悪魔の化身ラーク
その日の夜、翔はまた同じような夢を見た。
普段オカルトやミステリーといった類いの物を全く信じない翔にとっても、この事は不気味でしかないようであった。しかし、翔はなかなかこの事を他の人に言えないでいた。
「は~い、それでは今日の体育の授業はバスケをしま~す」
先生のかん高い声が体育館中に響いた。
「よっしゃ~負けねぇぞ!!!」
皆大喜びであった。勿論翔達も。
何故なら翔達は部活でバスケをやっていたからである。
試合が始まってみると、その実力の差は歴然であった。
「へい、勇司」
信吾の放ったボールが勇司の手元へ届いた。
「ほら、翔!!」
翔がダンクシュートを決めようと踏み込んだ瞬間
「うっ!!!」
翔の足に激痛が走った。余りの痛さに翔はその場から動くことができなかった。
ボールだけが、虚しく床を転がっていた。
「いたたたた、何だ?」
翔はいぶかしげな表情をしながら、体操着の裾をめくり上げた。
「えっ」
翔は咄嗟に声が出た。
翔の足首の所には、黒い手形の様な痣が浮き出ていた。
「お~い、大丈夫か?」
硬直したままの翔を心配し、先生達が駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫です」
震える声で翔は答えた。
「本当に大丈夫かぁ~?」
勇司達も心配そうな表情を浮かべている。
その場に居るのが気まずくなったのか、翔は先生に言った。
「先生、ちょっと調子悪いんで休みます」
翔は精一杯の声をあげた。
皆が心配そうな表情をしている中、翔は一人体育館を後にした。
「ま、まさか・・・」
翔は自分の机の上で頭を抱えた。翔の脳裏には、あの光景がフラッシュバックの様に鮮明に蘇ってきた。
翔の体に再び嫌な汗が流れた。
勿論、残りの授業など耳に入るはずもなく・・・
その日の放課後、翔達はよく行く、河川敷の所にいた。オレンジ色に耀く夕日が翔達の顔を染めていた。
元気の無い翔の姿を見かねた勇司が、翔に尋ねた。
「お前、何かあったの?」
「そうそう、体育の後から様子が変だぜ?」
いつもは無邪気な表情の信吾も真剣な顔で言った。
流石は親友だけのことはあって、どうやらこの二人には筒抜けな様子であった。
翔は何故か少し心が落ち着き、重い口を開いた。
「あ、あのさぁ・・・」
翔は自分の見た夢、そして足の痣の事を全て話した。
二人はその間黙って夕日の方を見ていた。
その二人の反応が意外だったのか、翔は話している途中、自ら質問した。
「お、お前ら笑わないの?」
すると信吾がいつになく真剣な顔で答えた。
「その夢なら、俺達も見たよ」
「えっ!!!!」
翔はひどく衝撃を受けた。
「俺も真っ暗な所をさ迷ってた、だけど、遠くから翔に似た悲鳴が聞こえたのを覚えてるよ!!」
勇司が下を向きながら答えた。
「ど、どうなってんだ、皆同じ夢を見てたっていうのか・・・」流石の翔達も動揺を隠せないでいた。
「ったくよぅ、お陰でこっちは全然寝た気がしねぇんだよ!!!」
信吾が怒り口調で言った。
しかし、明らかに信吾の手は震えていた。
気が付いた時にはもう周りは、暗闇に包まれていた。翔達は無言のまま、帰路についていた。
「そういえば、三人で黙って帰った時なんか今までにあったかなぁ~」
翔は心の中でひっそりと呟いた。
家の前に着くと、そこには香織の姿があった。
「あれ、どうした?」
翔はびっくりした様子で尋ねた。
「えへ、今日翔の誕生日でしょ?」
香織は笑顔で答えた。
「あ、そうだったわ」
7月22日は翔の誕生日であった。事情が、事情なだけに、そんな事すっかり忘れていた様であった。
「はい、これ」
香織はちょっと恥ずかしそうに、ネックレスを渡した。
「マジ、ありがとう」
ちょっと照れくさそうに、翔はネックレスを手に取った。
いかにも、香織が選びそうなユニークな形をしたネックレスであった。しかし、どこか暖かみを感じる、そんなネックレスでもあった。
「せっかく来たんだから、ちょっと上がってけよ?」
翔は香織を自室へ招き入れた。
そして、香織にも今までの出来事を話した。
「え~、そんな事もあるんだね」
香織は、不思議そうな顔で答えた。
「でも、似たような夢、私も見たことがあるよ!!!」
香織は少し怯えながら答えた。
「香織もかよ・・・」
翔はもう、訳が分からないようであった。
翔の心情を察したのか、香織が落ち着いた声で言った。
「もう少し、様子を見てみようよ、もしかしたらその痣だって偶然かもしれないよ?」
翔はその言葉にすがってみたい気持ちにかられた。
「だよな?偶然だよな?」
翔の気持ちは少し落ち着きを取り戻した。
「じゃあ行くね、まだレポートが残ってるし」
香織が時計を気にしながら答えた。
「うん、また学校でな」
翔は香織の姿が消えるまでずっと見送っていた。
翔も、残っていた宿題を片付けた。風呂に入り、歯を磨き終えた時には時刻は1時になろうとしていた。
「寝るか」
翔は洗面台の鏡に向かって呟いた。
am1:15、翔は部屋の電気をそっと消した。
その日、4人はそれぞれ、違った夢を見ていた。皆良い夢を見ているのだろうか?とても幸せそうな表情をしている。
しかし・・・
突如、ズドーンとう大きな音と同時に、視界が真っ暗になってしまった。
「痛った~」
翔が夢の中で目を覚ました時、再び漆黒の世界があった。
「またかよ!!」
翔は溜め息をついた。
しかし、今回は今までとは少し違う様子であった。
そこには、翔の周りに倒れている勇司、信吾、香織の姿があった。
「おい、しっかりしろ」
翔は横で倒れている信吾の肩を揺すった。
「ん、あれ、翔じゃん!!」
信吾の驚いた声に、他の全員が起き上がった。
「お前達、こんな所で何してんの?」
勇司が半笑いで言った。
「どういう事?」
香織が首をかしげている。
「この空間・・・」
「あぁ、間違いない!!」
床一面に書かれている文字を見て全員が悟った。
すると・・・
「ようやく起きたようだね」
暗闇の空間に大きな声が響いた。
「だ、誰だ」
全員が辺りを見回す。
その瞬間、パッと暗い空間に光が入った。暗い所にいたからなのか、翔達にはとても眩しく感じた。
その光の先に何が居る。全員の目がその者をとらえていた。
そこにいたのは・・・
「ば、化け物か!!!!」
翔が声を張り上げた。
「私は、悪夢を司る者だ!!」
黒い翼に赤い目、そして長い尻尾その姿は正に、悪魔そのものであった。
「悪魔?馬鹿じゃねぇの!!!!」
勇司が呆れた様子で叫んだ。
「ふ、お前達は今、私の空間にいる。現に今までだって、皆同じ夢を見ていたであろう?」
「な、何が目的なの?」
香織が叫んだ。
「お前達を呼んだのは他でもない。お前らにはゲームをしてもらう。・・・・・人生ゲームだ!!!!!」




