第13話 火の鳥
レーシュ領は神聖帝国に隣接する要所。
だが、ここ十年での困窮ぶりに侵略の手は伸びてきていない。
侵略価値が見いだせないのだろう・・・。
そのレーシュ領だが東西南北、そして神聖帝国との領境に砂漠化の現象が確認された。
とりあえず南から順に反時計回りで南、東、北、西、そして更にそこから西部に抜けて領境に行くことにした。
で、南部の砂漠化の中心地に来たら先史文明の遺跡というさらに予想外の物があった。
この世界では遺跡とは大抵は何かを祀っている祭壇をいう。
ダンジョンみたいな物では無い。
いたってシンプルな構造をしてはいるが・・・無駄に広いのだ。
あー! もう! 嫌な予感しかしない!
遺跡内部に入ると恐ろしいほどの炎の力を感じ取れた。
俺一人ならともかく騎士団を守りながら進むのは難しいな・・・。
・・・ガゼル、皆と一緒にここで待機していろ。
遺跡の奥には俺一人で進む。
この言葉に騎士団が待ったをかけた。
まぁ、当然だわな・・・。
結局十名を選抜し従者としてついてくることになった。
奥へ進めば進むほど呼吸が荒くなる。
呪符で熱気から守りながら進んでいるがこの人数を保護しながらだとさすがに無理がある。
なにせ空気が灼けているのだ。
本当なら肺が焼けただれて死んでいる。
従者達も限界のようだ。
一度引き返すか?
!!
何だ!?
強烈な魔力の上昇を感じたぞ!?
!? 何か・・・来る?
アレは・・・。
まさか!?
守りの盾!!
不可視の魔法障壁を展開した瞬間、轟音が炸裂した。
「フレデリック様! ご無事ですか!?」
ガゼル! 俺は大丈夫だ! 負傷者は!?
「フレデリック様のおかげで全員無事です! しかし今のは火球の魔法ですか!?」
違う! 信じたくないだろうが今のは初級魔法の炎の矢だ!
「な!?」
!!
次が来る!?
守りの盾!!
守りの壁!!
障壁の二重展開ならどうだ!?
神殿内部に先ほどとは比べものにならない位の轟音が再び響く。
守りの盾が砕かれた!?
一度引き・・・!
!?
何だ!?
空気の灼ける温度が上昇している!?
熱気から守っていた呪符が急激に焦げはじめた!?
まさか・・・さっきのは火球の魔法!?
そして今度こそ火炎旋風!?
ヤバイ!!
もう一度障壁を・・・!!
守りの盾!
守りの壁!
更に呪符で断熱層を作る!
そうしないと放射熱で全員焼死してしまう!!
みんな!?
生きているか!?
「はい! 全員生きております!」
それでも軽度の火傷が見られる。
これ以上みんなを連れては進めない。
残りの呪符を使って従者達に断熱層を作る。
お前達は神殿前で待機していろ。
奥にはやはり俺一人で進む。
ガゼルが歯がみする。
仕える主が一人で危険を冒そうしているのだ。
だがわかってしまっているのだろう。
現状では自分たちは足手まといでしか無いということを・・・。
「・・・ご武運を」
ガゼルのこの一言で従者達は神殿前へと引き返していった。
・・・さて、と。進みますか・・・。
奥に進めば進むほど魔法による迎撃が頻繁になってくる。
だからといって回避して後方に逃すわけにもいかない。
ガゼルたちに魔法が到達してしまう。
一個一個迎撃する。
迎撃の盾!
雷の弾幕!
遅々として進まない。
否、少しずつだが前進はしている。
この奥に何が待っているのやら・・・。
ようやく最奥にたどり着いた。
近づくたびにゼウス様に匹敵する存在を感じ取れた。
熱量も凄まじい事になっている。
試しに腰の鉄製の剣を放り投げたところドロドロに溶け始めたのだ。
・・・鉄の融点って1500度位じゃなかったっけ?
ゼウス様の神の血と呪符による防護が無ければ確実に死んでるな・・・。
そして目の前に現れたのは巨大な鳥だった。
鳥が炎に包まれている?
火の鳥?
不死鳥!?
この世界では治癒と再生の象徴にして炎の精霊王の一柱!
なぜこんな所にいる!?
どうして顕現出来ている!?
?
不死鳥の体が黒い鎖で縛られている?
悶え・・・苦しんでいるのか?
まさか!?
呪殺!?
唯一神の入れ知恵か!?
どうせあの黒い鎖も多くの生け贄を使って作り出したもんだろ!
呪殺の鎖を破壊すればなんとかなるか?
『に・・・逃げなさい! 人の子よ!』
! 意識があるのか!?
『私がまだ意識を保てる内に神殿から出るのです! この鎖によって私は地に縫い付けられました! その為にここ一帯は炎の力によって徐々に砂漠へと変わっていくでしょう。少しでも遠くへ逃げるのです!』
・・・生命活動全開!
『何をするつもりです!』
霊力、妖力、魔力を右手に収束!
『! まさか! この鎖を破壊するつもりですか!? やめなさい! 多くの生け贄によって作られた呪いの鎖です! 触れれば貴方は死んでしまいます!』
雷霆!
『! な! その力はいったい!?』
その鎖は俺が破壊する!
しばらくの間、意識を保ち無意識による魔法使用を抑えてくれ!
『・・・わかりました。応えてみせましょう!』
熱気から守ってくれていた呪符が焦げ始めている・・・。
時間が無い。
縮地による超高速移動と券打による攻撃で呪殺の鎖を破壊する!
肉が焦げる嫌な匂いがする。
右手が炭化し始めたのか?
無茶な縮地を繰り返すことで足の筋が断裂したのがわかる。
呪殺の鎖はドンドン破壊されていくがそれと同時に俺の意識も遠くなる。
まだだ!
まだ終わっていない!
不死鳥を解放するまで踏ん張らないと!
・・・・・・・・。
?
俺は・・・生きている?
!
不死鳥はどうなった!?
『ここにいますよ』
振り返ると神々しい姿の不死鳥がいる。
『小さき勇者よ! 貴方のおかげで私は再び羽ばたくことが出来ます。なぜこのような事になったのか詳しいことは私の血が教えてくれるでしょう』
?
そういえば焦げた俺の右腕は元通りになっている。足も同様だ。
俺の体は頭からつま先まで黄金の液体が降りかかっている。
これが不死鳥の血?
『小さき勇者よ。汝の名は?』
フレデリック=ケテル=ロマリア・・・。
『その名を私は決して忘れません。フレデリックよ。貴方にささやかですがお礼の品を差し上げましょう』
不死鳥がそう言うと大きく三回羽ばたく。
その瞬間で俺の体に鎧と一振りの刀、大刀が備え付けられていた。
鎧は全身鎧にもかかわらず重さを感じない。
これなら格闘技戦も出来る。
刀の方は刃長は70センチ位か?
刀剣自体は質素で簡素だが対照的に鞘や鍔には鳳凰が描かれており非常に華美になっている。
これ・・・実戦刀の同田貫?
大刀の方は中国でいうところの鳳嘴刀。
使い方や性能が頭の中に流れてくる。
一通り型をこなした後不死鳥を見上げる。
『フレデリック。貴方にはこれから数々の試練が課せられるでしょう。私の血を浴び飲んだことで貴方は治癒と再生の能力を手に入れました。その能力と武具はきっと貴方の助けになるでしょう』
不死鳥よ。精霊信仰により貴方を崇め奉る信者を虐殺しこのような辱めをした神聖帝国は必ず打ち破ります。
俺のこの言葉に満足したのか不死鳥の体が薄らいでいく。
『私はこのまま精霊界へ還ります。フレデリックよ。貴方の歩む道に幸多からんことを願います』




