【第十六話です。】
「晶都、くん?」
目を開けてまず目に入ったのは、いつもどおり人懐っこい笑顔を浮かべる、少年。
寝転がっている状態だったので、立ち上がって正面から向き合いました。
でもどこか、違和感があります。
あぁそうか、これは違うんですね。
「佑都、どういう・・・」
名前を呼べば、とたんに底知れないあの笑顔に変わりました。
「言ったでしょ?俺に浮遊霊やめさせたくない?って。」
・・・あぁ、そういうことか。
彼はわたしの前から消えるなんて、成仏するなんて言っていませんでしたね。
あぁなんて、質の悪い悪霊でしょう。
「ほら、見てこれ。」
「なん・・・ですか、これ。」
「なにって、」
すっと彼が体をずらして、その背後に見えたそれ。
情けないことに、力なくへたり込んでしまった。
ガラス越しなのに、冷気が伝わって来るようでわずかに震える。
そんなわたしの隣で、晶都くんに憑いている彼はなんでもないように言います。
「俺の死体。」
ガラスケースの中にあるのは、氷漬けにされた、普段見慣れた佑都の姿。
四角く切り取られた氷の中で、まるで眠るように目を瞑っています。
「俺が欲しかったんだって。」
「は・・・?」
「だから薬で眠らせて氷漬け。」
溺死と凍死どっちだろうねぇなんて呑気に言う彼に腹が立ちます。
けれど声を出すほどの元気も最早残っていません。
「ご丁寧に隠してくれちゃってねぇ。あぁ、俺をこんなにした本人はとっくに死んでるから安心してね。」
「・・・それって、どういうことですか。」
「ん?」
「その、」
出会ったとき、わたしの首に手をかけてきたので考えられないことでもありません。
ただその可能性を口にするのが、とても重いことのようではっきりとは言いづらいのです。
けれど敏い彼はわたしが言いたいことを察したのか、なんでもないことのように、それはもう軽くなんの重みもなく、にこりと
笑って言いました。
「うん、俺が殺したの。」




