第17話 高みを行く者
神聖帝国に隣接するロマリア王国のレーシュ公爵領。
その公爵領には打ち捨てられた古城が存在する。
長年の戦でボロボロになったもの、維持管理が出来ずに焼き捨てられたものなど。
そのうちの一つに俺は足を運んだ。
今の俺にはハッキリわかる。
この古城に邪神の僕にされた高みを行く者が居ることを。
見取り図など無いために城の中をあちこち歩き回りやっと玉座の間に辿り着いた。
その玉座には一人の浅黒い肌の美丈夫が腰掛けている。
この圧倒的な存在感。
間違いなく高みを行く者だろう。
額に僕の額冠がはめられている。
戦闘は避けられない。
チャクラを全開にして生命力を最大限まで活性化させる。
霊力、妖力、魔力も解放している。
聖炎の竜王の竜闘気を発動させる。
龍皇の龍気を全身にみなぎらせる。
雷霆を全身に纏わせる。
鳳嘴刀を構えた。
!?
何だ!?
脇腹の激痛はいったい・・・!?
何でヒュペリオンは壁に片足立ちしている!?
俺は・・・!?
蹴り飛ばされて床に横たわっているのか!?
起き上がろうとしても体が言うことをきかない!?
治癒と再生の能力が追いつけないほどの重度の火傷を負っている!?
どんな攻撃をされたんだ!?
だが、この状況はマズイ!
殺してくれと言っているようなものだ!
激痛が走る体を無理矢理動かして回避行動をとった瞬間にヒュペリオンが拳を打ち下ろしてくる。
それには膨大な熱量が込められている。
玉座の間に爆熱が広がる。
否!
城そのものが爆砕した!
まさか・・・太陽風!?
100万度を超す攻撃を繰り出すのかよ!?
何よりヒュペリオンの攻撃が徒手空拳による格闘技戦が戦闘スタイルなのか!?
いくら炎の加護があっても、これじゃあまるで防護服着てマグマに手を突っ込むようなものじゃ無いか!
ヒュペリオンは羽虫を追い払うように片手を振るうだけ。
それだけで爆砕した城の瓦礫が綺麗さっぱり吹き飛んでいく。
攻撃の隙を与えちゃいけない!
縮地と高速飛翔で肉薄して鳳嘴刀を横薙ぎに振るうが簡単に躱される。
ダメだ!
絶対に攻撃させられない!
連続攻撃を繰り出すがすべて回避されるか武器の腹を叩かれ捌かれる。
こちらが酸欠寸前になるほど攻撃の手を繰り出すも何一つ有効打にならない。
どさくさ紛れに雷霆の力をのせた雷の弾幕を放つも紅炎が壁となりすべて無駄打ちとなった。
攻撃速度だけを問うのであれば素手の方が速い!
鳳嘴刀を捨ててヒュペリオンの懐に潜り込む。
拳に雷霆の力をのせて鳩尾に叩き込む。
ついでに浸透勁ものせる。
よし!
血を吐きながら吹き飛んでくれた!
この機を逃したら俺に勝ち目なんか無い!
間を詰めようとしたらヒュペリオンの虚ろな目がこちらを向く。
!?
ゾクリとするものが背筋をつたう。
守りの盾!
守りの壁!
ありったけの呪符をばらまき更に障壁を強化する。
瞬間、超高温に俺は包まれた。
ざっと見て直径は1キロか?
光冠を起こされるとは思わなかった・・・。
これも100万度を超える太陽現象の一つだ。
太陽神の権能は伊達じゃ無い・・・。
!?
ヒュペリオンは何処に行った!?
全方向に向けて雷の弾幕をばらまく。
それと同時に目の前に大きく飛び込む。
直感が警報を鳴らしている。
どれほど無様でも良いから回避しないといけない。
視界の端に俺が居た場所にヒュペリオンが踵落としを叩き込む姿をとらえた。
弾幕のおかげかヒュペリオンの体勢は崩れている!
追撃を躱すためにも雷霆の力をのせて稲妻の矢を放つ。
貫通力に優れた魔法だから紅炎も突き破ってくれるはずだ。
だが、ヒュペリオンは余裕を持ってこれを回避した。
ウソだろ!?
光速攻撃だぞ!?
何で躱せる!?
結局有効打は浸透勁をのせた券打の一撃のみ。
後は防戦一方。
魔法による攻撃は高速回避される・・・。
武器による攻撃は見事に捌かれる・・・。
肉弾戦も重量の差で押し切られる・・・。
血反吐を吐いて地べたに這いつくばっている俺をヒュペリオンは虚ろな瞳でつまらなそうに見下ろしている。
クソ!
神に挑むというのがこれほど無謀だなんて・・・。
受けたダメージの方が圧倒的に大きいため不死鳥の治癒と再生の能力が追いつかないでいる。
このまま俺は殺されるのか・・・?
陛下の治世を手助けできずに死ぬのか?
王妃の慈母に応えられずに死ぬのか?
次兄を支えること無く俺は果てるのか?
ガゼルたちの忠義を無為にして滅びるのか?
ゾーエ嬢の花嫁姿を見ずに殺されるのか?
ゾーエ・・・。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
死んでたまるか!
こんな所で死んでたまるか!
俺は約束したんだ!
ゾーエの元に帰ると!
俺は生きてやる!
生きて必ずゾーエと添い遂げてみせる!
体中が激痛に支配されるが身を起こす。
炎の剣による攻撃では速度が遅い。
朱鳳刀の抜刀術でもまだ遅い。
・・・やるしか無い。
やらなきゃ死ぬしか無いんだ。
手刀斬撃による抜刀術を・・・。
右手を手刀部位として構える。
雷霆、竜闘気、龍気、霊力、妖力、魔力、生命力、すべての力を手刀に込める。
不死鳥の鎧もそれに応えるかのごとく黄金の光を放ち始める。
背には金色の炎の翼がはためき始める。
こちらは体の激痛で動くことなどままならない。
高みを行くものはこちらをじっと見つめている。
僕の額冠による支配が効いているせいか瞳は未だに虚ろなままだ。
危険と判断したのか腕に膨大な熱量が纏わり付き始める。
太陽風!?
防げるか!?
守りの盾!
守りの壁!
今までみたいに真っ向から受け止めちゃダメだ!
障壁を斜めに展開させることで受け流す!
直撃は避けられたがノーダメージとはいかなかった。
それでも手刀の力達は散っていない。
高みを行く者!
間接攻撃では俺は絶対に死なないぞ!
踏み込んでこい!
俺の間合いに!
体に走っていた激痛が徐々に引いていくのがわかる。
イヤ、違うな。
手刀斬撃による抜刀術に意識が集中し始めたんだ・・・。
そうだ!
散漫になるな!
今の俺には二撃目は存在しないんだ!
右手を本物の刀剣にしろ!
伝説に謳われるような聖剣に!
俺が動けないとみたのだろう。
ヒュペリオンがゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
心臓がドクドクドクドクと脈打つ。
あと三歩!
その間合いになった瞬間ヒュペリオンが右腕を大きく振りかぶる。
打ち下ろしの右拳!
そこに込められているのは一点に集中させた太陽風の塊。
ヒュペリオンの踏み込まれる一歩。
さらに懐に潜り込むように一歩間合いを詰める。
一歩。
あと一歩!
勇気を持て!
恐れるな!
すべての人たちの希望が込められているんだ!
ヒュペリオンが左手を構えた!
俺は最後の一歩を踏み込むと同時に手刀斬撃による抜刀術を放っていた。
手応えはあったがそれと同時に俺は意識を失った。




