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PHASE5:秘密の仲間

 あの日以来、浩介の日常は表向きには何も変わっていない。普通に学校に行って、普通に一徳や森長と馬鹿な会話をして、普通に授業を受けて学校が終わる。学校が終わってからはあの研究所へと赴き、FTの知識や操縦技術。そして万が一の時の戦闘術を教わる日々が続いている。

 そんな生活が続けば身体的にも精神的にも疲労が溜まるのは当たり前だ。政人は学校には行かなくてもいいと言ったが、それは浩介が認めなかった。学校が生き抜きの場といえばかなり変わっていると思われるだろうが今の浩介は学校でクラスメイトと一緒にいることが一番の息抜きになっている。

 最近はあの家に帰る事も少なくなり、詩音や花菜ともあまり喋っていない。クラスは一緒でも話す事は滅多に無かった。

「前回の起動時の駆動系の問題点においては既に解決いたしました」

 デサピアに乗り込み起動し終えるとこの機体の支配者”デサピア”がメインスクリーンに問題点についてのレクチャーを表示する。それに目を通しながら浩介はこの機体がいかに異質な存在かを再認識する。

 まず、この機体はまだ未完成なのだ。出撃するたびに”デサピア”は問題点を指摘してくる。前回はFT同士の模擬戦の時に駆動系に問題があるといってきて、その問題は既に解決したといっている。すなわちデサピアは自分で自分を改良している。

 そんな馬鹿な話はないと技術者達は口をそろえて言っていた。しかし、それは事実なのだからしょうがない、デサピアはまだ未完成で自分自身を完成させようとデータを収集し、それを造っているのだ。

 とすると自分の存在価値は何なのだろうと浩介は思う。もしかしたらデサピアのパーツの一つにしか過ぎないのではないかとも思える。用がなくなったら捨てるパーツのような。

「分かった。今日はもう用はない。ハッチを開けてくれ」

 コクピット内が真っ暗になるとハッチが開く。外の格納庫で待っていたのは傭兵部隊の一人。ジャック・アイドンだった。

「少年。ずいぶん死んだような顔をしているな」

「まぁ。正直死にそうな日々ですけどね」

「そうだろうそうだろう」

 ガシっと横から浩介の首に手を回してきたのはジャックの仲間であるマカフィー・マヴォルトで浩介は嫌な予感を覚えた。今までの経験上この二人に囲まれて良い事があった試しが全く無い。

「なぁ浩介。日本人とはいいものよのぉ」

「・・・突然何を言い出すのですか?」

「ここのスタッフは日本人が多いからのぉ」

「あの? 二人共喋り方変ですよ? まぁ、元から日本語自体間違って覚えているから別にいいけど」

 ジャックとマカフィーはよこしまな目付きで日本人女性スタッフを眺めている。そして凄い勢いで浩介に向き直ると二人共真剣な表情で同時に、

「今から女風呂を覗きに行こうぜよ」

 まことに馬鹿な事をいいだすのだった。

「嫌ですよ。大体今日は・・・」

 反対する浩介にジャックは真剣に言う、

「なぁ、浩介。俺たちみたいな兵士はいつ何処で死ぬかとも分からない。だからな、だからこそ! 俺たちは女風呂を覗いてもいいという権利があるのだ!! お前も兵士なら一緒に風呂を覗くんだ!!」

 真剣な表情なのに言っている事が凄まじくアホだ。きっと一徳や森長だったら喜んでついて行くことだろうが、残念ながら浩介にはばれた後の事が恐ろしいのでやっぱり賛成は出来ない。ジャックとマカフィーが何と言おうと賛成できない。何故なら今日は、

 結局その場を偶然通りかかったカイトも巻き込まれ、四人で神風特別攻撃隊。俗に言う特攻隊よろしく女風呂へと向かい特攻をするのであった。

 ジャックとマカフィーの作戦ではまず女風呂のある施設の反対側へと周り、こっそりと窓を開けて直接覗く。この際窓が開けられた事がバレないかだが、大浴場で湯気も立っているためバレる可能性は極めて少ない。

 確かに男として女風呂を覗きたいと思うのはしょうがないことかもしれない。実際浩介にだって本当は見たい気持ちはある。だからと言って、だからと言ってその為には命さえ投げ出していいと思ったことは一度も無い。何故自分たちは今断崖絶壁の崖を命綱無しで渡っているのだろうか。

 その理由はまず、施設の反対側が海で道など無いから。そして女風呂を覘くには断崖絶壁を慎重に歩き、目標地点の下に到達と同時に上へと上昇。目標を確認しなければいけない。通りで今まで何人もの猛者が女風呂を覘こうとして断念してきたのか浩介には身に染みて分かる。

 まさに難攻不落の要塞であるはたまたはベルリンの壁とでも呼べばいいのだろうか。

「まさか・・・こんな事をするとはな」

「ってかカイトさんはどうしてついてきたんですか?」

「そりゃ、なぁ? 見たいだろ?」

 浩介はため息をつく。それこそ人生の中で二番目に大きいくらいのため息を。もう少し真面目な人かと思っていたが、傭兵なんかやっている人は皆揃ってこんな風にアホなのだろうか。

 目標地点の真下に到達した。ジャックとマカフィーの作戦通りに登山用の装備を使い登り始める。一番最初に窓に手が届きそうになったのはジャックで、意気揚々と窓に手をかけると。

 窓を少しだけずらす。その少しの隙間から女風呂の中を覗き込む。

「おおぉ───────────」

 四人同時に声を出す。その時カイトは世にも恐ろしい見てはいけないものを見てしまったような表情をする。浩介とジャックが不思議に思っているとその答えはすぐに解けた。マカフィーまでもが似たような表情になっている。

 そしてジャックもその姿を目に留めたときに似たような表情になってしまった。同じ表情三人衆が同じタイミングで声を出す。

「か、カノン!?」

「誰?」

「や、やばいぞあいつがいるとは」

「というか、あいつは浩介の家にいるんじゃなかったのか!?」

「まずい。ジャック、マカフィー撤退だ。撤退しろ」

 マカフィーの言葉からどうやら三人が怖れているのは花菜だと言う事が分かる。先程から何度も言おうとしたのに、そのたびに邪魔されて言えなくなっていたのだ。何故今日は花菜がこの基地にいるのかと言えば、花菜の乗るノーチェアスに試作型の装備をつけたのでそれのテストをして欲しいと政人が言ってきて、浩介と同じくこの基地にやってきた。

「うん?」

「どうかしたの?」

「うやぁ、どうして窓が開いてるのかなぁ?」

 疑問に思い窓の外を身を乗り出して眺める花菜の視界にははるか遠くまで広がる海と、断崖絶壁しか映らない。花菜は誰かが開けて閉め忘れたとしか考えなかった。つい十秒前まではこの窓から馬鹿四人が覘いていたとは夢にも思わなかった。

 施設のラウンジでカイトがコーヒーを飲んでいる。ジャックとマカフィーは夕食を摂っており、浩介もまたカレーを食べている。

「私もカレーにしようっと」

 カイトとジャック、マカフィーがその声に一斉に振り向く。そこには風呂から上がったばかりの花菜が立っており、三人が一斉に見たため不思議そうな表情になっている。

「ジャックたち。何かあったの?」

「世の中にね、知っていい事と知らなくてもいい事があるんだよね」

「?」

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