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【閑話休題なのです。】
誰もこちらを見ない。
誰も俺が見えない。
誰も俺の声に気がつかない。
暗い、真っ暗だ。
そんな場所に何年もいた。何十年もいた気がした。
××××××
「なんです?」
「今日も可愛いなーって思って。」
「あぁ、つまり惚けていただけですね。特に何を返すわけもなくそういった冗談を返すと・・・私、そういう冗談が一番好きではありません。」
・・・辛辣だ。
柔らかい口調ながらも心を抉る言葉を吐く彼女。
初めて会ったとき随分と優しい言葉をかけてくれたのだから、心底冷たい人間ではないのだろうけどさ。
「大体、私以外にも貴方を見つけられた方がいらっしゃったのではないのですか?」
「えー、いないよー。」
語尾を伸ばして甘えたようにいえば、わかりやすく苛つく彼女。
見ていて面白い。
でも事実、いなかった。
もしかしたらいるのかもしれないけど、彼女が最初だった。
きっと、彼女が見つけてくれずもう少し遅かったなら
(俺は本当に、手遅れになってた )
「真白ちゃんは、俺にとって王子様だよねー。」
「・・・・・・・・。」
・・・無言だけは辛いからやめてね。