【第一話です。】
出口から外に出た時に出迎えてくれたのは友人の素敵に苛つく笑顔でした。
「もー、真白ちゃんったらおっちょこちょいなんだから!」
ムカついたので腕を変な方向に曲げさせてもらいました。
痛い?安心してください私は痛くありませんので。
それから私たちはホテルに戻りました。卒業旅行なんです、大学の。
その夜です。私はお風呂に入っていました。
ちょうど頭を洗っている最中、視線を感じました。つと振り返っても誰もいません。当たり前です、いたら変質者です。
シャンプーを洗い流そうとしましたがうっかり泡が目に入ってしまいましたクソイテェ・・・。
手探りで探すも中々桶が見つかりません。
「これ?」
「あ、ありがとうございます。」
少しおかしいなとは思いつつもまずシャンプーを洗い流しました。
それから無言で風呂につかりにっこりと笑って振り返りました。
「そうですね・・・それではまず、シャンプーとリンスどちらがよろしいでしょうか?」
「ちなみに選んだ場合は?」
「選ばなくても両方そのお口に流し込んで差し上げます変質者。」
振り返った先にいたのが思いの外美形だったのには驚きましたが、風呂場に入り込んでくるような変態では台無しです。所詮は残念な美形です。
でもまぁおかしいと思うことは多々ありました。
湿度の高い風呂場で彼は少しも濡れていませんし、入ってきた音すらしませんでした。
それに今はリビングに友人がいるはずです。
いくらちゃらんぽらんで馬鹿な友人でも風呂場に男性が向かっているのに気がつかないわけがありません。
「意味ないと思うよ、だって死んでるんだから飲めないもん。」
男がもんとか言うなと思いました。