事のはじめは、
今現在、私の後ろには幽霊が立っています。
全然透けていないし、浮いてもいないし、触れられないこともないのですが・・・。
事のはじめは昨日のことだったのです。
私は友達とともにとあるテーマパークに来ていたのです。まぁ擬似外国のテーマパークですね。
そのテーマパークには所謂お化け屋敷なるものがあって、そこに入りたいといったわけですよ、友達が。
まぁ怖がりのくせに見たがりというやつです。
本物が出ても知りませんよ、と私は言いました。ちなみに信じていないからこそ言えることですよねコレ。
けど、その時友人がなんとおっしゃったかわかりますか?
「真白ちゃんの顔面があればよってこないよ!」
無駄に自信満々な顔で言ってきやがりました。
無言ではたいてやった。
ちなみに私の顔面は普通だ。可も不可もない感じです。
ただ、ちょろっと目が悪いだけです。視力的な意味ではありません。目つき的な意味でもありません。
目力らしきものの問題です。
馬鹿正直な友人の第一印象・・・というか、自己紹介の時『暗殺者かなにかですか?』と聞かれるほどです。
勘違いが勘違いを生んで素敵な誤解になっています。
とまぁ、そんなことはどうでも良いのです。
案の定というかなんというか、友人がとても五月蝿い。
キャーキャーギャーギャ・・・私は貴女の彼氏ではありません抱きつくな。
おい何故お化け役が逃げていくおかしいでしょ。目があっただけで先に入っていたカップルが腰を抜かす根性ねぇな。
まぁそこまでは大体いつものこと、気にしなくても良いのです。
「・・・あ、」
はぐれた。
そう思った時には手遅れでした。おそらく友人は迷子です。
暗い道を戻って差し上げようかとも思いましたが、別に命に別状はないので放置です。
「おや、どうかしたのですか?」
道の端でうつむき膝をついている女性がいます。
お化け屋敷の店員かとも思いましたがどうも違うようです。
「大丈夫ですか?」
出来るだけ気遣わしげな声で話しかけますが、女性はうつむいたままこちらを見ようとしません。
私はしゃがみ彼女の顔を覗き込むような形を取ろうとしたとき、がっと首をつかまれました。
繊細なようで意外と大きな手だったので男性だったのでしょう。
店員の演出のわりに行き過ぎています。
首が締まっています。このままではいい加減死にます。
というわけで申し訳ないのですが一本背負いをきめさせていただきました。
不幸中の幸いとはまさにこの事。幸いにも彼女は片手で首を絞めてきたのでその手を外すことは可能。
ところが堪えた様子もなく立ち上がったので全力で逃げてきましたが、尻尾を巻いて逃げたというわけではありません。そう、逃げるが勝ちなのです。