第20話 バッカじゃねぇの?
一報を受けて俺はレーシュ公爵領へ向かった。
しかし農繁期に軍事行動なんてやらかすか?
うちの白鳳騎士団みたいに兵農分離で職業軍人だけの構成ならいざ知らずさぁ・・・。
とりあえずレーシュ公爵領に在留する白鳳騎士団に合流しなけりゃならん。
合流まではどうしても時間がかかる。
何せ五百の兵団だからなぁ・・・。
兵馬を休ませたり補給したり・・・。
ひょっとしてもう戦端は切られたかも知れない。
それでも参謀のレドモンドや騎士のガゼル達がいる。
滅多な事じゃ遅れは取らんだろう。
間に合いました。
レーシュ公爵領に在留する白鳳騎士団に合流して本来の規模である千人の軍勢となった。
そこにレーシュ公爵の軍三百が加わる。
・・・まぁ、しょうがねぇよ。
極貧生活を送っているレーシュ公爵領でこの規模は最大限なのだろう・・・。
んで、この千三百で神聖帝国の軍勢二千と渡り合わにゃならんわけだ。
俺が率いる白鳳騎士団は騎兵五百が主力になっている。
俺一人が無双してもいいのだがそれをやると騎士団の存在意義が揺らいでしまうので却下。
騎兵の機動力を十分に生かすために野戦を選択する。
ただし正面には配置しない。
左右両脇に展開して正面に歩兵を配置する。
それも前面に出す形で。
それを徐々に下がらせる。
帝国兵がこれに食い付いて追撃してくればしめたもの。
左右の騎兵をあげて退路を断ち包囲殲滅するだけ。
わかる人にはわかるだろう。
戦術家ハンニバルの作戦、カンナエの戦いの模倣である。
はてさて上手くいくことやら・・・。
でも、なんで間に合ったんだ?
間に合った理由がわかりました。
帝国兵二千を見て『これは勝った』と思いました。
どう見ても『昨日まで農作業してました』という感がにじみ出ている軍団なのです。
烏合の衆です。
しかし今は農繁期なんですよ?
指揮官らしきものは後方に陣取っている。
ひょっとしてアレか?
督戦隊か?
それって死ぬまで戦えって言うことだろう?
さすがは狂信者の国、やることがえげつない・・・。
降伏勧告を無視して戦うこと戦うこと。
督戦隊の退路を断った騎兵で蹂躙したにもかかわらず帝国兵が一歩も引かない。
結果として帝国兵二千を鏖殺してしまいました。
勝ち鬨を上げようとしたところに一報が入る。
え?
今の先鋒?
次の部隊がレーシュ公爵領に迫っている?
戦力の逐次投入って・・・。
バッカじゃねぇの?
こうなると三番手、四番手も考えられるな・・・。
二番手は進路上に存在する渓谷の上で迎え撃とう。
進路を槍衾で塞いで退路を落石で断とう。
後は頭上から矢の雨を降らせて叩きまくる。
うん、これで行こう。
二番手を凌いだらやっぱり三番手が来ましたよ・・・。
しかも騎兵隊。
数を揃えるのに時間がかかったのだろう。
兵数おおよそ千。
渓谷は落石で進路をふさがれているので大きく迂回してくれた。
森林地帯にある間道を使ってくれてます。
ありがとうございます!
本当にありがとうございます!
そこには騎兵の機動力を削ぐために縄を幾重にも張り巡らせたトラップがあるのです!
白鳳騎士団の歩兵は弓兵としての訓練も積んでるのです!
木の上から矢をジャンジャン降らせます!
そうするとあら不思議!
三番手の鏖殺完了であります!
そんでもって数日経過。
この頃になるとロマリア王国軍が結集してきます。
経過報告を聞いて将軍達が驚いたり苦虫を噛みつぶしたような表情をしています。
まぁ、千と少々の兵で都合五千の兵を撃退したのだから信じろという方が難しいかも知れない。
イフェリウス派の諸将は俺の事を嘘つき呼ばわり。
お前ら、第三王子といえども王族に対する口の利き方じゃねぇぞ?
そんな中さらに追加報告。
四番手の本命が到着。
何で本命かわかるかって?
この四番手が五千もの兵を連れてきてるからだよ。
敵は横陣をしいている。
将は中央の奥に居る。
殲滅戦は無理かな?
俺自らが先頭に立って白鳳騎士団の騎兵を率いて中央突破により敵将を討ち取る作戦を提案。
多くの諸将は待ったをかけるがイフェリウス派のバカどもは『やれるものならやってみろ』と煽る煽る。
バカどもはわかっているのかなぁ?
自分たちが失点を重ねているって。
ここで俺が敵将を討ち取ってきたら集結した諸将の面子が潰れると言うことを。
集結した意味が無くなるということを。
それを理解している将は突破後の横陣を潰すための歩兵を買って出ていると言うことを。
まぁ、いいけどな。
だけど言ってやる。
バッカじゃねぇの?
敵の士気の低いこと低いこと。
一番手から三番手まで鏖殺されたことが知れ渡っているからか?
おかげで中央突破が容易に済んだ。
敵将もまさか五千の兵に五百の騎兵で突撃してくると思っていなかったのだろう。
ポカンとした顔をしてこちらを見ている。
それとも先頭を走るのが子供と思って驚いているのか?
でもどちらにしろ致命的な隙だよ!
鳳嘴刀の一閃で首を刎ねる。
首級を拾い上げて横陣の背後に食らいつく。
白鳳騎士団!
残党を殲滅せよ!




