第14話 緋色の麗人
不死鳥に血を飲み体に浴びたことで身体能力が著しく向上した。
体の奥底から力があふれてくる。
今の俺は負傷してもたちまち治癒するし、病気にも無縁の存在となった。
仙術を身につけている為に呪いなどという呪術も効果は無い。
授かった鎧は強力な炎の力を秘めているために今後、火属性の攻撃は無効化できる。
武器もこれまた凄い力を持っている。
刀、朱鳳刀と名付けたこいつは岩やら鉄やらスパスパ斬る。
薙刀みたいな大刀、鳳嘴刀も同様。
さらにチートになっちまった・・・。
呪殺の鎖から不死鳥を解放して二晩がすでに経過している。
騎士団をまとめ上げてレーシュ公爵領の東部へ向かう準備を指示した。
東部の探索は進んでいない。
山岳地帯にあるためだ。
だが、俺にはわかる。
不死鳥に負けないほどの巨大な炎の力を感じる。
きっとそこに炎の破壊の面を司る存在がいるはずだ。
ここ一帯で一番大きな山に向かい進軍を指示した。
山の麓に陣を張り休憩していると物見の者達が帰ってきた。
凄い熱気が立ちこめる岩場だらけの箇所があり、そこに巨大な洞穴を見つけたというのだ。
間違いは無いだろう。
早速従者を連れて出立した。
洞穴に到着した瞬間に凄まじい熱衝撃波が入り口から放出された。
それも三度も。
さすがにこれにはガゼルたちも閉口せざる終えない。
南部の神殿と違い入ったら最後、避ける場所が無い。
すべてを俺が対処しなければならなくなると自分たちは足手まといだとわかるのだろう。
俺はガゼルたちに見送られ洞穴の奥へと歩みを進めた。
以前なら強力な魔法障壁、守りの壁を展開しなければ防げない熱衝撃波も力の底上げがされた今の俺には通用しない。
呪符による簡易な障壁だけで防げてしまう。
分かれ道も無いためにドンドン奥へと進むことが出来る。
一刻ほど歩いただろうか?
最奥にたどり着くと紅蓮の炎を纏った美しい女性が一人、炎の剣を片手に待っていた。
ただ、額には禍々しい額冠がはめられている。
目の前に超越の存在がいる!
心臓が大きく脈打つ!
不死鳥が炎からの再生を司るなら、炎による破壊を司る存在である炎の魔神こそ目の前にいるこいつだ!
だが、それにしては美しすぎる・・・。
女性型の精霊王、さしずめ緋色の麗人ってとこか?
その緋色の麗人が大きく剣を振りかぶって一瞬のタメを作ると一気に打ち下ろした。
先ほどまでとは桁違いの威力を持った熱衝撃波が襲いかかってくる!
とっさに魔法障壁の一つ、守りの盾を展開する。
ここからは魔法の攻防戦となった。
無数の炎の矢は迎撃の盾で打ち落とし、巨大なファイヤーボールは稲妻の矢で打ち砕いて爆風等は鎧で防がせる。
火炎旋風は呪符による断熱層と守りの壁で完全に防げた。
でも、これじゃあ決着がつかない!
緋色の麗人の額にはめられた僕の額冠を握り砕くためにも俺はチャクラを全開にしてすべての力を右手に込め始めた。
朱鳳刀だと頭を切り飛ばしかね無いからだ。
繰り返される異常な魔法使用で一瞬の間が出来た。
誘いか否か迷う程見事に出来た瞬間だった。
それでもここしか無いと思った。
だから俺は縮地で一気に間合いをつめて額冠めがけて手刀斬りを仕掛けた。
だけどそれは炎の剣によりはじかれる。
誘われた!?
逆に至近距離で大量の炎の矢の魔法を浴びることになる。
だが、俺は踏ん張り爆風に耐える。
右手の『力達』も拡散していない。
俺は口から血を吐きながらも右手の手刀を大上段から額冠めがけて打ち下ろし中央に鎮座している黒い宝玉を打ち砕いた。
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
途端に緋色の麗人が絶叫をあげる!
彼女を中心に火炎旋風が吹き荒れる。
尋常では無い威力の熱衝撃波も複数個同時に放出される。
このまま放置すると緋色の麗人が自己崩壊してしまう?
それとも狂える精霊として世界の厄災となってしまう?
どちらにしろ・・・さすがにそれは寝覚めが悪いよな?
ドクン
俺の意思に反応したのか鎧が脈動し始める。
背中から炎が翼の形をとり黄金に輝き始める。
炎も熱も無効化し黄金の炎が衝撃波すらも阻む。
両の手の平に活性化した生命力を集める。
絶叫をあげ続ける緋色の麗人に俺は一歩一歩近づく。
触れるほど側に近づくと緋色の麗人の目が訴えてくる。
『滅してほしい』と。
安心しろよ。
貴女は精霊界へキチンと帰してやる!
残留している僕の額冠の呪いを打ち消すために、彼女の額に集めた生命力を注ぎ込んだ。
洞穴中に巻き起こっていた炎の嵐が瞬時に収束した。
俺の目の前には理性の光を瞳に宿した麗しい女性がたたずんでいる。
彼女が微笑みながら掌をかざすと火の粉が飛び始める。
それは俺の体に巻き付き不死鳥の鎧を変形させ始める。
純白だった鎧の縁を真紅の色で染め上げはじめた。
手甲部分と脚甲部分はより格闘技戦に向いた形になった。
そして緋色の麗人が持っていた炎の剣が俺の目の前に浮かんでいる。
手に取ると炎は消え去り片手でも両手でも扱えるように柄が若干長い片刃の直刀が現われた。
『勇者よ。よくぞ私を呪いから解き放ってくれました。あのままだと私は狂信者の道具に成り下がるか、狂える精霊として厄災を振りまくか・・・。望んでいない道を歩むところでした。不死鳥の力を得ているのであれば私も貴方に権能を授けましょう。鎧の変化と炎の剣はその証です。今後、炎の力はよほどの悪条件で無い限り制限無しで使えます。不死鳥の力と炎の魔神である私の力との相乗効果でありとあらゆる物を焼き尽くす終末の火が使えるようになります』
・・・貴女はこれからどうするのですか?
『精霊界に還ります。・・・勇者よ。フレデリック=ケテル=ロマリアよ。気をつけなさい。この地にはあと三つ、超越の存在がいます。私達が授けた炎の加護だけでは厳しい戦いが待っているでしょう。ですがフレデリック、貴方ならそれを乗り越えれると信じています』
緋色の麗人はそう言い残し精霊界へ還っていった・・・。
俺はグッと拳を握る。
不死鳥、緋色の魔神、あなた達から授かった炎の権能は無駄にはしません。




