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第15話 地脈

「フレデリック様、ここは不思議なところですな・・・」

ガゼルがいぶかしげに問いかけてくる。

レーシュ公爵領の南部と東部に比べれば格段と過ごしやすい。

だが、いくら北部だからといって寒々(・・)と感じるのはおかしい。

ロマリアは全土に渡って温暖な気候なのだから。

にもかかわらず砂漠化が進んでいる・・・。

俺にはこの異常事態がなんなのかわかっている。

クソ!

地脈が断ち切られている!

「ちみゃく・・・ですか?」

あぁ、そうだ!

俺たちの体が血を循環しているように大地も力を循環しているんだ!

その流れが断ち切られたためにここら辺り一帯の生命力が著しく落ちて砂漠化が始まったんだ!

何かとてもよろしくない物がその地脈からの力を貪ってるんだろう・・・!

ガゼル!

今すぐ地脈の流れをさかのぼる!

急いで支度をしてくれ!

「御意!」



北へ更に歩みを進めると国境地帯まで来た。

そこにあるのは巨大な滝。

先行していた従者達も帰ってきた。

これ以上先には何も無かったとのこと。

正直に言えば彼らには俺は期待していなかった。

地脈の流れはこの大瀑布で途切れているのだから・・・。



・・・滝の裏だ。

「は?」

近習の者が間抜けな声を上げる。

だが、ガゼルには伝わったらしくすぐに滝の裏を調べに行く。

そして咳き込みながら帰ってくる。

「フレデリック様! 滝の裏に巨大な洞窟があります! ただ・・・」

ガゼルが言いよどむほどの何かがあるという訳か・・・。



なるほど。

確かにこの腐臭は耐えかねるな・・・。

・・・騎士団では何人も嘔吐をしている。

「・・・お前達、フレデリック様を見習え」

そういって叱咤激励するガゼルの顔色も悪い・・・。

ガゼル、ここから先は超常の存在から力を授かった俺しかいけない。

この先に待っているのはおそらく死霊系の化け物だ。

「仕える主君を危険にさらすのは忠義に反するのですが・・・?」

いざとなれば俺一人なら逃げることも叶うが全員となるとさすがに無理だ。

何より俺はゾーエ嬢と結婚してひ孫の顔を見るまで死にたくない。

場を和ませるために言ったのだが割合ウケたようだ。

「わかりました。我々は滝の側で待機しています。早く帰ってこないとゾーエ嬢にありもしないことを吹き込みますよ?」

・・・冗談なんて言うんじゃ無かった。



不死鳥(フェニックス)の鎧は気化した毒に対応するためマスクがついている。

これで腐臭や毒ガスに対応が出来る。

松明をつけて明かりを確保する。

ついでに明かりの魔法(ライティング)で作った光の玉を天井近くまで打ち上げる。

そこで気がつく。

天井に何かがこすれた後がある・・・。

大人の竜でも余裕を持って通れるほど大きな洞窟なのに・・・。

竜を超える巨大な生き物って何がいたっけ?



目の前には巨大な竜の屍が横たわっていた。

大きさは大人の竜を大きく超える。

真紅の鱗がびっしりとついている。

問題は動いている(・・・・・)事だ。

屍竜(ドラゴンゾンビ)

クソッたれ!

唯一神ってのはここまで命を冒涜するのか!?

俺の存在に気づいた竜が首をこちらに向ける。

あぎとを開き炎をはき出す。

ただの竜じゃ無い!

今の竜の息(ブレス)は聖なる力を秘めていた!

これほどの巨体になるには千年は生きてきたはずだ。

そして真紅の鱗に聖なる竜の息(ブレス)

まさか・・・こいつ!

いや、この方は聖炎の赤竜王(ドラゴンロード)

神の肉体すらも焼き滅ぼすと言われている存在をどうやって殺した!?

見たところ外傷らしきものは見当たらない!

・・・・・・。

唯一神め!

呪い殺したんだな!

聖炎の赤竜王(ドラゴンロード)は精霊信仰に匹敵する信者を持っている。

それに嫉妬でもしたのかよ!?

これほどの存在が地脈の側で力を貪られたらたまらない!

現に今も地脈からドンドン力を吸い上げている・・・。

きっと何も悪いことはしていない。

力ある者としてこの世に存在しただけで呪い殺されて屍をこのような形で辱められる・・・。

傀儡として利用される・・・。

今の俺に出来るのはこの方を安らかに眠らせてやることだ。



朱鳳刀(すほうとう)を掲げて雷霆(ケラウノス)の力をのせる。

洞窟を埋め尽くすほどの稲光が発生する。

縮地を使い竜の体を駆け上る。

竜の頭頂部に簡単にたどり着く。

大きく振りかぶった朱鳳刀(すほうとう)で頭部をかち割る。

落雷を思わせる轟音が洞窟内にこだまする。

今度こそ力を失ったのか巨体が横たわる。



・・・・・・・・。

『・・・悲しむことは無い、勇者よ』

!!

さっきまで瞳孔が開きっぱなしだったのに今は理性の光が宿っている!?

『このような形で生を終えるのは不本意だ。だがそれでも我が力を託すに値する者がいる。それはとても喜ばしい事だ・・・』

聖炎の赤竜王(ドラゴンロード)様・・・。

『小さき勇者よ。汝の名は・・・?』

フレデリック=ケテル=ロマリア・・・。

『フレデリックよ。この後、儂をどうするつもりだ?』

二度とこのような目に遭わぬよう火に葬して弔うつもりです。

『ならば焼け残った後の鱗や爪を使い御主の武具にしてくれ』

・・・・・・・・。

『そして儂の魂を受け取ってくれ・・・』

魂?

『我ら力ある竜は死を迎えるとき輪廻転生する。だが、このような形で命が歪められるとそれも出来なくなる。消え去るだけなのだ。それならばフレデリック、御主に託したい。聖炎の赤竜王(ドラゴンロード)としての力、知識、ありとあらゆる事を・・・』

・・・やり方は?

『大気や地脈から魔力を吸い上げることは出来るか?』

出来ます。

『儂の体を火に葬すれば闘気(オーラ)を纏った鱗粉が巻き上がるはずだ。大気から魔力を吸い上げる要領でそれを体内に取り込むのだ・・・』

・・・・・・・・。

『そろそろ時間らしい・・・。御主と話が出来たこと、力を託すに値すること、そしてそれを託せること、儂は幸せなのかもしれん・・・』

・・・・・・・・。

あぁ、亡くなられたか・・・。



偉大な竜王を弔うのは悲しい。

だが、それ以上に怒りがこみ上げてくる。

唯一神、否、邪神討伐は必ず俺が成し遂げる。

部屋に舞う鱗粉を俺は体内に取り込み始める。

千年を超える歴史の重みを受け止める。

体の中に聖炎の赤竜王(ドラゴンロード)のすべてが流れ込んでくる。

力、知識、ありとあらゆる事が・・・。

目の前には骨まで焼き尽くされ大量の鱗と聖炎の力を秘めた皮の部分が残されている。

後は僅かに爪や牙。

それらを空間収納してその場を後にする。

悲しみに胸がはち切れそうだ・・・。

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