【第四話です。】
旅行から帰ってきたにもかかわらず、彼は今だわたしの近くに浮遊していました。
「そうだ、京都に行こう。」
有名な寺がいくつもある県なのです、それなりに有力な陰陽師の一人二人いるかもしれません。
この憑きものをきっとおとしてくれるでしょう。
「あ、なんだか酷い事思われてる気がする・・・!」
「被害妄想も大概にしてください。」
まったくもってこういう時だけ勘がいいですね。
旅行から帰り、後日家でくつろいでいる時でした。
奴は我が家のソファで雑誌を読んでいました。
「京都に行きましょうか、悪霊さん。」
「悪霊じゃないよ浮遊霊だよ。俺ほど悪意のない幽霊もそうそういないから安心しなよ。
あと、名前で呼んでって言ったじゃん。」
にこりと甘く笑う彼はどこからどう見ても悪霊なのですが、それを言ってあげるほど酷でもないのです。
あぁ可哀想に、己がどれだけ迷惑な存在か自覚していないのですね・・・。
「その哀れむような目やめてくれないかな、地味にイラっとくる。」
「やっと分かって頂けましたか、私がどれほどあなたに苛立ちを覚えていたか・・・。」
「そんなこと塵ほどにも言ってない。なんだろうこの理不尽な言葉の暴力。」
事実なので暴力ではありませんね。
言葉の暴力とは理不尽な暴力と同義・・・つまり、事実であるうちはどのように辛辣でも暴力ではないのです。
むしろ注意されるうちが花だと思って素直に受け入れるべきです。
就活?安心してください、私は大器晩成型なのです。
「ぶっちゃけ無職だよね。」
「フリーター兼遊び人です。人聞きの悪いことを言わないでください。」
とりあえず、京都に行く準備でも始めましょうか。