【第三話です。】
黒い髪には天使の輪が現れ、澄んだ黒い目は猫のようにつり上がっています。
顔は所謂イケメンです。死ね、そして蒸発して消滅しろなんて思ってはいないのです。
俯けていた顔を上げ、彼に視線を投げかける。
えへらっと笑う彼は大変馬鹿っぽいです。
「神は二物を与えないとは真実だったのですね。」
「勝手に悩んで勝手に納得してるけど、なんだか凄い失礼なこと考えてるっていうのはわかったよ!」
「被害妄想も大概にしていただけませんか、キモイです。」
失礼なことを考えていたのではなく真実について思案していたのです、責められる要因がどこに有りましょうか。
さりげなく織り込まれた暴言に傷ついている彼を可哀想なものを見る目で見ると、泣かれました。
ハッキリ言いましょう、ウザイです。
「とりあえず話を進めましょうか。あなた、何なのです?」
「幽霊だって言ったじゃん。」
「口を尖らせるとかやめてください、似合っていて逆にイラっときます。」
これは私が彼を幽霊と認めないと話が進まない感じでしょうか。
というか幽霊とか、浮いていたり透けていたりするものではないのでしょうか・・・?
あ、でも地平線のアレは透けてもないし浮いてもないか・・・? いやアレはどちらかといえばゾンビ・・・。
「それでですね、何故あなたは私にストーカーの如くしてついて来たんですか?」
「えー?好きになっちゃったからかな。」
「信憑性が薄いので却下です。誤魔化すにしてももう少し良い言い訳を言うべきですね。」
出会ってものの数秒で好きになるなんておかしいでしょう。恋に恋する乙女じゃあるまいし。
彼はコテっと首をかしげて、人好きする笑顔を浮かべました。
「えぇ?ウソじゃないんだけどー、まぁそう思うならそれでいいよ。」
譲歩された気がして非常に遺憾ではありますが、追求はまた後日という事にしておきました。