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人生ゲーム  作者: 唐木勇士
5/5

飛翔

ゲームもとうとう終盤を迎えた。


現在所持金

翔30万・勇司20万・香織15万



「残り7マス・・・」


しかしゴールするにはピタリと7を当てなければならない。


「翔~頑張れ~」


勇司達の精一杯の声援が翔の心に染みた。


「ふぅ~」


再び翔は大きく深呼吸をした。


そして静かに矢を構えた。その姿は最初の時よりも更に大きく、堂々としていた。そしてゆっくり目を閉じた。



「今だっ」


構えている手を一瞬で離した。


ビュンという音をたて、矢は真っ直ぐに飛んだ。


バシッ


ルーレットの速度が徐々に落ちはじめる。


「何番だ・・・」



この時間は翔にとってはとても長い時間に感じた。


「はっ」



その矢は見事に7のど真ん中を撃ち抜いていた。


「や、やった」


「さすが~」


「さぁ、俺達も続こう」



勇司が笑顔で香織に呟いた。


「うん」


「よっしゃ~」


勇司もギリギリではあったが、何とかゴール出来たようだ。



「残りは香織だけか・・・」



コンッ!


香織の放った矢は鈍い音を発した。


「2か・・・」



香織は緊張した様子で歩き始めた。


果たして・・・



「強盗に合う20万失う・・・」



「に、20万だと・・・」



翔達は反射的に口ずさんだ。


「た、足りない・・・」香織はラークの方を見上げた。


「う、嘘だろ・・・」



翔は思考が停止してしまった。



「ごめんね翔、期待に答えられなくて・・」


香織は必死に笑顔を作った。


「な、何言ってんだよ・・・」



「俺達どんな辛い時も一緒に乗りきってきたじゃないか・・。お互いこれからも頑張っていこうって誓っただろ!!!」



香織の家系は特殊な事情を抱えていた。そのせいでか、香織は周りの友達と自然と距離をとっていた。家族で外出をすれば、周りの人々がこっちを見ては距離を置く。香織にはそれが辛かった。心の寂しさから非行に走った時もあった。そんな時、出会った人物が翔であった。

「お前と付き合ってからあいつは変わったよ」

そんな声が翔の耳に入り始めてきたのは、つい最近の事であった。そんな時、香織が初めて夢を持った。それが看護師であった。翔はその時、誓ったのだ。



「今までありがとう、翔のお陰で幸せな日々を過ごせたよ。私、翔に出逢えて本当に嬉しかった。」



香織は涙を流しながら笑顔で言った。PBR>


その時、ラークが口を開いた。



「お前さん達、私が最初に言ったルールを覚えているか?」



「はっ」


翔は顔を上げた。



「お前さんの仲間が残していってくれた、そのお金を使いなさい。特別だぞ。」



ラークのその顔はどこか、優しげな表情であった。



「本当に?」


香織は再びラークの方を見た。



「そこの少年は先程私に誓ってくれた。環境を取り戻すと。こんな所で挫折してもらってはこっちが困るからな。」



「ありがとう」


翔の顔にも笑顔が戻った。



「やった~、無事ゴール出来たよ」


「おめでとう」


翔は香織を抱き締めた。


「あ~あ、暑い暑い、何でこんなに暑いんだろうな?」



勇司は目のやり場に困っている様だ。


「地球の事は皆に託したぞ。良い物を見させてもらった。」



そう言うとラークは消えていった。



3月9日、その日は翔達の最後の登校日であった。

「卒業証書・・・」

校長先生が大きな声で順番に読み上げ始めた。


「中山信吾!!」


「はい!!!」


翔は信吾の遺影を持ち、ステージへ上がった。翔が証書を受け取った瞬間、体育館に大きな拍手が鳴り響いた。



「おめでとう」


翔は信吾に向かって静かに呟いた。


その日の午後、三人は信吾のお墓の前にいた。そして、翔がゆっくり話し始めた。

「お前は充分親孝行息子だよ。ほら、この色紙を見ろよ。沢山の人が自ら書いてくれたぞ。さぞかし、両親も喜んでるだろうよ」



翔の手には「教職員採用通知」の紙、勇司の手には「**福祉内定」の紙が、そして香織の手には「今年度**看護学校試験要項」の紙が。


「卒業おめでとう」

三人でそう言うと翔は信吾の証書と、色紙を静かにお墓に供えた。遺影の信吾は終始笑顔であった。

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