの話はなお続く。

「ファルネリア様、フレデリック様は貴女を女性としてみています。その証拠にこれを預かってまいりました」

そう言って持ち込んだ箱を開いてみせる。

中には黒翡翠を使った美しい髪飾りが納められている。

「これは・・・?」

「フレデリック様はファルネリア様の金の髪を明星の星に例えておいででした。この黒翡翠の髪飾りは最も暗い黄昏時を表しているのでしょう。・・・ご存じ? 明星は美の女神とも云われているんですよ? ファルネリア様、これでもまだ愛されていないと言い張りますか?」

ファルネリアは混乱の局地にあった。

恋心を募らせた相手が自分を少なからず思っているということ。

そんなファルネリアを見てゾーエはほくそ笑む。

(もう一押しね・・・。)

ゾーエは席を立ちファルネリアの後ろに回り込む。

そして抱きしめる。

驚くファルネリアを余所にゾーエは両手をファルネリアの腹部に添えてソッと撫でながら耳元で言葉を紡ぐ。

「ファルネリア様、ここにフレデリック様のお子を宿し、育みたいとは思いませんか?」

瞬間、ファルネリアの体が震える。

それが歓喜によるものだとゾーエは直感する。

振り返ったファルネリアの目には妖艶な笑みを浮かべるゾーエの姿が映る。

ファルネリアはその笑みに正直な感想を述べる。

「神の導きか悪魔の囁きかわかったものではありませんね・・・。」

「私と義姉妹となるのは嫌ですか?」

「まさか! 今日からゾーエお姉様と呼ばせていただきます!」

「共にフレデリック様を、ケテル公爵家をもり立てていきましょう。明星の淑女」

「どうぞファムとお呼びください。お姉様。」

ゾーエは妖艶な笑みのまま独りごちる。

(フレデリック様、上げ膳据え膳で女二人をたっぷり召し上がっていただきますわよ?)


内容にちょっと無理があったか?

まぁ、そこはご都合主義万歳で?

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