表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/37

第1話 クソビッチがいる世界への転生はへこみます

「ないわ~」


俺は四つん這いになってうなだれている。

俺、昨日は普通に寝たんだぜ?

で、いつも通り起きてみると体が縮んでる。

まさかと思い窓ガラスに映る自分を確認する。

俺、純粋な日本人。

黒髪、黒目の日本人。

なのに移っている姿は金髪碧眼の愛らしい顔の子供。

顔が引きつる。

窓ガラスに映った子供の顔も引きつる。

腕を上げ下げしてみると窓ガラスの子供も同じ行動をとる。

・・・・・・・・。

OK!

落ち着こう!

パニックを起こしたら終わりだ!

一つ一つ確認していこう!

まずは自分の事からだ!

佐々木 修。

年齢四十歳。

中堅どころの商社に勤務する普通のサラリーマン。

体を鍛える事とシミュレーションゲームが好きなおっさんだ。

家族構成は親父にお袋に兄貴。

・・・・・アカーン!!

何一つ好転してない!

だって何一つ現状に関する情報がないんだもん!!

これってアレだろ!

ネット小説とかでよくネタになる異世界転生とかいうやつだろ!

喜ぶ馬鹿どもの気が知れない!

だって衛生面で考えたら現代社会がいかに優れているかわかるだろ!

コンビニなんて便利なモンが異世界にあるかぁ!

怪我や病気だって俺は現代医学の方がいい!

つーか、頭に巻いた包帯がウゼェ!

唾つけときゃ治るって!!

「若様!!」

え?

後ろからかけられた声に反応して振り向くとメイド服着たお姉さんがいる。

・・・・?

若様って俺の事か?

お姉さんの目にみるみる涙が溜まっていく。

そして廊下に躍り出ると大声を張り上げる。

「誰か! 御殿医様を! 若様が! フレデリック様がお目覚めに成られました!」

・・・・そうか・・・今の俺はフレデリックっていうのか・・・。

ハテ? この名前どっかで聞いたことがあるような・・・?



「・・・もう一度うかがいます。お名前は?」

「わかりません」

目の前のおじいちゃんが御殿医らしい。

俺にはフレデリックとしての記憶がないのでとことん記憶喪失でシラをきることにした!

何せ「わかりません」だけを繰り返してればいいのだから楽なものだ。

それとは裏腹に周りの人たちの顔色がどんどん悪くなる。

そんな風にやりとりしていると品の良い女性が部屋に入ってくる。

憔悴しきった顔で俺の傍によってくる。

白く細い指で俺のほほをソッと撫でる。

「よく・・・。よく目を覚ましてくれました・・・」

そう言ってハラハラと涙を流す。

うん。

ごめんなさい。

中身は純度100%の変態民族日本人です。

貴女のかわいいフレデリック坊やではございません。

そんなフレデリックのおかんと思われる女性におじいちゃん御殿医が声をかける。

「王妃様、確かに目を覚ましましたが問題が・・・」

おい! じじい! 今なんて言った!

王妃様って言ったか!?

ということは俺、王子なの!?

「何が問題なのです? こうして目を覚まして・・・」

そこまでママンが言うとおじいちゃん御殿医が沈痛な面持ちで遮るように言葉を発する。

「記憶をなくされているようです」

この言葉を聞いてママンが固まる。

「陛下の事も、王妃様の事も、御家族のことのみならず身の回りの世話をした侍女たちのことも何一つ覚えておりません・・・」

そうしてゆっくり俺の方に顔を向ける。

顔に「嘘でしょ?」って書いてある。

でも、ごめんなさい!

本当の事を言っても信じてもらえないし、下手すると幽閉されるのでシラをきります!

「ごめんなさい。わかりません」


いやぁー。

エライ目に遭った。

あの後何か覚えているかもしれないと言うことで細かいことをいろいろと質問された。

でも俺はフレデリックではない。

佐々木修なのだ。

だから思い出話とかされても困るだけだ。

だが、悪いことだけでもない。

いや、悪いことだらけと言えるかもしれない。

これだけ聞かれると情報もそれなりに集まる。

つまり現状を確認しやすくなったと言える。

ここがロマリア王国ということ。

父の名はガレブレス。

母の名はコンスタンス。

長兄イフェリウス。

次兄エグザリス。

ここまで来てピンと来るものがある。

ここってゲーム仲間である後輩がキャーキャー騒いで俺に必死になって布教していた乙女ゲーじゃね?

スチルがどうのと言ってSSをひたすら見せられたあの乙女ゲーじゃね?

舞台は中世ヨーロッパをモチーフにした群雄割拠の戦国時代で剣と魔法の異世界ファンタジー。

主人公の名前はフレア=アレフという子爵令嬢で攻略対象は次のとおり。

イフェリウス=ケド=ロマリア、ロマリア王国第一王子。

トラクス=ヘット、ヘット公爵家の長男。

ポプロス=アイン、アイン伯爵家長男。

アリウス=メム、メム伯爵家次男。

セクール=シン、シン侯爵家次男。

後輩は「逆ハールートがふつくしすぎます!」って悶えてたけどよく考えて欲しい。

戦国乱世において跡継ぎというのは非常に重要な項目。

血を残す貴族にとって何処の誰の胤ともわからん子供をポンポンポンポン生む女ってどうよ?

俺が当主なら問答無用で殺すね。

どう考えたってお家騒動の火種にしかならないじゃん!

迷惑の極みじゃん!

で、この阿婆擦れが子爵家の庶子で引き取られて学院に入学する15歳からゲームスタートだったはず。

攻略対象にうちの長兄が入っていることと今後の国の混乱を考えれば是非とも退場して欲しい存在である。

俺の平穏無事な生活のために。

クソビッチにはご退場願おう!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ