幕間 とある侍女から見た三男坊
先ほど満面の笑みを浮かべてゾーエ嬢に花束を渡した人物と同人とは思えないほど深くうなだれているのが私が仕えるフレデリック様である。
どうやら花言葉を知らずに渡したことを後悔しているらしい。
正直に言えば花束の準備を頼まれた際、確認しなかった私の落ち度なのだが自分の失態と受け取られたようだ。
ゾーエ嬢が帰ってからにこやかに笑う王妃様が「貴方もやりますね」と声をかけられ、フレデリック様がそれを訝しみ「何の事です?」と聞き返したことから教えて貰ったのだ。
花言葉を。
結婚に誓う永遠の愛。
求婚でも無い限りは送らない花である。
そのことを知ったフレデリック様は頭を抱え「重い・・・。重すぎる・・・」と呟きながら部屋に戻られたのだ。
普段なら知らないことは無いといわんばかりの博覧強記ぶりを発揮するのにたまにこういった一般常識がスポンと抜けているときがあるのだ。
そして先ほどからぶつぶつ呟いている。
「嫌われたらどうしよう・・・」
「ヤンデレになるかも・・・」
等々、延々愚痴とも泣き言とも取れる言葉が口から垂れ流し状態なのだ。
そろそろ立ち直って貰わねばならない。
助け船を出すとしよう。
「フレデリック様、ここは一つ良い方向に考えてはいかがでしょうか?」
・・・死んだような目でこちらを見るのはやめて欲しい。
「ゾーエ嬢ほどの才女なら花言葉くらいならご存じのはずです。そしてその花を喜んで受け取られました。少なくとも嫌われている事は無いかと思われます」
「俺と同じで花言葉を知らなかったら?」
・・・めんどくさいなぁ。
「フレデリック様、おそらくあの花の花言葉を知らないのはフレデリック様くらいかと・・・」
・・・部屋の隅で膝を抱えてうずくまるのに何の意味があるのだろう?
この後、陛下と王妃様にご報告に行かねばならないのだがこの状態で放置するのは何というかかわいそうな気がする。
結局、一刻ほど話し合ってゾーエ嬢の様子をつぶさに報告することでなんとか立ち直ってもらった。
私の名はマリア。
ロマリアの暗部最強の存在。
最近は子守も仕事の内容に含まれる。
だが、そんな毎日が充実していて楽しいと感じる。
私は生涯を捧げる主に出会ったのだ。




