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幕間 祖父

ザイン侯爵家の紋章がほどこされた馬車の中で初老の男性がソッと胸中で呟く。

(・・・儂も老いるわけだ・・・)

若い世代の台頭はあって然るべきだ。

今日会った噂に名高いロマリアの神童は想像以上だった。

今、ロマリアは長兄派と次兄派で割れている。

そして中立を保っている他の第三派はフレデリック様についている。

もし後継者争いが発生したなら間違いなく三男であるフレデリック様につき次兄派を推挙すべきだと即決出来る。

イフェリウス(あれ)はダメだ。

イフェリウス(あれ)は武人では無く破落戸ごろつきの類いだ。

フレデリック様こそ武人と呼ぶに相応しい。

儂も見る目が無かった。

可愛い孫娘をイフェリウス(あんなの)にあてがおうなどとは・・・。

病没した義理の娘にどれほど謝まっても謝まりきれない罪を犯すところであった・・・。

愚息の尻ぬぐいでいつも奔走していた。

常日頃の疲労が蓄積していたせいか流行病で呆気なく亡くなってしまった。

死の床に伏してもザイン侯爵家と愛娘ゾーエの行く末を案じながら覚めぬ眠りについてしまった。

にもかかわらずザイン侯爵家は豪商に乗っ取られてしまった・・・。

何が「豪商の援助を取り付けた」だ!

バカ息子め!!

ザイン侯爵の名誉は地に墜ちた事に気づきもしない!!

せめてゾーエだけでもと第一王位継承権を持つ長兄の婚約者にしたところ苛烈な虐めを受けていることを知ったときには血の気が引いた。

そこに名乗り出てくれたのがフレデリック様であった。

陛下もザイン侯爵家の問題を知っている。

そのことをフレデリック様に教えて自分の意思で決めさせたそうだ。

正直我が耳を疑った。

五歳の子供がこの婚約話で将来ザインの立て直しを計略しているなどとは!

我ら貴族の婚約など政争の道具でしかない。

まして今は戦国の世。

恋愛で結ばれるなど奇跡に等しい。

だが、その奇跡は目の前で結ばれた。

「欲がない」と言われるほど執着心を見せないフレデリック様があそこまでゾーエをほっせられるとは・・・。

ゾーエもゾーエで帰り際に貰った花束に何度も頬ずりをして匂いを嗅いでいる。

ゾーエよ。

知っておるか?

その花の花言葉は「結婚に誓う永遠の愛」と言うのだぞ。

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