【第七話です。】
結局ヤツを祓うこともできず帰ってきました。
なんということでしょう、きっと神は私を見捨てたのです。
まぁわりと楽しむだけ楽しんできたので旅費の無駄にはならなかったでしょう。
「誰に祈ってるのか知らないけど、神様なんていないから祈るだけ損だよ。」
「祈るだけで救われるような気分になるものです。そう、具体的な例で言えば、背後の悪霊を祓ってくれないでしょうか・・・とかですね。」
私だって神様なんて信じちゃいません。
あれです、気分です。
「そういえば貴方、私が初めて見たとき女装していましたよね?何故です?
・・・・あぁそういう性癖も持ち合わせていましたか。似合いすぎていて笑えませんね。」
あれはパッと見女性にしか見えませんでした。
ハーフアップの髪は地毛なのか普段からその髪型ですが、あのときは黒い長袖の丈の長いワンピースにガウンを羽織っていました。
というか見た目が割と年若く、15~6の少年の姿で線が細いせいかあの格好も不自然ではありませんでした。
「趣味ではないけど、あの格好の方が皆油断して近づいてくるでしょ。」
「なんですかその気色悪い捕食者みたいな理由。」
「だって悪霊だったし、それが仕事みたいなもんでしょ?」
「悪霊と認めましたね今。」
「今は違うよ、君がいるしね。」
それはどういうことでしょうか、意味不明です。
あれでしょうか、私の眼光が怖くて悪さができないと・・・いえ、自分を追い詰めるのはやめておきましょう。
「ところで、悪霊に年齢を聞くのもおかしなお話ではありますがお幾つですか?」
「あー・・・14?ていうかだから悪霊じゃないって。」
「嘘を吐かないでください、そんな中学生がいるわけがありません。」
胡散臭そうに言うと、彼はわざとらしく肩を竦めました。
これが14なんていくらなんでも年齢詐称しすぎています。見かけ的な意味ではなく、精神年齢的なあれです。
飄々とした態度は明らかに14の少年のものではありません。
「そりゃ、何年幽霊やってると思ってんの。」
「格好からして割と近代だと思っていましたが・・・まさか5・60年とかいいませんよね。」
「ううん、五年。」
それ知ったの、俺もついこの間なんだけどね。と、暗い色をした目で彼は言いました。
・・・・・・え、そういう反応されるとこっちが何返せばいいのかわからなくなるのでやめていただけませんか。
なんとなく触れてはいけない話に触れてしまったかのような気まずさが湧き上がってきます。
しばらく無言で考えていましたが、ヤツはにっこりと笑いました。
「真白ちゃん、優しいよね。」
「・・・・・・・突然なんなのですか、気色悪いですね。」
優しいだなんて初めて言われましたよ。
というか、落ち込んだとかそういうのではなかったのですね・・・紛らわしいのでやめていただけませんか。
・・・・・とりあえず、岩塩はどこに仕舞いましたっけ。
「そういえば名前呼びを許可した覚えはありませんねぇ。」
「投げるならせめて普通の塩にして!」